「恋の香り」ってどんな香り?
クラスメートに部活の先輩、会社の同僚、趣味の集まり、あるいは思いがけない出会いの場で、私達は恋に落ちてしまうことがあります。一人での生活に満足しているつもりでも、パートナーの存在は1人で見ることのできなかった景色を見せてくれます。
どうして恋に落ちるのかについては、未だに科学で解明できないテーマの1つですが、パートナー選びの重要な要素として、相手の匂いが好きかどうか、ということが言われています。いい匂いをまとって意中のパートナーと結ばれるため、私達は古くから香水などのフレグランスを利用してきましたが、適量の調整が難しく、十分に香りを感じない、あるいはつけ過ぎて匂いがきつくなった、という経験があるかもしれません。
一方、10代、20代の女性から「甘く爽やかな匂い」を感じることがあります。貴方がもう少し年齢を重ねていた場合、どうも昔と身体の匂いが違う気がする、あるいは素敵な匂いを感じた10代、20代の女子にどんな素敵な香水やボディーソープを使っているか尋ねても、特別なことは何もしていないと言われ、困惑した方もいらっしゃるのではないでしょうか。この「甘く爽やかな匂い」は恋の形容詞としても使われることが多いのですが、どんな成分によるものなのでしょうか。
甘い香りの主成分、「ラクトンC10」「ラクトンC11」
10代、20代の女性特有の甘く爽やかな匂いの理由は長く不明でしたが、2018年に発表された研究により、「ラクトンC10」「ラクトンC11」と呼ばれる成分であることが明らかになりました。ラクトンC10、ラクトンC11は以前から香水等で「甘い匂い」の成分として調合されてきましたが、10代~20代の女性の体内でも多く合成され、「良い匂い」を感じる原因となっています。一方、30代以降ではその能力が弱くなるため、女性が歳を重ねるごとに感じるようになる、身体の匂いの変化の原因となっています。
ラクトンC10及びラクトンC11の甘い香りですが、天然の植物では桃やキンモクセイ、ココナッツに近いものとなります。ラクトンC11は別名でピーチアルデヒドとも呼ばれており、桃の香りの主成分です。これらの成分は総称して「アルデヒド」に分類されます。化粧品におけるアルデヒドは主に化学的に合成することによって得られる成分で、単体では必ずしも心地よい香りではないのですが、様々な成分を調合したシャネルのN°5によって一躍有名となり、今日では先述の2種類を含め、広くフレグランスの分野で使用されるようになりました。
「ラクトンC10」「ラクトンC11」の効果
では、ラクトンC10、ラクトンC11にはどんな効果が期待できるのでしょうか。この2つの成分に共通する効果として、心をリラックスさせる作用が挙げられます。リラックス効果はラクトンC10を主成分としたキンモクセイ(オスマンサス)やラクトンC11を主成分としたピーチの精油の作用としても知られていますが、甘く穏やかなフレグランスを取り入れることによって気持ちの乱れを鎮め、幸福感を得ることができます。
ラクトンC10、ラクトンC11のフレグランスは加齢に伴う匂いの変化を抑えるためにも効果的です。先にも述べましたが、加齢によってこれらの成分の分泌量が減ることにより、それまで心地良さでマスキングされていた身体の匂いが変化し、加齢に伴う臭いを感じてしまいます。フレグランスとして改めて取り入れることにより、加齢に伴う臭いを抑え、気持ちの面で若さを保つことが可能です。また、近年の新しい研究ではこれらの成分に気持ちだけではなく、実際に肌のターンオーバーを促進し、若さを保つ作用があることが発見され、さらに研究が続けられています。
匂いの強い成分と聞いた場合、例え心地よさを感じるものであっても、身体への影響が心配な方もいらっしゃるかもしれません。幸いにもラクトンC10、ラクトンC11は果物や牛乳など多くの食品に含まれており、日常的に使用、摂取しても安心です。これらの成分は心だけではなく、身体にも安らぎをもたらしてくれます。
甘い香りをまとってみませんか?
「若い女性らしさ」を感じさせる香り成分「ラクトン10」「ラクトン11」について、以前は香水の調合成分の1つとして、ブレンドして用いられることが多かったのですが、最近では女性を対象としたボディーソープやシャンプー、クリーム等に多く取り入れられ、より身近な存在となりつつあります。香水では複雑な香りの一部としての存在ですが、ボディーソープやクリーム等ではその甘い香りを主役として楽しむことができます。製品価格の面でも決して高価ではなく、ドラッグストアで簡単に手に入れることができます。
「若い女性らしさ」を感じさせるラクトンC10、ラクトンC11のフレグランスですが、その香りの良さは男性にも受け入れられています。ピーチフレーバーの香水の草分け的存在はゲランのミツコですが、男女兼用の製品として愛され続け、ロングセラーとなっています。また、最近ではラクトンC10、ラクトンC11を主成分とした女性のデオドラント剤が発売されましたが、思いのほか男性にも売れているため、メーカーの担当者が困惑しているそうです。
何をもって「良い匂い」とするかは実は難しい問題です。ある人にとっては好みの匂いで毎日のように香水として使っていても、別な人にとってはとても受け付けない、といったことがしばしば起こります。そのような中で、ラクトンC10、ラクトンC11は人が自然に生み出す「いい匂い」として、男女を問わずスタンダードになれる可能性を秘めています。貴方も一度、手に取って試してみてはいかがでしょうか。
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