バラの香りの化粧品、どんな成分が含まれているの?

成分

化粧品のいい香りの代表「バラの香り」

 淹れ立てのコーヒー、焼き立てのパン、シャンプーにアロマオイル、私達のささやかな幸せにとって、良い匂いは欠かせないことの1つです。海で感じる潮風や公園の花、あるいはエスニックな香辛料の匂いは私達に普段とは違った、非日常の場所にいることを感じさせてくれます。また、匂いは恋愛にも重要な役割を果たしており、人はパートナー選びの際、知らず知らずのうちに自分にとって好みの匂いがする相手を探しているといわれています。

 香りは化粧品にとってもまた重要な要素の1つです。「匂い」に特化したアイテムである香水だけではなく、シャンプーやトリートメント、ボディーソープやボディークリーム等、あらゆる製品に心地よい匂いのする香料が使われています。化粧品の匂いには花や果物、ハーブ等、様々な種類がありますが、とりわけ古くから人気なのが「バラの香り」です。バラはその甘く繊細な香りが特徴的なだけではなく、花の美しさや高貴さが女性の美を連想させることから、バラの花から香り成分を抽出し、精油として、あるいは化粧品の香りづけ成分として多く用いられてきました。 

バラの香りはどんな成分によって生み出されているの?

 化粧品にとって相性の良いバラの香りですが、どのような成分によって生み出されているのでしょうか。天然のバラの良い香りは多くの成分が複雑に組み合わさることによって生まれていますが、主な成分としてはシトロネロール、ゲラニオールと呼ばれるテルペン系化合物、フェネチルアルコールと呼ばれる芳香族アルコールの3種類が挙げられます。

 シトロネロールはバラの他にイネ科植物の一種であるシトロネラやゼラニウム等に多く含まれており、フレッシュで甘い香りが特徴です。また、ゲラニオールはイネ科植物の一種であるパルマローザやシトロネラ、ゼラニウム等に多く含まれており、シトロネロールより穏やかでより甘い香りが特徴です。ゲラニオールはバラの香りの他に、フルーツ系の香りを表現する成分として使われることもあります。また、フェネチルアルコールはより一般的な、花の甘い香りを生み出す成分で、カーネーションはヒヤシンス、ゼラニウム等に多く含まれています。

これらの代表的な成分と他の微量な成分が組み合わさることによって、バラの香りが生み出されます。バラの香りは実は種類によって様々で、日本のバラの香りは主にシトロネロールによるものなのですが、海外のバラはゲラニオールが多いため、日本のものと比較してより甘い香りになります。

バラの香り成分にはどんな効果があるの?

 では、バラの香りにはどんな効果があるのでしょうか。バラの香りに私達は癒されますが、これは先述した3種類の代表的な成分に、気分を落ち着かせる鎮静作用があることによるものです。シトロネロールやゲラニオールは植物に虫が寄り付かないように生成される香り成分なのですが、私達にとっては幸せなひとときをもたらしてくれます。一方、フェネチルアルコールはやや異なり、虫にとっても私達にとっても幸せをもたらしますが、花粉を運ぶ昆虫にとって天敵となるような昆虫は遠ざける効果を持っています。

 また、ゲラニオールやフェネチルアルコールには気分を落ち着かせる以上の効果を期待できます。ローズの精油には鎮静作用の他に、身体の匂いを抑えて「良い香り」を持続させる、女性ホルモンのバランスを整えるといった効能が知られていますが、これらはゲラニオールの働きによるものであることが知られています。また、最近の研究でフェネチルアルコールにはストレスを軽減し、うつ状態になりにくくする効果があることが確認されました。

 これらの成分は化粧品づくりにとっても有用です。植物由来の成分の中には製品内での保存に気を遣う必要があるものが存在しますが、この3種類の成分は共通して高い抗菌、防腐作用を持っているため、化粧品の香りづけと同時に保存性を高める成分として使用することも可能です。

バラの香り、人工的にも作れるの?

このように様々な効果が期待できるバラの香りですが、精油やエキスとしてそのまま利用するだけではなく、シトロネロール、ゲラニオール、フェネチルアルコールといった代表的な成分を他の植物から抽出、あるいは石油由来の原料から人工的に合成、調合することも可能です。人工的に合成、調合した香料は基本的には天然由来のものと変わらず使用可能で、同じように甘い香りを楽しむことができます。また、抗菌作用等についても同様の効果を期待できます。

しかし、人工的に合成、調合した香料は天然の精油やエキスと比較すると香りの「繊細さ」にはやや欠けます。先にも述べましたが、バラの香りは多くの複雑な成分の組み合わせによって生まれており、まだ解明が進んでいない成分も存在します。人工的なバラの香りは代表的な成分だけで生まれているため、おおよその香りは再現できても、敏感な人は天然成分との違いを感じ取ることでしょう。

一方、人工的に調合した香料にはアレルギーのリスクが少ない、低温で成分が固まらないといったメリットもあり、製品の性格に応じた使い分けがされています。香りだけを楽しむのであれば精油やエキスが含まれた製品を使った方が良いですが、化粧品の好みの香りとして選ぶのであれば、人工的に調合されたものを選んでも問題ありません。

バラの香り、もっと楽しんでみませんか

 化粧品の代表的な匂いの1つである「バラの香り」ですが、単に花の美しさ、エレガントな佇まいを女性の美と重ねているだけではなく、私達の心を落ち着かせ、活力ある毎日を送るために有用な成分です。バラを前面に押したパッケージデザインや香りは他のラベンダーやペパーミント、シトラス等と比較すると敷居が高く感じることもありますが、人工的に調合したものもあり、イメージよりはずっと手軽に利用することができます。今まで少し敬遠していた人も、バラの香りを毎日のケアに取り入れてみてはいかがでしょうか。きっと貴方の毎日をもう少し華やかにしてくれることでしょう。 

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