ミネラルって肌に良いの?それとも悪いの?
貴方は「ミネラル」という言葉にどんな印象を持っていますか。ミネラルウォーター、サプリメントのマルチミネラルなど、身体にとって良い成分、といったイメージを持っている方が多いのではないでしょうか。化粧品に目を向けてみても、ミネラルファンデーションは十分なカバー力と肌への優しさを兼ね備えたアイテムとして知られており、また、海洋深層水や温泉水を使った「ミネラル化粧水」は肌の調子を整えるアイテムとしてしばしば取り上げられます。
一方、「ミネラル」は時に肌や身体にとって悪い成分として取り上げられることもあります。「ミネラルオイル」、「鉱物油」はその代表格で、石油由来で刺激が強いとされ、敏感肌の場合は使用を避けた方が良いと言われることがあります。「低刺激」や「マイルド」をテーマにしたクレンジングオイルやクリーム、日焼け止めはしばしば「ミネラルオイルフリー」もしくは「鉱物油フリー」を謳っています。また、飲み物やサプリメントではお馴染みの成分であるにも関わらず、化粧水やクリームの成分としては一般的ではありません。本当は肌に良いのか悪いのか戸惑ってしまいますが、実際のところはどうなのでしょうか。
化粧品の「ミネラル」①酸化チタン、酸化鉄などの無機化合物
実は化粧品の「ミネラル」は1種類の成分ではなく、時と場合によって指し示す内容が異なります。ファンデーションなどのメイクで「ミネラル」という言葉が使われている場合、それは酸化チタンや酸化亜鉛、酸化鉄、マイカといった体質顔料のことを指します。これらの無機顔料は有機顔料であるタール色素と同様に、メイク製品に色をつけ、肌に付着させやすくする目的で利用されますが、タール色素と比較した場合、色鮮やかさや持続性には劣るものの、使用感が軽く、肌への刺激がより少ないことが特徴です。
ナチュラルコスメのジャンルを中心に「ミネラルファンデーション」と謳った製品が発売されており、肌に優しい化粧品として紹介されています。特に決まりはないのですが、ミネラルファンデーションの多くが「タール色素不使用」であり、また、中には「タルク不使用」や「防腐剤不使用」を謳った製品も存在します。タール色素もタルクも決して肌に負担の大きな成分ではなく、十分に安心して使うことができますが、肌の不調を感じている時には試してみると良いでしょう。
化粧品のミネラル②ミネラルオイル(鉱物油)
一方、クレンジングオイルやクリームなど、油性の化粧品で「ミネラル」という言葉が使われている場合、一般的にミネラルオイル(鉱物油)のことを指します。ミネラルオイルは流動パラフィンと呼ばれることもあり、
石油を精製することによって得られる油分のことを指します。安く大量に合成可能で肌ざわりも良く、酸化にも強いため、油性の化粧品の基剤成分としては最もポピュラーな成分の1つです。以前は石油由来の不純物が肌に悪さをすることがありましたが、最近では技術の進歩により、その心配も少なくなりました。
現在ではとても安心して使える成分なのですが、不純物や石油自体のネガティブなイメージ、また、しっかり落とさないと毛穴詰まりの原因になることなどから、ナチュラルコスメや低刺激を謳った製品の中にはアルコールフリーや防腐剤フリーと同様に、ミネラルオイル(鉱物油)フリーの製品も存在します。この場合、合成エステルや植物油脂がミネラルオイルの代わりに使用されており、やや高価ですが肌により馴染みやすいのが特徴です。現在使っている化粧品が何となく「合わない」と感じていたら試してみても良いでしょう。
化粧品のミネラル③微量に含まれる金属塩
化粧品における「ミネラル」は概ね無機顔料や鉱物油のことを指しますが、一部の化粧水ではミネラルウォーターやサプリメントと同様に、「金属塩」のことを指していることがあります。これらの製品には温泉水や海洋深層水が含まれており、肌にとって必要な微量成分を補い、調子を整えることを目的としています。ご当地コスメなどで時々見かけることがあり、思わず旅の記念に買いたくなりますが、全国で販売されている化粧品では少ないかもしれません。
実はこの場合の「ミネラル」は肌にとっては嬉しい成分であるものの、「化粧品」にとっては悩ましい存在です。金属塩は温度やpH、他の成分との組み合わせでしばしば他の成分と反応したり、沈殿したりしてしまうため、製品としての見栄えや品質が損なわれてしまいます。そのため、多くの製品では金属塩が豊富な温泉水や鉱泉水はやや敬遠され、代わりに不純物を全て取り除いた精製水が好んで利用されます。
私達にとって欠かせない「ミネラル」という存在
このように、化粧品には「ミネラル」と呼ばれる様々な成分が利用されています。あるものは肌にとって優しく有り難い存在として、またあるものは便利で手軽な欠かせない存在として、あらゆる化粧品に取り入れられています。ミネラルの代わりに他の成分を使うことも一応可能ですが、特にアレルギーなどに悩まされていなければ敢えて不便なことをする必要はないでしょう。特に酸化チタンや酸化鉄といった無機顔料については化粧品原料のスタンダードとして長く利用されており、今後もずっと利用され続けるでしょう。ミネラルは化粧品にとって、毎日の食卓にとって欠かせないお米のような存在です。時には遠い国で採掘に携わる方々に思いを馳せ、感謝をしてみてはいかがでしょうか。
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