口紅の色とトレンド
これから仕事に行きます、友達と遊びに行きます、大切な人に会いに行きます、お休みモードの自分をアクティブモードに切り替えるため、私達は日々メイクに励みます。ファンデーションやチークで顔色を整えて、アイブロウで眉毛を書いて、頑張ることで自分をより輝かせることができますが、最もインパクトの強いのは唇を彩る口紅かもしれません。自然な色味の口紅を使えば健康的に見せることができ、艶やかな赤い口紅を使えばより自分をより魅力的に見せることができます。
そんな口紅ですが、時代によって好まれる色味が周期的に変わってきました。バブルの頃のドラマやPVを観ると深紅やピンク、青みがかったものなど、官能的な色味を持った口紅の流行を伺い知ることができます。その後、平成の時代にはよりナチュラルに、肌の色に自然に溶け込むような口紅が流行しますが、最近になってまた、濃い色がやや好まれるようになりつつあります。口紅の好みの変化については景気の良さに連動している、世相を反映している、他のファッションと同じリバイバルが定期的に起こるなど、色々と言われていますが、これでなければならないといったことはなく、自分の好みに応じて色を選ぶことができます。
口紅の「赤」がもたらす効果
口紅の色はピンクにオレンジ、青に紫など、様々な種類がありますが、最も基本的な色は「赤」で、どのメーカーからも赤を中心とした製品展開がされています。では、どうして口紅は赤色が基本なのでしょうか。改めて説明するまでもないかもしれませんが、口紅は唇の元々の色である赤色をより綺麗に、鮮やかにすることにより、顔色をより良く見せる働きがあります。また、赤い口紅は肌のトーンを強調する働きがあります。肌の色が比較的明るい場合、濃い口紅を使うことによって肌の明るさがより強調され、より明るく見せることができます。よく日焼けした肌の場合は逆に口紅をナチュラルに塗ることにより、肌の色を健康的に見せることができます。
また、赤色自体の持つ心理的な効果も古くからよく知られており、赤い口紅を使うことでより前向きな気持ちになれる、周囲からの視線を集めることができる、自分と相手の気持ちを昂らせることができるなど、生活をよりアクティブなものにすることができます。勿論、この赤の持つ効果は他の服でもバッグでも、ハイヒールでも良いのですが、顔の中心である唇にピンポイントに赤を取り入れることによって、より見て欲しい場所に相手の注意を向けることができます。
口紅の「赤」は何からできているの?
ところで、この口紅の「赤」は何からできているのでしょうか。広告では「愛」や「情熱」、「官能」などと表現されますが、科学では「タール色素」や「天然色素」といった言葉で表現されます。
「タール色素」とは一般的に「赤色〇〇号」のように色+数字で記載されている成分の総称で、食品等にも広く使用されていますが、口紅には赤色以外も含めて58種類が使用されています。かつては石炭から作られていましたが、現在では石油から作られているため、「合成着色料」といった表現の方が適切かもしれません。タール色素を使った口紅は発色がとても鮮やかで、製品そのものも、実際に唇に塗ってみても、とても写真映えします。
また、天然色素は「コチニール」「紅花色素」等が主に使われています。コチニールは動物由来、紅花色素は植物由来の色素となりますが、いわゆるオーガニックコスメのジャンルを中心に幅広く使用されています。こちらについても食品等他の用途でも利用されており、お菓子や飲料、かまぼこ等の成分表示で見たことのある方も少なくないでしょう。こちらは鮮やかさではタール色素にますが、取り入れやすい自然な色味を表現することができます。
口紅には「色」以外の成分も含まれています。口紅のスティック状の形は「ワックス」によって作られています。ワックスは室温では固体ですが、体温より若干高い温度で溶けやすくなる性質を持っており、唇の上では薄く延ばすことができます。また、ワックスにはツヤを出す効果があることから、口紅を塗った唇はつややかに見え、他にも保湿効果なども持ち合わせています。ワックスの他にも、最近では唇の荒れを防ぐエモリエント成分や保湿成分など、様々な成分を取り入れる試みがされています。
口紅の「赤」は使い続けても大丈夫?
唇を彩っている口紅ですが、どうしても口に入ってしまう場所に塗るため、安全性については他の化粧品以上に気になります。実際のところはどうなのでしょうか。ナチュラルコスメの中には食用成分100%の「食べられる口紅」等も発売されていますが、そのような製品ではなくとも、口紅に使用されている成分については他の化粧品よりも厳しい基準が設けられ、発がん性や刺激性等の観点で「食べても問題のない」成分のみが使用されています。特にトラブルを感じなければ長い間使い続けても大きな問題はありません。
しかし、口紅の「赤」に関してはタール色素、天然色素いずれについても多少の課題を抱えています。タール色素は唇を彩る観点からは優秀なのですが、その効果が強すぎるため、皮膚への色素の沈着や肌荒れが起こることがあります。一方、天然色素については、色素沈着や肌荒れなどは起こしにくいのですが、体質によってはアレルギー反応の原因となることがあります。使用していて肌荒れなどの異常を感じた場合は症状の程度に応じて唇のケアを行う、その製品の使用を止め、他の製品に代えてみる等の対応を取ってください。
また、長い間使い続ける上では、年齢を重ねてゆく上での雰囲気や肌の色の変化にも気を配ることが大切です。10代、20代の透き通るような白い肌に濃い赤の口紅の組み合わせはとても魅力的に映りますが、年齢を重ねるにしたがって落ち着いた雰囲気を自然とまとうようになり、また、肌の色もやや黄色みがかかるため、濃い赤の口紅はやや落ち着かない感じになります。ある程度年齢を重ねた場合、赤色よりもピンクやオレンジ、ベージュに近い口紅を取り入れた方が自身の魅力をより引き出すことができるでしょう。
口紅は最も手軽に使えるメイクの1つですが、貴方の魅力を引き立てる上で欠かせない「赤」を加えることができる貴重なアイテムです。もう少しだけ関心を持って、より貴方に合ったものを使ってみてはいかがでしょうか。
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