界面活性剤ってどんな作用をするの?身体に悪いって本当?

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「界面活性剤」ってどんなもの? 

 シャンプーや化粧水、クレンジングオイル、ごく当たり前のように毎日使う化粧品を選ぶとき、「界面活性剤フリー」や「石油系界面活性剤不使用」といった言葉を目にすることがあります。また、化粧品や洗剤に関する環境問題について取り上げた記事の中で、界面活性剤が川や海の生き物に悪い影響を及ぼしている、といった内容をご覧になった方もいらっしゃるかもしれません。働きはよく判らないけれども、どうも身体に悪そう、そんなイメージを持つ方が多いのではないでしょうか。

 そんな界面活性剤ですが、実は化粧品や洗剤、シャンプーなどにとって必要不可欠な成分です。1日の終わりにメイクを落とすとき、暑い夏の日に髪を洗う時、お湯だけで試してみたけどメイクが落ちきらない、どうもベタついた感じが残ってしまう、そんな経験をした方もいらっしゃるかもしれません。原因はファンデーションや頭皮の汚れの原因となる皮脂が油性の成分で、水と馴染みにくい性質を持っているからです。したがって、物理的に剥がして洗い流すことは可能でも、皮膚に密着した油分を落とすことは困難です。界面活性剤はその分子中に水と馴染みやすい構造(親水基)と油と馴染みやすい構造(親油基)の両方を持っているため、水性成分、油性成分の仲介役として機能するほか、幾つかの特徴を持ち合わせています。

界面活性剤はどんな作用をするの?

 製品中に含まれている界面活性剤の代表的な作用として、次に述べる2つを挙げることができます。1つは界面の表面張力を下げ、水分や他の成分を浸透させやすくする作用です。洗顔を例に挙げると、水だけで洗顔を行った場合、肌の表面で水が弾かれ、そのまま流れてしまうように感じられます。これは水分子同士に表面張力が働くことにより結びつき、表面に留まってしまうことが原因です。一方、洗顔フォームやクレンジングオイル等を使用すると、界面活性剤の働きにより水分子が結びつきにくくなり、自由に動けるようになるため、肌の奥まで浸透するようになります。

 もう1つは水と油性成分が混じり合った状態とする、いわゆる「乳化」作用です。水に界面活性剤を溶かすと初めは表面に薄い膜を張りますが、濃度を上げると水中に「ミセル」と呼ばれる外側に親水基、内側に疎水基を持った球体を形成します。ミセルは水中に安定して存在し、油性成分を中に取り込む作用があるため、水と油が混ざった状態を作り上げることができます。この性質を利用して、シャンプーやクレンジングでは皮脂やファンデーション等を水で洗い落とすことができ、また、化粧水や乳液では本来水とは混ざらない、油性の保湿、美容成分を溶かし込むことができます。

界面活性剤の種類、~石油系とアミノ酸系~

 界面活性剤には大きく分けて石油系のもの、アミノ酸系のものが存在します。石油系の界面活性剤は高級アルコールをエステル化、中和することによって合成され、代表的な成分としてラウリル硫酸ナトリウム、ラウレス硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等が挙げられます。構造によって使用感等に若干の違いがみられますが、いずれも気泡を発生し、油汚れを落とす作用に優れていることから

シャンプー、クレンジングオイルといった広義の化粧品、あるいは洗剤等に幅広く使用されています。ラウリル硫酸ナトリウムは発泡性に優れており、かつては広く用いられていましたが、やや皮膚への刺激が強いため、最近はややラウレス硫酸ナトリウムが好んで使用されるようになっています。

 一方、アミノ酸系の界面活性剤はアミノ酸や脂肪酸を原料として合成され、代表的な成分としてはココイルグルタミン酸ナトリウム、ココイルメチルアラニンナトリウム、ココイルグリシンナトリウム等が挙げられます。これらは石油系界面活性剤と同じような作用を持っていますが、比較すると泡立ちや油汚れを落とす作用は控えめになります。コスト面も石油系と比較してやや高いことから、洗浄作用が控えめであること、また、天然成分であることを活かすような処方で好んで使用されています。

石油系のものは身体に悪いの?アミノ酸系は身体に良いの?

 ラウリル硫酸塩に代表される石油系の界面活性剤についてインターネット上で検索すると、しばしば「身体に悪い」成分との意見を目にします。特にシャンプーの成分比較等のサイトにおいては、「ラウリル硫酸塩」「ラウレス硫酸塩」は頭皮を痛めてしまう成分の代表格で、アミノ酸系の成分が含まれたものを使うべきといった意見が、主に美容師、理容師の立場の方から発信されています。実際はどうなのでしょうか。

 これらが「身体に悪い」と言われる原因はその洗浄力の強さによるものです。普通肌や脂性肌の方が想定されるシーンで利用した場合、石油系界面活性剤は適切に汚れやメイクを落としてくれますが、乾燥肌や敏感肌といったトラブルを抱えている場合、皮脂を除去する力が強すぎるあまり、肌の状態をさらに悪化させてしまう恐れがあります。また、刺激性がややアミノ酸系のものと比較して強いため、肌の状態によっては炎症を起こしてしまう可能性もあります。特に美容師、理容師の方は日に何度もシャンプーを使用するといった職業柄、手荒れといった形でこの部分を実感することが多くなります。そのため、肌への刺激が少ないアミノ酸系の成分をお勧めし、いわゆる「サロン系」シャンプーの開発、発売を手掛けています。

結局どちらを選べば良いの?

 普段使いの観点から考えると、石油系界面活性剤、いわゆるラウレス硫酸ナトリウム等を利用した製品の方がやや使いやすいです。特に油分を落とすことを目的とした場合、先に述べた泡立ちや洗浄性の部分で石油系成分の方が大きく優れており、肌に大きなトラブルを抱えていないのであれば使用することに特に問題はありません。アミノ酸系の成分のみを使用した製品は洗浄作用がマイルドなため、注意して使用しないと十分に汚れを落としきれない可能性があります。皮膚にメイクや過剰な皮脂が残っている状態は肌荒れの原因となってしまうため、肌に良かれと思って使用していても実は逆効果だった、ということも考えられます。

 一方、アミノ酸系の界面活性剤を使用した製品は「低刺激」というコンセプトで作られており、美容や保湿に良い成分を多く含んだ処方設計となっています。香料や防腐剤、アルコールフリーといった敏感肌の方にとって嬉しい処方となっているものも多く、安心して利用することが可能です。基本的な成分の選び方に製品の開発コンセプトが反映されているため、「アミノ酸系の界面活性剤」に着目すれば低刺激の製品を選ぶことができます。

 界面活性剤は日々の生活に不可欠な成分で、今後も改良され、日常の多くのシーンで使い続けられることでしょう。そのことについて必要以上に不安に感じる必要はありません。自分の肌質や体調、使い方と合わせて、自分のお気に入りの製品を選ぶようにしてください。新しい成分の開発も日々続けられているため、今後は洗浄力の高さと肌への優しさ、機能性をより兼ね備えた製品も生み出されることでしょう。

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