肌にとって欠かせない「水分」という存在
「肌の調子はいかがでしょうか」。この質問に、貴方はどのように答えますか。掴みどころがなくて意外に困ってしまう質問ですが、ごくシンプルかつ丁寧に答えるのであれば、「しっとり」「カサカサ」という言葉を使う方が多いのではないでしょうか。肌の調子が良いときは水分量が多く「しっとり」としていますが、バランスが崩れると乾燥した「カサカサ」の状態になり、肌荒れなどのトラブルに悩まされてしまいます。特に冬の時期は肌の水分が失われやすく、化粧水や乳液、ハンドクリームなど「しっとり」を保つためのケアが欠かせません。
このように肌の調子を表現する代名詞となっている水分は、皮膚の中で様々な役割を担っています。一般的な肌には30%強の水分が含まれており、肌の角質層ではその適度な弾力性を保ったり、バリア機能を維持したりするのに必要なだけではなく、正常なターンオーバーの維持、促進に必要な成分や不要な老廃物を運搬するためにも欠かせない存在です。そのため、肌自身もなるべく多くの水分を留めておけるような構造を持っており、天然保湿因子による作用や皮脂の分泌はその一例です。
肌への水分、どうやって補給するの?
では、「水分」はどのように肌まで行き渡るのでしょうか。肌に水分が届く経路は大きく分けて2種類存在し、1つは食べ物や飲み物として摂取することによるものです。食べ物や飲み物として摂取された水分は腸で吸収されて体内を巡り、その一部が肌の機能を維持するために利用されます。そのため、肌の水分量を維持するためには冬場であってもこまめな水分補給が欠かせません。また、特に水分をより効率的に吸収させたい場合にはミネラルウォーターよりも麦茶やスポーツ飲料などの方が適しています。
肌に水分を届けるもう1つの方法は「肌に水分を直接浸透させる」ことです。化粧品、特に化粧水やオールインワンゲルなど水分量の多いアイテムを肌につけるとショットグラスよりも少ない僅かな量であっても「表面から水分が吸収され」「角質層に浸透」し、しっとりと感じられます。また、化粧品を使わなくてもお風呂、特に温泉に長く浸かっていると肌に水分が入り込み、表面が少しふやけた感じになります。一部では「化粧品は肌から浸透しない」と言われることもありますが、どうして水分はよく浸透するのでしょうか。
肌に水分が浸透する仕組み「半透膜」「浸透圧」
肌に水分が浸透する仕組みはとてもシンプルで、肌の角質層が持っている「半透膜」と呼ばれる性質によるものです。半透膜とは「ある一定の大きさまでの分子は通し、それ以上の大きさの分子は通さない」膜の事で、動物や植物のあらゆる細胞に存在します。また、半透膜を挟んだ内と外では浸透圧と呼ばれる作用が働き、水や低分子、イオンなどが多い方から少ない方に移動し、膜の内外の濃度が一定になるように調整されます。肌の角質層についても、水やごく小さな分子を体内に取り込む一方で、砂粒や誤って食べると危険な高分子系の毒物が取り込まれることをよく防ぎます。
水や化粧水を肌につけるとこの浸透圧により、水分や保湿成分がごく速やかに肌に吸収されます。特に冬の寒い時期、化粧水を肌につけても直ぐに乾いたように感じられることがありますが、直ぐに蒸発しているのではなく、水分不足の肌に吸収されていることが原因です。高価な化粧水を少しずつ使う、という方も多いかもしれませんが、乾燥気味であればシンプルなものを大量に使った方がより多くの水分を補給することができます。
化粧水を使うべき理由
このように速やかに肌に浸透する水分ですが、どうして水分補給に「化粧水」をわざわざ使うのでしょうか。最も大きな理由は「水分を保持する力」の強さです。化粧水にはグリセリンやヒアルロン酸などが含まれており、水道水や精製水と比較してある程度のべたつきやとろみがあり、肌につけやすくなっています。また、肌につけた後に角質層に浸透し、今度は肌から水分が失われるのを防ぐ効果を発揮します。そのため、多かれ少なかれ、肌の乾燥に悩まされている状態では化粧水が効果を発揮します。
水分を保持する力はとてもよく知られていますが、もう1つの大きな理由は「浸透圧」によるものです。先程、半透膜が水分や低分子を取り込む作用を紹介しましたが、この作用は角質層の外から内だけではなく、逆方法にも作用します。すなわち、精製水や水道水を使った場合、肌に水分が供給される一方で必要なミネラル分が角質層の外へと移動し、取り除かれてしまいます。また、逆に海水浴の後はより深刻で、シャワーで海水を洗い流さないと塩分濃度の差によって肌の水分が失われてしまいます。適当な濃度に調整された化粧水を用いることによって、肌にとって必要な成分が失われることを防ぐことができます。
潤いを「助ける」化粧品という存在
最近では落ち着いた表現が増えてきましたが、以前は化粧品の効果ばかりが取り上げられ過ぎるがあまり、そもそも「潤い」や「浸透」って何だっけ、という疑問を抱くことがありました。実際のところ、水は化粧品を使わなくても肌によく浸透しますが、「浸透した水分、あるいは肌にとって必要な成分を保持し、健康を保つ」上で化粧品は大切な役割を果たしており、欠かせない存在です。貴方の忙しい毎日を、化粧品でもう少しだけ潤わせてみてはいかがでしょうか。
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