「常夏の島」のユニークな果物コスメ
貴方はご当地コスメ、と聞いてどんなものを思い浮かべますか。旅行好きの方であれば誰もが現地の名産品を使ったコスメを見かけたり、実際に使ったりしたことがあるのではないでしょうか。特に柑橘系の果物を利用したご当地コスメは定番で、ふるさと納税の返礼品などでもよく目にします。果物を利用した化粧水やクリームは原料由来のビタミンCやポリフェノールを豊富に含んでおり、肌のシミやシワ予防、保湿に一役買ってくれる存在です。
しかし、沖縄などの南の島に旅行すると、普段使いの化粧品ではあまり目にしない、珍しい果物を使ったご当地コスメが販売されています。柑橘系のシークワーサーやハーブティの材料として使われる月桃などが定番ですが、時にはパイナップルやパパイヤ、マンゴーなどが使われていることもあります。化粧品成分よりも食べ物としてのイメージが強いこれらの果物ですが、一体、どんな効果が期待できるのでしょうか。
南国の果物の効果①抗酸化作用によるシミやシワの防止
このような南国の果物由来の成分ですが、一般的な果物と同様に優れた抗酸化作用を発揮します。特に効果が期待できるものが月桃の葉の抽出物（ゲットウ葉エキス）で、抗酸化作用に優れたフラボノイド類や香り成分としても知られるゲラニオールを豊富に含んでおり、肌につけると活性酸素の作用を抑え、肌のシワやしみ、くすみを予防します。また、パイナップル果実エキスやチンピエキス（シークワーサー果実エキス）、マンゴー果実エキスにも抗酸化作用に優れたビタミンCやフラボノイド類が含まれており、同様の効果を期待することができます。
また、月桃は精油の原料としても比較的知られている存在で、主成分であるp-シメンやリモネン、α-ピネンは特有の爽やかでスパイシーな香りを生み出しているだけではなく、抗酸化作用を期待することもできます。そして、p-シメンやリモネンはシークワーサーの精油の主成分でもあるため、使用することで同様の作用を発揮します。
南国の果物の効果②酵素によるタンパク質分解
一方、南国の果物由来の成分特有の効果として、酵素によるピーリング（古い角質や皮脂を溶かす）作用が挙げられます。パイナップルはその甘みと酸味の程良いバランスから、バナナと並んで最も馴染み深い「南国のフルーツ」の1つですが、生のものを食べ過ぎると舌が痛くなってしまいます。これはパイナップルに含まれているブロメラインと呼ばれる酵素がタンパク質を分解することによって生じる現象です。また、熟れていないパパイヤにも同様の作用を示すパパインと呼ばれる酵素が含まれており、大量に生食すると同じ症状に悩まされます。
このブロメラインやパパインは総称してシステインプロテアーゼと呼ばれ、肌につけると構造中のシステイン残基と呼ばれる部分がタンパク質のペプチド結合に作用し、加水分解反応を引き起こします。そして、加水分解されたタンパク質は分解前のものと比較して水と比較的馴染みやすく、洗顔などで洗い落としやすくなります。
そのため、これらの酵素は化粧品に古くなった角質による汚れや毛穴の詰まりをより効率的に取り除く目的で配合され、利用されます。タンパク質分解と聞くとかなり刺激が強いようにも思われますが、酵素による作用は比較的穏やかで（そのため、パイナップルやパパイヤを生食することができます）、他のピーリング向けの成分より安心して利用することができます。元々は「酵素洗顔」や「ピーリング」「脱毛」の分野で利用されることが多かったこれらの成分ですが、最近ではご当地コスメとしても注目されるようになりました。
まだまだある、常夏の島の果物の嬉しい効果
南国の果物を使ったコスメの代表的な効果は先に挙げた「抗酸化作用」「タンパク質の分解」ですが、最近ではさらにユニークな作用を持った成分が開発され、利用されるようになっています。パイナップルの葉や茎を燃やして得られる炭を活性炭として皮脂や汚れの吸着に利用したり、庭木としても好んで栽培されるテリハボク（タマヌ）の種子から得られるオイル（オレイン酸、リノール酸、パルミチン酸などを含んでいます）をスキンケア製品に取り入れたりなど、その土地ならではの恵みを活かした製品を多く見かけるようになりました。
それらの製品の多くが「そのまま捨てるのは勿体ない」「使い切れない恵みをもっと活かしたい」といった想いから開発されており、単に肌につけて嬉しいだけではなく、ごみの量の削減や美しい景観や貴重な自然環境を維持してゆくための仕組みづくりにも役に立っています。
美しい海や森、温かい気候、そして珍しい食べ物、南の島には一度だけでは味わいきれない魅力が沢山詰まっています。訪れる目的は人それぞれだと思いますが、是非、現地の果物を使った「ご当地コスメ」にも目を向けてみてはいかがでしょうか。きっと貴方の旅がより素敵なものになることでしょう。
