お米に美容成分?美味しいだけじゃないの?
楽しみな毎日の食事、あなたの大好きなものは何ですか。人それぞれ、子供の頃からの好物、大人になって思う存分食べられるようになったもの、あるいは季節それぞれの旬の味だったり、色々とあるかもしれませんが、「お米」は多くの日本人にとって、好物を超えた特別な存在といえるでしょう。あまりにもありふれた存在で、普段は何気なく食べていても、海外旅行や出張でしばらくお米抜きの生活が続くと、コンビニのおにぎりや炊きたてのご飯が何よりも美味しく感じられます。
毎日の食卓に欠かせないお米ですが、最近では美容の話題でも取り上げられることが多くなりました。お米を主役とした栄養バランスの良い食事は美しい肌を維持するために欠かせません。また、日本酒に白いきめ細やかな肌を保つ効果ががあることが確認されています。しかし、最近では食べたり飲んだりするだけではなく、お米やそれを発酵させた成分が直接肌に与える効果が注目されるようになりました。
お米にはどんな成分が含まれているの?
私達が普段目にしているお米は精米された「白米」と呼ばれるものです。白米は米の胚乳と呼ばれる部分のみを取り出したもので、デンプンを主成分としています。そのため、炊き上げると柔らかくもっちりとした食感で、美味しく食べることができます。お米由来のデンプンは化粧品では基剤成分などに時々利用されますが(化粧品向けのデンプンはトウモロコシ由来のものが一般的です)、化粧品ではむしろ、精米時に取り除かれた米糠や胚芽が重要な役割を果たします。胚芽や米糠はご飯を炊いて食べる時には臭いや硬さが少し気になる部分ですが、豊富な油分や肌に優しいアミノ酸やビタミン等を豊富に含んでいるため、有効成分を抽出して利用されています。
また、お米は発酵させることによってさらに才能を開花させます。日本酒や米酢は多くの人に愛されていますが、胚乳や米糠から得られる成分を選択的に発酵させることによって、さらに高い効果を持った成分を得ることができます。中でも白米から特定の成分を抽出し、発酵することによって得られたライスパワーエキスは次世代のスキンケア成分として注目を浴びています。
定番の潤い成分「コメヌカ油」「コメヌカエキス」
玄米食が身体に優しいように、米糠は肌にとっても優しい存在です。米糠から得られる代表的な成分はコメヌカ油ですが、オレイン酸やリノール酸を主成分としており皮脂と組成がとても近いため、肌に塗ると表面からの水分蒸発を防ぐことが可能です。また、ビタミンEを豊富に含んでいるため、酸化による肌のダメージを防ぐ働きもあります。鉱物油のようにべたつかず、肌との馴染みがとても良いため、コメヌカ油は油性化粧品の基剤成分として幅広く使用されています。
また、水溶性の成分のみを抽出したものはコメヌカエキスと呼ばれます。コメヌカエキスには水溶性の多糖類やセラミド等の脂質が多く含まれており、肌に塗ると表面の水分を保持する働きがあり、抗酸化作用も持ち合わせています。また、最近では米糠を発酵させたものがコメ発酵液と呼ばれて注目されています。米糠を発酵させると糖分が分解されてアミノ酸や有機酸となりますが、より高い保湿効果を発揮するだけではなく、肌のバリア機能の改善や血行促進などの効果もあるため、美容液などに取り入れられています。
白米由来の発酵成分「ライスパワーエキス」
以前から取り入れられていた米糠と比較して、白米(胚乳)由来の化粧品は少なかったのですが、近年、白米を発酵させて得られる「ライスパワーエキス」が新しい成分として注目されています。ライスパワーエキスは発酵に豊富な知見のある酒造会社によって開発された成分で、白米由来の成分と微生物の組み合わせによって36種類が開発され、13種類が化粧品成分として実用化されています。
ライスパワーエキスの中で最も有名なものはライスパワーNo.11と呼ばれる成分で、肌表面で保湿を担い、化粧品成分としても知られているセラミドの合成を促進し、バリア機能を改善する効果があります。セラミドの合成促進を担う化粧品成分は他になく、この成分の為に医薬部外品に「皮膚水分保持機能の改善」というカテゴリが設けられました。まだ高価格帯のスキンケア化粧品が中心ですが、徐々に多くの製品に取り入れられるようになっています。
また、ライスパワーNo.6と呼ばれる成分も同様に注目されています。この成分は肌の皮脂腺に働きかけて皮脂の分泌を抑え、ニキビや毛穴の黒ずみなどを防ぎます。皮脂を取り除く成分はエタノールをはじめとして数多いのですが、必要以上に取り除くことによって肌の乾燥を引き起こしてしまうことがあります。一方、ライスパワーNo.6は「皮脂分泌の抑制」により適度な皮脂量を維持する成分として、こちらも医薬部外品のカテゴリ新設のきっかけとなっています。ライスパワーNo.11と同様にやや高価な存在ですが、徐々に化粧品に取り入れられるようになりました。
ますます深まるお米との関係
保湿成分や基剤成分として一般的に用いられており、発酵技術との組み合わせはさらなるポテンシャルも感じさせるお米ですが、身体への影響は心配ないのでしょうか。お米は天然由来の成分ですが、刺激性のある成分を含んでいないこと、また、小麦などと比較してアレルギーの心配が少ないため、安心して利用することが可能です。コメヌカ油については脂性肌に使いすぎるとニキビの原因になり、また、油の酸化には少しだけ注意が必要ですが、色々な原料の中でも最も安全性が高いものの1つです。
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