ノージェンダーコスメとは?
最近、生まれ持った性別の持つ伝統的な価値観にとらわれず、自分の「好き」に合わせて生活を楽しむといった考え方が少しずつ広まりつつあります。男性だから格好良く、女性だから美しく、男の子だから黒、女の子だから赤ではなく、その逆やそれ以外の選択肢を選ぶことが決して珍しくなくなりました。
化粧品もまた例外ではありません。以前は化粧といえば女性の身だしなみ、楽しみといったイメージが強く、男性向けの化粧品は髭剃り後のケアなどが中心でしたが、最近は男女を問わずスキンケアを行い、目の下のクマやシミ、青ひげなどを隠す目的、あるいは自分をより素敵に見せるための目的として、男性のメイクアップも徐々に一般的になりつつあります。
そのような流れの中で生まれたものが、男女を問わずに使用できるノージェンダーコスメ、あるいはユニセックスコスメです。男性向けの化粧品をごく当たり前のように見かけるようになり、また、無印良品の化粧水のように男女を問わず愛用されているものもありますが、ノージェンダーコスメは多様性の考え方に基づき、性別という考え方を持たず自分らしいスキンケアやメイクを実現して欲しいとの理念に基づいて開発されました。ヨーロッパや韓国発を中心に、色々な製品が提案されています。
ノージェンダーコスメにはどんなものがあるの?
ノージェンダーコスメで最も多く発売されているものは化粧水や乳液などのスキンケアに関するものです。男女を問わず肌を保湿し、美容成分でコンディションを整えることは綺麗な、きめ細かな肌を保ち続ける上でとても大切なため、商品として提案がしやすい部分です。商品の基本となる保湿成分等については既存の化粧品と大きく変わることはないのですが、香りづけ等については男女どちらでも抵抗がないよう、爽やかでやや落ち着いた香りが採用される、もしくは無香料である傾向があります。
また、一部のメーカーではファンデーションやポイントメイクの商品も発売しています。こちらも基本的には通常の化粧品と大きく変わることがないのですが、比較的ベーシックで使いやすいラインアップで、男女を問わずにナチュラルメイクに使用することができます。
これらの全てが「男性でも」使える化粧品ですが、男性向けとして開発されているメンズコスメとは方向性が大きく異なります。メンズコスメは男性に多い脂性肌や男性特有の使い方を想定した処方がされており、また、香りについても清涼感を前面に押し出したものが好まれます。一方、ノージェンダーコスメは特定の肌質を対象とすることなく、誰でもバランス良く使える設計になっています。
ノージェンダーのスキンケア、メイクアップとは?
ノージェンダーコスメはスキンケアに関して新しい可能性を提案しています。男女の肌の性質はホルモンバランスの影響により若干異なっており、男性はやや皮脂が過剰で顔のテカリや吹き出物等に悩まされる傾向、女性は皮脂が不足気味の為、肌の乾燥に悩まされる傾向があります。したがって、これまで男性向けのスキンケアはアルコール等で余分な皮脂を除去、抑制した上で保湿効果のある成分の補給を行う、女性向けのスキンケアは古くなった皮脂のみを取り除き、水と保湿成分を補給してさらにクリーム等で閉じ込めるといったものが主流でした。
しかし、ノージェンダーコスメについてはあらゆる肌のタイプを想定して設計されているため、肌の油分のコントロールには重点を置かず、化粧水や美容液で保湿や肌の状態を改善する成分を補給することに主眼が置かれています。また、効果をマイルドに抑えるため、天然由来成分中心の設計となっています。脂性肌、乾燥肌どちらも揃っている女性向けと比較して男性向けは選択肢が限られるため、乾燥肌でメンズコスメが合わない男性にとってはとても良い選択肢となるでしょう。
また、まだラインアップは少ないのですが、ノージェンダーコスメは男性のメイクアップについての新しい提案ともなります。男性のメイクは目の下のくまやひげなどを隠す為のポイントメイクが中心であり、また、色の種類も限られているため元の肌の色と合わず、不自然になることがあります。女性向けを使っても良いのですが、ノージェンダーコスメは基本的な色のファンデーション、チーク等を使いやすい形で取り揃えているため、自身の肌の色や好みに合わせて選び、使うことができます。
ノージェンダーコスメの商品デザイン
ここまでは比較的男性の視点から見てきましたが、ノージェンダーコスメは女性にとってもまた違った魅力を持った商品です。女性向けの化粧品のデザインについてですが、特にプチプラのものについて、「可愛すぎる」「綺麗すぎる」と感じたことはないでしょうか。元々高校生や大学生向けのブランドであっても、最近は落ち着いた色合いのメイクやコストパフォーマンスが高いスキンケア商品等のラインアップがあり、社会人になっても愛用している方も多いと聞きます。しかし、いざ化粧品を買い物かごに入れる時、ピンクや花柄の可愛さを押し出したデザインや芸能人や漫画とのコラボを見て、ミスマッチを感じる方もいらっしゃるかもしれません。
ノージェンダーコスメの容器や箱のデザインは可愛い、綺麗とは一線を画した、ごくシンプルな加飾が施されています。一切の装飾がなく化粧品であることを忘れさせるもの、白黒のみでデザインされた容器等、どれも性別や年齢を問わずに使うことができるデザインです。製品を紹介する企業のウェブサイトについても、女性向けの可愛さや妖艶さを感じるもの、男性向けの爽快さを押し出したデザインとは大きく異なり、成分や開発理念等について落ち着いたトーンで紹介したものが多いため、落ち着いて読むことができます。
また、ノージェンダーコスメは安心や安全をプロダクトデザインとして強く打ち出しています。異性のパートナー同士であっても同じ化粧品を使って良い生活を送って欲しい、そういった想いから他の化粧品と比較して天然由来の成分が多く、刺激性が少ないものが多いです。香り等の部分で女性的な味付けをしなくても商品として消費者に訴求できるのは大きな強みで、消費者目線でも大きな魅力となります。
歴史に目を向けてみると、化粧は本来自分をより良く見せるため、なりたい自分になるために男女を問わず行われてきたものでした。「男らしさ」「女らしさ」がもてはやされた20世紀に女性の美しさ、可愛さのシンボルとなりましたが、今は本来あるべき姿に戻りつつあるのかもしれません。押し付けられた役割に縛られず、無理なく自分を輝かせるアイテムとして、ノンジェンダーコスメはきっと役に立つことでしょう。
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