汗対策の定番成分「銀イオン」、どんな効果が期待できるの?

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汗対策の定番成分「銀イオン」

 貴方は「二季」という言葉をご存じですか。本来、日本は春、夏、秋、冬の「四季」があることが特徴なのですが、近年では春も秋も半袖で過ごせるような暑い日が多くなり、長い夏と冬しかない、という意味で「二季」という言葉が使われるようになったのです。そして、暑いだけならまだ良いのですが、暑さに湿気が加わるといっそう不快に感じられます。身体は体温調節のために汗をかこうとしますが、高温多湿では汗が上手く蒸発せず、べたつきや臭いに悩まされることになります。

 そんな日本の夏を快適に乗り切るためのアイテムが制汗剤やボディシートです。制汗剤やボディシートには身体を冷やしたり、汗の量や臭いを抑えたりするための成分が含まれており、夏にはとてもありがたい存在です。そして、制汗剤やボディシートに含まれている代表的な成分の1つとして「銀」が挙げられます。銀は全ての製品に含まれている訳ではないのですが、配合している製品はしばしば「銀イオン」による「殺菌」や「消臭」をパッケージに謳って販売されており、すぐに見つけることが可能です。では、銀とは一体どんな成分で、化粧品でどんな役割を担っているのでしょうか。

銀とはどんな成分なの?

 銀は化学式Agで表される貴金属の一種で、銀白色の金属光沢を持った物質です。私達にとってとても馴染み深い成分の1つで、食器やアクセサリー、歯の治療などに使用されているのを誰もが見たことがあるでしょう。また、見えないところでは半導体や鏡の材料としても用いられていることでも有名です。銀特有の性質としてはその高い反射率に起因する高い光沢感、殺菌作用の強さなどが知られています。また、しばしば誤解されることがありますが、毒性の強さで知られる「水銀」とは全く別の物質です。

化粧品成分としての銀は主に「着色剤」「殺菌剤」の2つの目的で利用されています。前者としては粉末化した金属の「銀」そのものが利用されており、銀特有の光沢感や色味を取り入れる目的で、メイクアップ化粧品、特にアイシャドウやマニキュアなどに配合されています。一方、後者としては粉末状の銀の他、酸化銀や銀イオンの水溶液などが利用されており、銀の持つ高い殺菌作用を活用すべく、化粧水や制汗剤、ボディシートなどに配合されています。殺菌剤としての銀は化粧品以外の分野でもお馴染みで、消毒液や消臭剤の成分として、あるいは浄水器や入浴施設の殺菌装置などに幅広く利用されています。

 銀の殺菌作用のメカニズムは完全には解明されていませんが、銀イオンが水中で触媒として働くことによって活性酸素を発生させ、細菌などの細胞膜を破壊して死滅させている、細胞内に取り込まれた銀イオンが周囲の酵素に作用し、細胞分裂などを阻害している、といった説などが有力です。いずれにせよ、銀イオンは多くの細菌を死滅させ、また、増殖を抑制する効果を持っており、その効果は他の成分と比較しても長期間持続することが特徴です。

銀の殺菌作用、どんなメリットがあるの?

 では、銀の持つ殺菌作用は化粧品にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。「1つは臭いの発生を抑える」効果です。夏の鬱陶しさの原因の1つとして挙げられる汗の臭いですが、実は汗自体はほぼ無臭です。しかし、汗の量が多くなる、もしくは皮脂などが大量に混ざることによって雑菌が繁殖しやすい環境が出来上がり、雑菌が汗の成分を分解することで、「酸っぱい」「雑巾のような」と形容される臭いが発生してしまいます。銀イオンを含んだボディシートやスプレーはこの雑菌を殺すことによってこの反応を抑制し、臭いの発生を抑えます。クロルヒドロキシアルミニウムやミョウバンのように汗の量自体を抑える効果はありませんが、肌に強い負担をかけることなく臭いの発生だけを抑えることが可能です。

 もう1つのメリットはニキビや肌荒れの症状を緩和する効果です。ニキビは常在菌の一種であるアクネ菌が皮脂を栄養として過剰に増殖し、炎症を引き起こすことによって発生しますが、銀イオンを含んだスキンケア製品はアクネ菌を殺すことによってこの炎症を防ぐ働きがあります。また、銀イオンは同様に肌の炎症の原因となる黄色ブドウ球菌を殺す作用も確認されているため、肌荒れ自体を緩和する効果も期待できます。よく似た作用を持った成分としてはイソプロピルメチルフェノールや塩化ベンザルコニウムなどが知られていますが、若干の刺激性があることでも知られており、それ自体が肌荒れを引き起こすことがあります。銀イオン自体にはほとんど刺激がないため、肌に優しい抗炎症剤として使用することができます。

銀イオン、使用上の注意点は?どうやって使ったらいいの?

 殺菌成分として優れた作用を持っている銀ですが、使用する上では注意点も存在します。まず気にすべきことは「金属」であることによって引き起こされる問題です。銀は歯の被せ物や食器としても使用されており、比較的安全とされている成分ですが、金属アレルギーを引き起こす方もいらっしゃいます。もし歯の被せ物やアクセサリーなどで体調不良や肌荒れに悩んだ経験があるようであれば、使用は控えた方が良いでしょう。また、普段使いには問題ないものの、MRIなどの機器に反応して発熱する恐れがあるため、病院で検査を受ける際には使用しない方が安全です。

 また、殺菌効果を持った成分に共通する問題として、過剰に使用すると逆に肌荒れを引き起こしてしまう、といったことが挙げられます。アクネ菌や黄色ブドウ球菌は肌にとって好ましくない細菌として知られていますが、他の細菌と合わせて肌表面のpH等のバランスを保つ働きがあることも判っています。そのため、過剰に殺菌すると肌表面の環境が大きく悪化してしまい、他のより好ましくない細菌の増殖や肌の炎症を引き起こすリスクがあります。銀イオンによるケアはあくまでも臭いなどの気になる症状を「緩和する」ものとして考え、適量を使用することが大事です。

 このような注意点こそあるものの、銀は肌に優しく手軽に使える殺菌成分として、私達の生活をより便利にしてくれる存在です。デパコスよりはドラッグストアや通販で見かけることが多かったり、過去に「銀イオンが十分に含まれていない」製品が流通したりといったことがあったため、色々と半信半疑な方もいらっしゃるかもしれませんが、その効果は確かなものです。貴方も一度手にとって使ってみてはいかがでしょうか。きっと、その便利さを実感するでしょう。

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