乾燥だけじゃない?冬の手荒れの原因「手洗い」「消毒」
冬の肌の悩み、と聞いて貴方はどんなことを思い浮かべますか。恐らく、大半の方が「乾燥」と答えるのではないでしょうか。あれだけ湿気に悩まされた夏が嘘であるかのように、冬は空気が乾燥し、肌もまた乾燥に悩まされます。とりわけ手は悩みを抱えやすい部分で、ハンドクリームを塗ってこまめにケアをしていても、気が付くとカサついたり、ささくれやあかぎれが起こってしまったりします。
しかし、実はこの冬の手荒れは空気の乾燥だけが原因ではありません。冬はインフルエンザやコロナウイルスなどの感染症が流行りやすい季節で、手洗いやアルコール消毒を心掛けている方も多いと思いますが、この習慣もまた、手荒れの原因となってしまうことがあります。医師や学校の先生が必ずといっていい程薦める「手洗い」や「消毒」が、どうして肌にとっては良くない影響を及ぼしてしまうのでしょうか。
「手洗い」「消毒」のデメリット①皮脂が失われる
「手洗い」「消毒」し過ぎのデメリットの1つは皮脂が失われてしまうことです。手洗い用の石鹸に使われている界面活性剤と呼ばれる成分は「水にも油にも馴染みやすい」ことを特徴としており、肌につけると皮脂や油汚れと作用することによってそれらを浮き上がらせ、水で洗い流しやすくすることができます。また、消毒用のアルコールも界面活性剤とは性質が異なるものの同様の特徴を持っており、肌の油分を取り除いたり、細菌の細胞膜に浸透してその構造を破壊し、死滅させたりする効果を期待することができます。
この石鹸や消毒用アルコールの作用は非常に優れていて、感染症の予防には優れた効果を発揮しますが、繰り返し行うことで必要以上の皮脂が取り除かれてしまいます。適度な皮脂は外部の刺激から肌を守り(いわゆる「バリア機能」)、水分蒸発を防ぐ上で重要な役割を担っているため、皮脂不足の状態をそのまま放置することにより、肌の水分が失われやすくなり、また、刺激による肌荒れを引き起こしやすくなってしまいます。
「手洗い」「消毒」のデメリット②肌の水分を奪ってしまう(アルコール消毒)
また、アルコール消毒は皮脂を奪ってしまうだけではなく、肌に含まれている水分そのものも奪ってしまいます。市販のアルコールスプレーやジェルには濃度50%〜80%のエタノールが含まれており、手につけると直ぐに蒸発する一方、優れた殺菌効果を発揮するため、手洗いよりも楽に消毒ができる、あるいは手洗いを補完するアイテムとして広く利用されています。
しかし、エタノールは非常に水に溶けやすい性質を持っているため、肌につけると周囲の水分を水素結合によって引き寄せ、一緒に揮発してしまいます。しかも、先程紹介したように、エタノールは水分の蒸発を防ぐ役割を果たしている皮脂も奪ってしまうため、結果としてより多くの水分が肌から奪われてしまいます。
手荒れを防ぐケアの方法①ハンドクリームによる油分の補給
では、手洗いや消毒による乾燥や手荒れを防ぐためにはどうすれば良いのでしょうか。これらの症状に最も効果的なアイテムはお馴染みのハンドクリームです。ハンドクリームにはワセリンや植物油など手洗いや消毒によって失われた油分を補い、肌からの水分蒸発を防ぐための成分が豊富に含まれています。また、最近ではグリセリンやヒアルロン酸、尿素などの保水効果に優れている成分、グリチルリチン酸ジカリウムやCICAなど手荒れの修復を助ける成分なども含まれており、乾燥してしまった肌を修復する効果も期待できます。ハンドクリームを乾燥の程度に応じてこまめに塗ることで、手荒れを最小限に防ぐことができます。
この方法は手洗いや消毒だけではなく、マニキュアやネイルを落とす際にも応用できます。マニキュアやネイルのリムーバーの主成分はアセトンですが、エタノールよりも強力に肌の皮脂や水分を奪ってしまうため、使用後に何もケアを行わないと肌荒れの原因となってしまいます。マニキュアやネイルを落とした爪や指にハンドクリームを塗ることで、リムーバーを使うことによるダメージを抑えることができます。もし強く乾燥を感じるようであればハンドクリームを塗る前に化粧水を馴染ませるとより効果的です。
手荒れを防ぐケアの方法②肌に負担の少ないアイテムを使う
一方、最近では肌への負担が少ない消毒液やジェルも店頭で見かけるようになりました。これらの製品は従来の製品と比較して肌への刺激が強いエタノールの配合量を抑え、イソプロピルメチルフェノールや塩化ベンザルコニウムを添加することによって十分な殺菌効果を発揮するように調整しています。また、グリセリンやヒアルロン酸などの保湿成分を配合したアイテムも販売されており、消毒と同時に保湿ケアもできるようになっています。
これらは従来の製品よりもやや殺菌作用が弱いこともありますが、普段使いでは問題ない程度の効果があります。仕事で厳しい衛生管理が求められている場合でなければ、そのようなアイテムを使うことで肌へのダメージを抑えることができるでしょう。また、自分自身の感染予防のみであれば、アルコールによる消毒自体が必要ない、といった意見もあります。殺菌作用のある石鹸を手に取ってこすり合わせ、20秒前後を目安に泡立て、その後水やお湯を使って流すことで、手指についた病原菌の大半を洗い流すことができます。
両立できる「感染予防」と「肌のケア」
このように、手洗いや消毒は冬の感染症を防ぐ上では大事な役割を果たしていますが、同時に冬場に起こりがちな手の乾燥や肌荒れを悪化させる原因でもあります。しかし、ハンドクリームなどを使ってこまめにケアを行うことで、そのリスクを大きく減らすことができます。コロナウイルスの流行以来、きっと多くの方が以前に比べて「手洗い」「消毒」をする頻度が増え、乾燥の悩みを抱えている方も少なくないことでしょう。「仕方ない」「年齢のせい」と考えるのではなく、もう一度、日々のケアの方法を見直してみてはいかがでしょうか。
-240x135.jpg)