ヘアバームやワックスの変な臭い、どうして?どうしたらいいの?

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ヘアバームやヘアワックスの「変な臭い」

 貴方はどんな香りが好きですか。ラベンダーにローズ、キンモクセイなど、「花の香り」に絞っても多くの種類があり、化粧品にも様々な形で取り入れられています。「髪の毛」に使うアイテムについても例外ではなく、特にヘアバームやヘアワックスにはお花畑を連想させる甘い香り、あるいは爽やかな柑橘系の香りなどが使用されています。初めて蓋を開けるとき、漂う香りにささやかな幸せを感じる方も少なくないことでしょう。

 しかし、その匂いは時間とともに変化してしまいます。まず、髪の毛につけて数分経ったり、何度か使ったりすると、その爽やかな香りが抜け、少し油っぽい匂いを感じるようになります。また、しばらく使わずに放置し、久し振りに蓋を開けると初めの匂いの良さからは想像もできないような、「油臭い」「酸っぱい」臭いを感じるようになります。この状態になると使うことを躊躇ってしまいますが、一体、ヘアバームやワックスに何が起こってしまったのでしょうか。

変な臭いの正体①植物油脂、原料由来の臭い

 封を開けたばかりのヘアバームやワックスでは、この「変な臭い」は大抵の場合、心配ないものです。この臭いは特にシアバターを使ったナチュラル系の製品で感じやすく、シアバターを精製する際に取り除きれていない微量な成分、あるいはシアバターの主成分であるステアリン酸やリノール酸などによるものです。これらの成分は肌や髪にとって悪いものではなく、むしろ保湿など様々な恩恵をもたらしますが、その匂いが好きではない、という方も多いようです。また、石油由来の成分を利用したヘアバームやワックスは天然由来のものと比較すると穏やかですが、原料由来の臭いを感じることがあります。

 ヘアバームやワックスの大半が香り付けされている理由の1つが、原料由来の臭いをマスキングすることです。ラベンダーやローズなどのいわゆる「フローラルの香り」はミドルノートに分類され、数時間は香りが持続しますが、シトラスやレモンなどのいわゆる「柑橘系の香り」はトップノートに分類され、香りが持続しません。そのため、髪につけてしばらく経つと香料由来の匂いを全く感じなくなり、代わりに原料そのものに由来する臭いを感じるようになります。

変な臭いの正体②油脂の酸化

 しかし、封を開けてしばらく経った後の「変な臭い」については、貴方の直感に違わず、製品の使用をやめるべき重要なサインです。先程取り上げたシアバターの場合、主成分の中でいわゆる「不飽和脂肪酸」に分類されるオレイン酸やリノール酸が空気によって酸化、分解され、ヘキサナール(大豆の青臭さ)やヘキセナール(カメムシの臭い)といった不快な臭いを発するアルデヒドが生成します。また、馬油を使ったヘアバームもありますが、馬油に含まれるパルミトレイン酸が酸化されると加齢臭の原因となるノネナールが生成し、多くの人にとって心地良くない臭いを感じてしまいます。

 このようなアルデヒドは臭いが不快なだけではなく、髪や肌に対して強い刺激性があることでも知られています。また、さらに酸化されるとより刺激の強い低級カルボン酸へと変化し、髪や肌にさらにダメージを与えます。いずれもごく少量では問題ありませんが(酸化自体は開封後すぐに始まるため、完全に防ぐことはできません)、油脂本来の匂いではない「油臭さ」や「酸っぱい臭い」を感じた場合、その製品はもう使うことができない状態です。

 天然由来の油脂の中には酸化されにくいものも存在し、ステアリン酸などのいわゆる「飽和脂肪酸」が該当します。これらは長期間放置していても中々酸化しませんが、常温ではとても固く、手のひらやドライヤーで軽く温めた位では柔らかくなりません。そのため、飽和脂肪酸だけを使った「ワックス」や「バーム」はありません。

「変な臭い」を避けるためにはどうしたらいいの?

 では、このような「変な臭い」に出会わないためにはどうすれば良いのでしょうか。まず、油脂の酸化については基本的に「早く使い切る」ことが大事です。ミツロウやシアバターは天然由来の成分の中では比較的酸化に強く、また、トコフェロールなどの酸化防止剤も含まれていますが、空気中の酸素に触れることによって徐々に酸化し、肌にとって望ましくないアルデヒドやカルボン酸へと変化します。開封後は高温になる環境での保存を避け、おおよそ1ヶ月から3ヶ月以内に使い切ると良いでしょう。

 一方、素材そのものの臭いに関しては、アイテム選びが重要になってきます。天然由来の製品を使いたいということであれば、素材の臭いを極力抑えた原料(「精製シアバター」や「脱臭ミツロウ」などが知られています)が使用されたもの、あるいは香りが長時間持続するラベンダーやローズ、バニラなどの製品を選ぶと良いでしょう。また、特に髪の毛に悩みを感じていないのであれば、石油由来の合成ワックスなどを使用した、よりオーソドックスな製品を利用しても良いでしょう。合成ワックスは髪や肌への刺激性が問題だとされることもありますが、値段も手頃で酸化にも強く、「変な臭い」もないため、安心して使うことができます。

 「匂い」は私達に幸せをもたらし、「臭い」は不幸せをもたらします。毎日使うものであるからこそ、貴方にとって心地よいものを選び、注意しながら使うようにしてください。

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