石鹸による手洗い、本当はどんな効果があるの?

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手洗いの必需品「石鹸」

 実りの秋も終わりを迎え、いよいよ冬が訪れようとしています。ウィンタースポーツやイルミネーション、鍋料理など季節ならではの楽しみも多い冬ですが、インフルエンザやコロナウイルスなどの感染症で体調を崩しやすい季節でもあります。そのため、冬になると体調管理の手段の1つとして、「石鹸で手を洗う」ことを親や先生から何度も習った、あるいは注意された記憶がある方も多いことでしょう。

 しかし、どうして「石鹸を使った手洗い」は体調管理に欠かせないなのでしょうか。「石鹸」は服や肌、髪についた汚れを落とすために使ったり、時には香りを楽しんだりするために利用されるお馴染みのアイテムですが、アルコールや一部の精油のように細菌を殺したり、免疫力を高めたりするような話を聞くことはほとんどありません。石鹸が身体に及ぼす良い効果とは、一体どのようなものなのでしょうか。

石鹸による手洗いのメリット①汚れや病原菌を「洗い流す」

 手洗いに石鹸を使うことの最大のメリットは、汚れや病原菌をより効率的に「洗い流せる」ことです。石鹸を使わずに手を洗った場合でも、水で勢いよく流すことで汚れを取り除くことができますが、皮脂や油汚れは水と馴染まないため、丁寧にこすり洗いをしてもどうしても手に残ってしまいます。また、病原菌についても同様で、水だけで15秒程度手洗いをすることで99%のウイルスを流せるといったデータもありますが、感染力の強い病原菌の影響力を防ぐためには不十分です。

 石鹸には「界面活性剤」と呼ばれる成分が含まれており、油汚れや病原菌を皮膚から浮かび上がらせ、洗い落としやすくする役割を果たします。界面活性剤には様々な種類がありますが、いずれも構造の中に水と馴染みやすい「親水基」、油と馴染みやすい「疎水基」と呼ばれる部分を持っていることが特徴です。界面活性剤を肌につけると油と馴染みやすい疎水基の部分が皮脂や病原菌と引き寄せ合うことにより、それらを浮かび上がらせて包み込み、水と馴染みやすい親水基の部分が構造の外側を向いて規則正しく並ぶことで、水で洗い流しやすい状態へと変化します。水で濡らした手に石鹸をつけて15秒から20秒間擦り合わせ、その後水で流すことで、肌にとって不要な皮脂や油汚れを効率的に取り除き、また、病原菌による感染症のリスクを大幅に減らすことができます。

 しかし、通常の石鹸は病原菌を「取り除く」作用に優れている一方で、「殺す」作用はほとんど持っていません(病原菌の増殖を「抑える」作用はあります)。そのため、石鹸は日常的な手洗いには向いていますが、病院など様々な病原菌に触れてしまう、あるいは他人に感染させてしまうリスクの高い場所ではプラスアルファの対策が必要になります。

 

 

石鹸による手洗いのメリット②「菌を殺す」(薬用石鹸)

 石鹸に菌を殺す作用を期待したい場合、「薬用石鹸」と呼ばれるアイテムを選ぶと良いでしょう。薬用石鹸は普通の石鹸に特定の成分を加えることで医薬部外品としての効果をもたせたもので、肌の炎症を鎮めたり、ニキビを予防したりといった幾つかの効果を謳ったものが販売されていますが、販売されている製品の大半は「殺菌」や「消毒」を謳っていおり、実際に効果を期待することができます。

 これらの製品には細胞膜を破壊し、タンパク質を変性させることによって幅広い病原菌を殺す作用のあるイソプロピルメチルフェノール、白癬菌などの真菌類の細胞膜を変化させ、壊死させる作用のあるミコナゾール硫酸塩などが用いられています。そのため、手洗いに利用することによって病原菌を単に洗い流すだけではなく、殺してその数を減らすことにより、より強い感染防止効果を期待できます。また、最近ではあまり用いられなくなりましたが、かつては細菌の脂肪酸合成を阻害する作用があるトリクロサンやトリクロカルバンもよく用いられていました。

 この「薬用石鹸」は家庭や職場での感染予防には便利な存在ですが、現在用いられているイソプロピルメチルフェノールやミコナゾール硝酸塩は比較的低刺激で、安心して使うことができる一方、その殺菌効果についてはエタノールや塩化ベンザルコニウムなどに及びません。また、感染症予防の効果について、通常の石鹸で「適切な」手洗いを行った場合と比較してあまり変わらないといったデータもあり、アメリカのようにその根拠に疑問を提示し、販売を制限している国や地域も存在します。

どうして「石鹸」がいいの?エタノールやアセトンとはどこが違うの?

このように、石鹸は肌についた汚れや病原菌をよく落とし、また、製品によっては優れた殺菌作用も期待することができますが、どうして他のアイテムではなく、「石鹸」が選ばれるのでしょうか。エタノールやクレゾール、アセトンの方が殺菌や皮脂を取り除く作用については優れていて、なおかつ直ぐに蒸発するため、一見、使い勝手が良さそうに見えます。また、これらの成分は高濃度の水溶液の状態で販売されていますが、いずれも石鹸よりも大分安価です。

 しかし、これらの成分は「効果が強すぎる」ことがデメリットです。いずれの成分も仕上げの消毒やマニキュア落としなど、特定の用途には向いていますが、日常的に手洗いに使用すると必要な皮脂や身体にとって必要な細菌(常在菌)までも奪い、殺してしまいます。確かに汚れは落ちて「綺麗な」状態には違いないのですが、水分や常在菌が失われた肌はより深刻な乾燥や炎症に悩まされることになります。また、万が一誤飲すると身体への影響も大きいです。

 一方、石鹸は脂肪酸など皮脂に近しい成分で構成されており、「余分な」汚れや「病原菌」を洗い流すだけではなく、洗浄力の弱いものでは皮脂を補う役割も果たします。そのため、日常的に使い続けても乾燥や手荒れの原因となりにくく、安心して使うことができます。また、万が一誤飲してしまった場合でも少量であれば身体への影響は低く、病院に行く必要がある症状が出ることもごく稀です。

 コロナウイルスの流行をきっかけに、「手洗い」に関する様々なアイテムが販売されるようになり、以前と比べるとその種類はかなり豊富になりました。しかし、日常的なケアには多くの場合、「石鹸」こそがベストな選択肢になるでしょう。本格的な冬が始まり、インフルエンザなどにも罹りやすい季節になる前に、貴方ももう一度石鹸を使った手洗いについて復習し、実践してみてはいかがでしょうか。

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