化粧品に「香り」がある理由
化粧品のキャップを開けた時、心地良い香りを感じることはないでしょうか。化粧水に含まれたみずみずしい柑橘系の香り、クリームから漂う格調高いバラの香り、リップクリームの目が覚めるようなミントの香り、張り詰めた毎日の中で、思わず癒しを感じた方も多いのではないでしょうか。
ところで、化粧品にはどうして「香り」があるのでしょうか。それには大きく2つの理由があります。1つは、香りそのものによる効果を期待するためです。良い香りを嗅ぐと、それだけで幸せな気持ちになれます。また、天然精油に関しては香りを嗅ぐことにより、体調の改善や気分を落ち着かせる等の効果を期待できるものがあります。もう1つは化粧品の使用感を良くするためです。化粧品の成分の中には固有の臭いを持つものがあり、それは決して毎日の使用を心地よくしてくれるものばかりではありません。香料を使って化粧品に良い香りを持たせることによって、少し気乗りのしない日でもスキンケアに前向きに取り組むことができるようになります。
化粧品の「香り」の正体
化粧品の良い香りは「香料」を添加することによって生まれます。化粧品向けの香料は大きく分けて2種類あります。1つは、石油のような別なものを原料として作られる、もしくは天然の香り成分を分離することによって作られる「合成香料」です。もう1つは天然に存在する香り成分をそのまま抽出、濃縮して作られる「天然香料」です。天然香料には広義ではムスクやアンバーグリスといった動物性のものも含まれますが、化粧品には植物の香り成分を濃縮した、いわゆる「精油」が使われています。
合成香料と天然香料にはそれぞれメリット、デメリットがあり、用途に応じて使い分けがされています。特定の成分を合成、分離して作られる合成香料は成分的にも安定しており、大量に作ることができるため、化粧品の使用感を良くする目的で多く使用されています。一方で天然の香りそのままである天然香料については、原料の生産が環境にやや左右され、精油の生産も合成原料と比較して手間がかかりますが、匂いに心地良さを感じさせるだけではなく、リラックス効果に伴い、心身に良い作用を及ぼすことが知られているため、使用感の改善のみならず精油自身に役割を持たせる形で、幅広く使われています。
化粧品と天然精油
化粧品の香料に使われる天然精油としては様々なものがありますが、最もポピュラーなものはラベンダーです。紫色の可愛らしい花から作る精油は香りも良く鎮静作用があり安全な為、多くの化粧品に使われています。また、オレンジやシトラス、レモンといった柑橘系の植物から作られる精油は爽やかな香りがあり、胃腸を整える作用もあるため、こちらもよく利用されています。ユーカリから作られる精油には清涼感があるだけではなく抗炎症作用もあるため、香りづけだけではなく肌状態を改善する目的でも使用されます。恋を盛り上げたければ、ホルモンに作用するローズやジャスミンで香りづけされた化粧品を使うと良いかもしれません。また、単独ではやや青臭い匂いのためブレンドして利用されますが、アロエの精油を使った化粧品には肌を修復する効果があります。
色々な化粧品で香料として使われている天然精油ですが、やや慣れた方向けの使い方として、精油そのものを買い求め、無香料もしくは手作りの化粧水に混ぜるといった方法もあります。種類によって肌との相性や保存性の違いもあるため詳しい方への相談をお勧めしますが、精油を数滴加えることによって、好みの香りを持った化粧水を作ることができます。
また、精油をホホバオイルやひまし油、オリーブ油等と混ぜて使う方法もあります。これらの植物油は肌状態の改善に高い効果があり、ボディオイルとしてよく使われます。精油を加えることによって使用感の改善や精油の持つ効果の付加など、多くのメリットがあります。また、化粧水よりも油同士で馴染みやすいため、分離する心配がなく、比較的容易に使うことができるのもメリットです。
化粧品の「香り」と上手に付き合う
近年、無添加の化粧品がブームになっており、香料についても含まれない方が良いとの意見があります。特に一部の海外ブランドの化粧品では現地で強い合成香料の匂いが好まれるが故、体質によっては匂いで体調を崩してしまう方もいらっしゃるかと思います。また、天然精油に関しても、原液を調節せずに使うといった誤った使い方が一時期広まったため、その刺激の強さで肌のトラブルを経験した方もいらっしゃるかもしれません。無香料の化粧品はしばしば他の刺激物、例えばアルコール等も含まない処方であることが多いため、肌の状態や体調が優れない時には第一の選択肢として取り入れても良いでしょう。
しかし、先でも触れましたが、化粧品の持つ香り、香りづけのために使われる天然精油には単に心地よさを上げるだけではない多くのメリットがあります。また、非常に多くの組み合わせがあり、自分でのカスタマイズもできるため、とても奥深いものがあります。日々のスキンケアを少しでも快適で、より効果的にするために、お気に入りの香りを見つけるもの楽しいですよ。
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