髪型キープのための便利なアイテム「ヘアワックス」
貴方は今、髪についてどんな悩みをお持ちですか。もっとボリューム感が欲しい、外出前にセットしても湿気や風で乱れてしまう、ツヤ感がもっと欲しい、お悩みは人それぞれかもしれませんが、おそらく誰もが何らかの悩みを持っていることでしょう。また、髪型についても、パーマをかけようとは思わなくても、ショートヘアやストレートヘアにもう少し躍動感やふんわり感を出したい、と感じる時もあるでしょう。
そんな時に役立つアイテムがヘアワックスです。ヘアワックスを毛先に付けて指やコームで馴染ませて動かすことによって、コームやヘアアイロン、ヘアオイルだけでは表現できない、より自由な髪型をセットすることが可能です。また、製品には様々な種類があり、髪を固めてキープすることを重視したものから、キープ効果よりも髪の毛のツヤ感や濡れ感を出すことを重視したものまで、目的に合ったものを選ぶことができます。
ヘアワックスの主成分「ワックス」「ロウ」
ヘアスタイルの自由度を大きく向上させるヘアワックスですが、どんな成分でできているのでしょうか。ヘアワックスに求められる役割は「付着性が良く、適度に延びること」「髪の毛をまとめたり、動かしたりしやすくし、その状態をキープできること」「髪の毛の見栄えを良くすること」ことです。そのため、鉱物油や高級脂肪酸、界面活性剤など一般的な油性の化粧品に含まれている成分の他に、特有の成分として「ワックス」もしくは「ロウ」が含まれており、独特の質感を生み出しています。
「ワックス」は炭素数20以上の炭化水素や脂肪酸、脂肪酸エステルの総称で、「常温ではローソクのように硬く」、「少し温めると液状になる」ことが特徴です。そのため、容器に入った状態では硬いクリームや泥のようなテクスチャーですが、手に取って塗ると体温で温められて柔らかくなり、髪につけやすくなります。そしてヘアスタイルをアレンジした後にしばらくすると再び硬くなるため、長時間ヘアスタイルをキープすることが可能です。そして、ワックスの種類によって使用後の質感が変わるため、目的に応じて使い分けがされています。
「ツヤ感」重視の成分「ミツロウ」「キャンデリラロウ」
ヘアワックスの最もポピュラーな使い方の1つはソフトタイプの製品を髪の毛につけて毛先をまとめたり、ツヤ感を出したりすることです。この効果はヘアワックスの主成分である「ミツロウ」や「キャンデリラロウ」によって生まれます。ミツロウ、キャンデリラロウはどちらも天然由来の成分で、前者はミツバチの巣、後者はトウダイグサ科の植物キャンデリラの茎から得ることができます。
ミツロウとキャンデリラロウはワックスの中でも比較的柔らかく、皮脂と成分が近い脂肪酸エステルを主成分としていますが、髪の毛につけると光沢感が強く、柔らかい皮膜を形成します。そのため、バラバラになりがちな毛先を程よくまとめ、艶やかに「魅せる」ことができます。両者を比較するとミツロウの方がより柔らかく、保湿効果が高いため髪の毛をケアする目的を兼ねて利用されるのに対し、比較的硬く光沢感の強いキャンデリラロウはより「髪を魅せる」目的で利用されています。
ヘアオイルやトリートメントでも髪をまとめたり、ツヤ感を出したりすることは可能です。しかし、ミツロウやキャンデリラロウはヘアオイルよりも髪につきやすく、適度に固まりやすいため、ヘアスタイルに躍動感を出すことができます。
キープ重視の成分「カルナウバロウ」「マイクロクリスタリンワックス」
ヘアスタイルをより自由にしたい、あるいは1日中崩したくない、といった場合はハードタイプのヘアワックスを使います。ハードタイプのワックスの主成分としては「カルナウバロウ」「マイクロクリスタリンワックス」が挙げられます。前者はキャンデリラロウと同様に植物由来の成分で、ブラジルに生息しているカルナウバヤシの葉から得られますが、後者は石油を分離、精製することによって得られる成分です。
カルナウバロウは化粧品に使われている天然由来のロウの中でも最も硬い部類で、髪の毛につけると皮膜を形成しますが、変形しにくいため持ち上げたようなヘアスタイルでもよくキープします。また、マイクロクリスタリンワックスはカルナウバロウよりも硬く融点も高いことが特徴で、カルナウバロウやキャンデリラロウと混ぜて利用することで、髪の毛を根元から立たせてキープすることが可能です。
キープ力を重視した成分として、かつてはモクロウも多く用いられていました。モクロウはハゼノキから採取される成分で、比較的硬く光沢感にも優れているため、ポマードの原料としてお馴染みでした。しかし、現在ではポマードはあまり使われず、モクロウ自体の生産も減少しているため、目にする機会は減りつつあります。
ワックスは安全な成分なの?使用時に気を付けることは?
求める質感に応じて様々な種類が利用されているワックスですが、基本的には肌や髪に刺激を与えるような成分ではないため、安心して利用することができます。しかし、安定している成分であるが故に、洗髪が不十分だと揮発したり分解したりせず、いつまでも髪に付着し続け、頭皮や髪の毛が油っぽく見えたり、毛穴が詰まったりしてしまう原因となります。
ワックス、特にカルナウバロウやマイクロクリスタリンワックスには十分なキープ力があるため、少量を毛先につけてゆくような使い方が良いでしょう。また、シャンプーをする際には事前にコンディショナーやトリートメント、専用のクレンジング等を使ってワックスを馴染ませることで、より落としやすくなります。頭皮が脂性肌気味であれば、洗浄力の高い石油系シャンプーを使って落としても良いでしょう。
化粧品の世界では「保湿効果」や「抗酸化作用」といった肌に直接関連する効果が着目されることは多いものの、成分の物理的な性質が一般に注目されることは多くありません。そのような中で、ヘアワックスは「固まりやすさ」や「粘性」が製品選びに直結する珍しいジャンルです。ワックスには他にも合成ワックスやコメヌカロウなど幾つかの種類が存在し、それぞれが微妙に異なる性質を持っています。もし興味があればその世界をもう少しだけ覗いてみてはいかがでしょうか。
コメント