コーヒー由来の化粧品成分?
貴方はコーヒーは好きですか。世界で一番飲まれている飲み物は紅茶だそうで、ビールがそれに続きますが、コーヒーもまた世界中の人に愛されています。目を覚ましたい、香りを楽しみたい、コーヒーは単に喉の乾きを潤すだけではなく、私達の生活に欠かせない存在としてすっかり根付いています。コーヒー由来の成分としては眠気覚ましのカフェインが有名ですが、他にもポリフェノールの一種であるクロロゲン酸やカフェイン酸、認知症予防成分として注目されているトリゴネリンなど、私達の暮らしや健康を支えてくれる成分が多く含まれています。
そしてこのコーヒー由来の成分ですが、食品やサプリメントとしてだけではなく、化粧品成分としても利用されていることをご存じでしょうか。ある時はコーヒー豆からまとめて成分を抽出した「コーヒーエキス」として、またある時はカフェインやクロロゲン酸、カフェイン酸などの有効成分だけを抽出してなど、その方法は1つではありませんが、天然由来でスキンケアやポイントメイクにプラスアルファの効果を添える成分として、コーヒーが利用されています。
コーヒーの効果①ポリフェノールによる抗酸化作用
では、コーヒー由来の成分にはどのような効果が期待できるのでしょうか。代表的な効果としては、コーヒーに5〜10%程含まれているクロロゲン酸(実はカフェインよりもコーヒー豆に多く含まれています)やカフェイン酸による活性酸素の有害な働きを抑える作用、すなわち「抗酸化作用」が挙げられます。
活性酸素は細胞間の情報伝達や免疫の維持に重要な役割を担っており、適量であれば人体によって欠かせないものですが、体内で過剰に発生したもの、あるいは紫外線で空気中の酸素分子が励起(高エネルギーになる)することによって発生した活性酸素は「ラジカル反応」と呼ばれる連鎖反応によって身体の組織にダメージを与えます。肌の場合、連鎖反応による刺激はコラーゲンの分解やメラニン色素の生成を引き起こし、シミやくすみ、シワなどの原因となってしまいます。
クロロゲン酸やカフェイン酸は活性酸素のラジカル反応による悪影響を「カテコール骨格」と呼ばれる部分の作用によって防止します。カテコール骨格はポリフェノールに共通の構造として知られており、ベンゼン環のオルト位に2個のヒドロキシル基が結合した構造を持っています。この構造は極めて酸化されやすく、また、酸化を経てより安定的な化合物へと変化する性質を持っているため、紫外線等によって発生した活性酸素は肌よりも先にこれらの成分と反応し、結果として肌へのダメージを防ぐことができます。この作用こそがいわゆる「抗酸化作用」と呼ばれるもので、肌を若々しく保つためにとても嬉しい効果です。
コーヒーの効果②カフェインによる血行促進、肌の引き締め
一方、コーヒーの最も有名な成分であるカフェインも肌にとって嬉しい効果を持ち合わせています。カフェインはクロロゲン酸やカフェイン酸のような抗酸化作用、グリセリンと同様もしくはやや優れた保湿作用なども持っていますが、より特徴的な作用として、皮膚から吸収される際に周囲の毛細血管を拡張させることが挙げられます。そのため、目元周りの化粧品などに配合すると血行不良によるクマやむくみを改善する効果が期待できます。
カフェインの血行促進作用は単独では比較的穏やかなものですが、他の成分との相乗効果によって強化、補完されます。カフェインとの組み合わせでよく用いられる成分としてはナイアシンアミドが挙げられます。ナイアシンアミドはシミ・ソバカスの防止やセラミドの合成促進など多くの作用を持った成分として知られていますが、血行促進作用があることでも知られています。そのため、併用することで目元周りの血色をより良く見せ、かつ乾燥や「老化」による小さなシワを予防、改善する効果を期待できます。
また、カフェインには「皮脂の分泌を抑える」効果も期待できます。カフェインは交感神経に作用することによってノルアドレナリンの分泌を抑えますが、その際に男性ホルモンの持つ皮脂分泌作用も抑制します。また、刺激によって毛穴を引き締める作用もあります。そのため、カフェインが含まれている化粧品を肌につけると皮脂が分泌されにくくなり、肌のベタつきを抑えることができます。
「飲む」だけじゃない、コーヒーとの新しい付き合い方
このように、コーヒーは単に飲み物としてだけではなく、化粧品としても様々な可能性を秘めた存在です。一度に大量に使うと肌への刺激が強かったり、カフェインが皮膚から吸収されて頭痛などを引き起こす原因となってしまったりしますが、適量を他の成分と組み合わせて使うことで、ポリフェノールとカフェインの組み合わせが私達にとって嬉しい効果をもたらします。ポリフェノールとカフェインの組み合わせでは「茶葉」を使ったコスメも有名ですが、コーヒーの香りを楽しみたい、気分を変えてみたい、といったときはコーヒー入りのコスメを試してみると良いでしょう。製品の名前の一部になっていることも多いので、簡単に探すことができます。
朝の目覚ましに、甘いものと一緒に、時にはカクテルの材料として、といったように、コーヒーは単なる嗜好品としてではなく、すっかり私達の文化や生活の一部になっています。もし興味があれば、「目を覚ます」だけではなく、「目を魅せる」ためにもコーヒーを使ってみてはいかがでしょうか。