「秋の匂い」キンモクセイの香り、どんな成分が織りなしているの?

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秋の代表的な香り「キンモクセイ」

 「実りの秋」と呼ばれるように、秋には多くの植物が実を結び、私達に恵みをもたらしてくれます。食卓の彩りも豊かになって、美味しくてついつい食べ過ぎてしまいがちです。しかし、「花」や「香り」については春や夏と比べて少しずつ寂しくなり、冬の訪れが近いことも感じるようになります。そんな中で、秋に花を咲かせる代表的な植物がキンモクセイ(オスマンサス)です。オレンジ色の可愛い花は眺めているだけでも癒やされますが、その甘く上品な香りは私達に幸せを感じさせてくれ、世界三大香木として多くの方に親しまれています。

 そんな「キンモクセイの香り」ですが、徐々に化粧品にも多く取り入れられつつあります。以前は花の香りとはイメージが異なる「芳香剤の匂い」としての印象が強かったのですが、最近ではより「花の香り」を感じさせるものとなりました。最近ではキンモクセイの香りはフレグランス製品だけではなく、ヘアケア製品、スキンケア製品においても秋の香りのスタンダードの1つとして、その地位を確立させつつあります。また、花そのものの香りを楽しむ手段として、キンモクセイの精油をブレンドしたエッセンシャルオイルも見かけるようになりました。

「キンモクセイの香り」、どんな成分によるものなの?

 では、キンモクセイの香りはどのような成分によって生み出されるのでしょうか。キンモクセイの甘い香りは主にモノテルペンと総称される物質によって織りなされており、代表的な成分としてはリナロール、ラクトンC10が挙げられます。リナロールは甘い花の香りを感じさせる成分で、ラベンダーやイランイラン、ベルガモットなどに多く含まれています。また、ラクトンC10は甘い桃を思わせる香りで、桃やベリー、一部の発酵食品などに含まれており、若い女性特有の「爽やかな甘い匂い」の原因としても知られています。

 また、モノテルペン以外の重要な成分としては、セスキテルペンの一種であるβ-イオノンが挙げられます。β-イオノンはスミレの花やラズベリー、ワイン用のブドウ(ピノ・ロワール)などに多く含まれており、甘さの中に爽やかさを感じさせる香りです。オレンジ色の色素であるカロテノイドに由来しており、意外なところではサツマイモを原料とした焼酎にも含まれています。比較的遠くまで飛びやすい性質を持っているため、庭先のキンモクセイの花から漂う香りはリナロールやラクトンC10ではなく、主にβ‐イオノンによるものと言われています。

「キンモクセイの香り」にはどんな効果があるの?

 では、この「キンモクセイの香り」にはどのような効果があるのでしょうか。キンモクセイの甘く優しい香りは私達の気持ちをリラックスさせてくれますが、これは主成分であるリナロールが脳の副交感神経系、特に抗不安回路に直接働きかけ、不安を和らげてくれることによるものです。リナロールは多くの花の香りに含まれていますが、キンモクセイには他にもバラなどに多く含まれており、同様に鎮静作用に優れた香り成分、ゲラニオールも含まれているため、他の香りよりも高いリラックス効果を期待することができます。

 また、キンモクセイの香りに含まれているラクトンC10には女性の加齢に伴う体臭の変化を抑えることに加えて、若々しさを保ち、自信を持たせる効果があることが知られています。また、ラクトンC10は男性にとっても「若い女性の匂い」として本能的に惹かれる香りであるため、よりいっそう女性の魅力を引き立てます。ラクトンC10は他の植物にも含まれていますが、キンモクセイには悪臭のマスキング効果に優れたβ‐イオノンも含まれているため、不快な臭いをより効率的に抑え、良い匂いをはっきり目立たせることができます。

 キンモクセイの香りには他にも様々な成分が含まれています。先に述べたリナロールやラクトンC10の効果の他にも、匂いをかぐことで抗酸化作用によるアンチエイジングや抗炎症作用による風邪予防、胃腸の調子の改善なども期待することができます。

「キンモクセイの香り」の課題と今後

 香りもとても良く、様々な効果を期待できるキンモクセイですが、ラベンダーやシトラスのような香りのスタンダードになる為には課題も存在します。1つは精油が比較的高価で、かつ人工香料での香りの再現が難しいことです。キンモクセイやオスマンサスの精油は一般的なラベンダー等と比較して抽出量が少ないため、製品への配合量が限定されます。また、一般的にはキンモクセイの香りとして、人工的に調合された香料が用いられますが、日々技術が向上しているものの、天然の花や精油の香りと比較するとどうしても「どこか足りない」ように感じてしまうでしょう。

 また、キンモクセイの香りはマスキング効果に優れているが故に、化粧室など、好ましくない臭いが生じやすい場所で利用されてきた歴史があります。匂いは他の感覚と比較してより直接脳に働きかけ、その時見たもの、聞いたものを忘れないようにする性質を持っているため、人によってはキンモクセイの香りをかいで素敵なオレンジ色の花を思い浮かべるのではなく、好ましくない芳香剤、消臭剤の臭いとして感じてしまう方もいらっしゃるようです。

 しかし、そのような課題こそあるものの、キンモクセイの甘く優しい香りは老若男女、古今東西を問わず、多くの人を魅了し続けています。化粧品の分野でも今後、より広く取り入れられてゆくことでしょう。夏の暑さもようやく和らぎ、秋を感じるようになった今、キンモクセイの香りをまとった化粧品を使ってみてはいかがでしょうか。

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