「日焼けを促進?」「日焼け止めの一種?」サンオイルの本当の役割とは?

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日焼けしたい人のためのコスメ「サンオイル」

 貴方は「日焼け」についてどんなイメージを持っていますか。最近ではその身体への影響ばかりがクローズアップされ、とにかく避けるべきものとして取り上げられることが多いのですが、男女を問わず小麦色に日焼けして、程良く引き締まった身体に対して「健康的」なイメージを持っている方も少なくないことでしょう。ドラッグストアには所狭しと日焼け止めが並べられている一方、日焼けサロンも未だに健在で、小麦色の肌を求める男女で賑わっています。

 そんな「日に焼けたい」といったニーズを満たすために販売されている製品が「サンオイル」です。サンオイルはマリンレジャー、あるいは日焼けサロンを利用する際に使うアイテムとして知られており、あらかじめ肌に塗っておくことによって「健康的に日焼けができることを謳っており、一部では「日焼けを促進する」とも言われています。一体、サンオイルにはどんな効果があり、それはどんな成分によるものなのでしょうか。

サンオイルの効果①UV-Bの影響を抑える

 サンオイルの主な効果としては、紫外線による「サンバーン」(日焼けによる炎症)を抑制することが挙げられます。太陽の影響によって地表に降り注ぐ紫外線は「サンタン」(肌がメラニン色素の影響で黒っぽくなる)の原因となるUV-A、サンバーンの原因となるUV-Bの2種類に分類され、一般的な日焼け止めは「紫外線散乱剤」「紫外線吸収剤」と呼ばれる成分によってそのいずれをも抑制します。しかし、「健康的に日焼けする」ことを目的としたサンオイルは前者を残したまま、後者を抑える成分(紫外線吸収剤)のみを使用しています。

 サンオイルの代表的な成分としてはココナッツオイルが挙げられます。ココナッツオイルはその海辺を連想させる匂いから、サンオイルの代名詞ともされていた成分ですが、UV-Bを吸収する作用があることでも知られており、そのSPF値は天然のオイルとしては高めの8前後を示します。(そのため、ごく低刺激の日焼け止めとして使われることもあります)ココナッツオイルの他にはマカダミアオイルやアルガンオイル、シアバターなども4〜5程度の一定の紫外線吸収作用(SPF5前後)を持っているため、利用されることがあります。

 また、比較的サンバーンの抑制効果が強いアイテムについては、SPF50+の強い日焼け止めにも利用され、UV-Bに比較的特化した吸収作用を示すメトキシケイ皮酸エチルヘキシルやエチルヘキシルトリアゾンなどの紫外線吸収剤が含まれていることもあります。その一方、酸化チタンや酸化亜鉛といった紫外線散乱剤はオイルの「白浮き」の原因となり、UV-BだけではなくUV-Aも散乱させてしまう(サンタンも抑制してしまう)ため、サンオイルにはほとんど用いられません。

サンオイルの効果②保湿作用による肌の保護

 UV-Bの影響を防ぐ成分は「肌を紫外線から守る」ために欠かせないものですが、その多くがUV-Aも吸収する作用を持っているため、「小麦色の肌を目指す」上ではデメリットにもなります。そこで、サンオイルの多くは肌が紫外線によって受けたダメージの回復を助ける目的で、保湿効果に優れた油分が利用されています。先に述べたココナッツオイルやマカダミアオイル、シアバターなどはいずれも肌に馴染ませやすく、皮脂のように「肌からの水分蒸発を防ぐ作用」を持っているため、サンオイルを塗ることで肌の水分量を保ち続け、肌のバリア機能やターンオーバーの作用が損なわれないようにすることができます。

 また、一部のサンオイルにはより保湿に特化した成分が使用されています。特徴的なものとしては化粧水などの保湿成分として有名なヒアルロン酸や民間療法では傷薬としても利用されるアロエベラ葉エキスなどが挙げられ、他の植物油との相乗効果で肌の水分量を増やし、かつそれを保ち続けることができます。このような成分は紫外線吸収剤を使わない製品で多く利用されており、肌を適度にいたわり、「肌をより効率よく日焼けさせる」目的で利用されています。

サンオイルは肌に悪いって本当?効果的な使い方は?

このように「UV-Bを抑制する」「保湿作用によって肌を保護する」ことで健康的な日焼けを促すサンオイルですが、「日焼け止め」とは根本的に異なる製品であることには注意が必要です。一般的なレジャー向けの日焼け止めのSPF値は50、もしくは50+の製品が大半であるのに対して、サンオイルのSPF値は1〜4程度のアイテムが多く、UV-Bを抑制する効果は1/10以下です。また、サンオイルは海水浴など普段日焼け止めを塗って過ごしている時と比べても、「紫外線を多く浴びる」「肌の露出が多い」環境で使うことが多くなります。

 「サンオイルを使ったら肌が赤くなった」「水ぶくれができた」という話をしばしば耳にしますが、これはサンオイル自体に原因があるのではなく、そのほとんどが「紫外線を浴び過ぎた」ことが原因です。日焼けで炎症を起こしたことがあまりない、という方は問題ないかもしれませんが、普段あまり日焼けしない生活を送っている方はサンオイルを使わず、SPF値の高い日焼け止めを使った方がレジャーを楽しめるでしょう。また、若干日焼けしたい場合はSPF値の低い(20〜30程度)日焼け止めを使う、といった方法もあります。

 正直なところ、UV-Aによる日焼けもシミやシワの原因になってしまうため、肌の健康だけを考えるのであればサンオイルよりも日焼け止めを使う方が良いでしょう。しかし、太陽の紫外線にはビタミンdや「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンの合成促進など良い効果もあることが判っており、また、日に焼けた肌は男女を問わず健康的に見えるのも事実です。

 もしサンオイルを使うのであれば、ある程度日焼けした肌に使うことをお勧めします。日焼けによって合成されるメラニン色素には紫外線によるダメージから肌を守る効果があり、サンバーンをよく防ぎます。日焼けした肌にサンオイルを塗ることによってその作用を補い、より安全に日光浴を楽しんだり、いわゆる「小麦色の肌」を手に入れたりすることができます。

 かつては一世を風靡したサンオイルですが、「日焼け」に関する意識の変化もあり、最近は見かける機会が少なくなりました。しかし、もし貴方が「健康的に日焼けしたい」と考えているのであれば、一度手に取って試してみてはいかがでしょうか。きっと貴方の夏が、いつもとは少し違ったものになることでしょう。

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