2023年のメイクのトレンド「黄色」
2020年のコロナウイルス感染拡大は「メイク」の世界にとって大きなショックでした。日々の生活にマスクが欠かせなくなった結果、口紅やチークといった「口周りを彩る」アイテムの必要性がなくなり、化粧品の売れ筋も大きく変わりました。しかし、2023年になって人々がマスクを外し始めている中で、メイクのトレンドも徐々に元の姿を取り戻しつつあります。街中の化粧品売り場でも、以前のように色とりどりのメイクアップ製品が並んでいる姿を目にするようになりました。
色とりどりの製品が並ぶ中で、自分に合うものを選ぶのは意外に大変です。そこで、自分の好みだけではなく、トレンドも取り入れてみたい、と思う方も多いでしょう。2023年のファッションやメイクのトレンドの1つは「黄色」です。今年になってようやくマスクを外して人と会ったり、大きなイベントに参加したりできるようになったこと、また、他にも様々な不安要素がある中で、今よりも未来がより明るいものになって欲しい、といった想いから、「黄色」がとても注目されています。
「黄色」はアイシャドウやチークなど、ポイントメイクを中心に取り入れられています。ファンデーションや赤、青の製品と比較するとどこかくすんだようにも見え、使いにくさを感じるかもしれませんが、黄色のメイクを上手く取り入れることによって、より明るい印象を生み出すことができます。
「メイクの黄色」はどんな成分なの?①タール色素
では、この「黄色のメイク」にはどんな成分が使われているのでしょうか。メイクを彩る成分は総称して「顔料」と呼ばれますが、黄色の顔料として、主に「タール色素」と呼ばれるものが使われています。タール色素は「赤色〇〇号」「青色〇〇号」に代表される石油由来の色素ですが、化粧品に利用可能な黄色の色素としては「黄色4号」「黄色5号」「黄色203号」などが挙げられます。かつては石炭を乾留した際の副生成物であるコールタールから合成されていたことから「タール色素」と呼ばれていましたが、今日では石油から分離されるナフサから合成されています。
タール色素の特長として、「発色の鮮やかさ」「成分の安定性」が挙げられます。メイクアップ製品、特にアイシャドウやチークではごく自然で控えめな色味よりはむしろはっきり鮮やかなものが求められ、特に肌の色に近い黄色ではその傾向が顕著です。また、多少の汗や摩擦で落ちないような密着性、紫外線などで分解されない安定性も必要です。タール色素は天然由来の色素と比較してこのような点で優れているため、「黄色」の顔料として多くの製品に利用されています。また、タール色素は化粧品以外にも食品向けとして長い歴史があり、十分に安心して使うことができます。
「メイクの黄色」はどんな成分なの?②鉱物、植物由来の原料
黄色の顔料として広く利用されているタール色素ですが、肌の状態によっては密着性が高い故の「重さ」や、若干の刺激を感じる方もいらっしゃいます。そのため、一部のナチュラルコスメや敏感肌向けの製品では他の成分が使われているケースもあります。最も一般的なものは鉱物の一種である黄色酸化鉄です。黄色酸化鉄は化学式FeO(OH)、Fe2(OH)6で表される物質で、黒色酸化鉄、赤色酸化鉄と共に化粧品に広く利用されています。黄色の発色がやや穏やかなため、ポイントメイクよりは自然な色味が求められるファンデーション向きですが、タール色素より「軽い」使用感が期待できます。
また、植物由来の成分としては、食品添加物としてお馴染みのクチナシ黄が用いられることもあります。クチナシはアカネ科の植物ですが、果実を抽出、分離することによって数種類の色素が得られます。その中でクロシンやクロセチンを主成分とした成分がクチナシ黄で、使用することで比較的鮮やかな黄色を出すことが可能です。植物由来の黄色成分としては他にウコン根茎エキスやベニバナ黄色素などが挙げられますが、タール色素や酸化鉄等と色味が異なるため、メイクアップ製品よりはむしろ他のジャンルの製品を着色する目的で用いられます。
「黄色のメイク」、どうやって取り入れればいいの?
このような顔料によって生まれる「黄色」ですが、日々のメイクにどのように取り入れれば良いのでしょうか。黄色は上手く使えばとても映えますが、いわゆる「イエローベース」と呼ばれる肌の方であっても、控えめに使うとあまり目立たなかったり、使い過ぎると肌色から少し浮いてしまったりと、少し悩ましい存在です。
オーソドックスに魅せたいのであれば、黄色のアイライナーやアイシャドウを使って目元周りを明るくしてみたり、黄色のチーク赤色や茶色と混ぜて色味を変えたりすると良いでしょう。また、少し応用編になりますが、赤を基調にした口紅に黄色のリップグロスを重ねることで、いつもより明るい印象を出すことができます。色素の成分に関しては、しっかりと色味を出したいのであればタール色素主体のもの、控えめに試してみたい、ということであれば酸化鉄やクチナシ黄などが主体の製品が合うかもしれません。
今年の夏は久し振りの旅行やイベントを思い切り楽しむ、という方も多いでしょう。楽しくなりそうな日々をさらに明るく過ごすために、貴方のメイクに黄色を取り入れてみませんか。
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