禁止成分で市場回収?一体何が起こったの?

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化粧品が市場回収、何がいけなかったの?

 私達の身の回りに溢れているものの中で、化粧品ほど日々新しいものが登場するジャンルも珍しいのではないでしょうか。変わらない味をいつまでも、次買う時もやっぱりこれがいい、新製品よりもむしろ変わらなさが求められるものが多い食品や日用品と比較して(実際にはパッケージ等、目に見えない改良が日々施されています)、化粧品は毎年のように新製品が企画され、世の中に送り出されています。その華やかなパッケージも相まって、デパートやドラッグストアだけではなく、世相を映す鏡として、博物館や美術館にまで展示されることがあります。

 しかし、毎年数多く送り出される製品の中には「販売されてはいけなかったもの」として回収されてしまうものがあります。企業のホームページや広告等のメディアを通して自主回収の案内が出され、いつの間にかショーケースからも引き上げられ、通販でも買えなくなってしまいます。髪の毛が混ざっていたり、カビが生えたり、といった場合の回収は何となく理解できますが、「禁止成分が含まれていた」と聞くと、思わず身構えてしまいます。一体、何が起こったのでしょうか。

市場回収ってどんな時に行われるの?

そもそも、化粧品の市場回収とはどんな時に行われるのでしょうか。市場回収は主に品質上の懸念が発生した場合、例えばカビや異物、違う種類の中身が混入する、(もしくはそれが疑われる)といった状況で行われます。化粧品の生産には細心の注意が払われていますが、何らかの理由で発生してしまうことがあります。また、化粧品の箱や本体には必ず含まれている成分を記載しなければいけませんが、このラベルを貼り間違えた場合も(中身に含まれている成分と実際の成分が異なるため)対象となります。

 しかし、中には使用している成分自体に問題があるケースがあります。化粧品及びそれに使用される原料には有害な成分の配合を制限するための規制が設けられていますが、その基準が国によって異なるため、化粧品を海外から生産して輸入した場合、日本では使用が禁止されている成分が検出されることがあります。日本国内での販売前には十分な検査や確認がされますが、特にその確認が不十分、あるいは途中で使用されている原料が変更されることにより、意図しない成分が配合されてしまうことがあります。

市場回収の対象となった成分①メタノール

 市場回収の対象となった成分で代表的なものとしてはメタノールが挙げられます。メタノールは化学式CH3Oで表されるアルコールの一種で、最も有名なアルコールであるエタノールよりも結合している炭素が1分子あたり1つだけ少ないもので、性質はエタノールによく似ています。工業的にエタノールを合成した場合、方法によっては一定量のメタノールが一緒に合成されます。また、エタノールを「飲めなくするため」の変性剤として、意図的に加えられることもあります。

 メタノールは肌に対する刺激性がエタノールよりも高く、また、視神経などに毒性も認められているため、日本では「化粧品から検出されてはいけない成分」として規制されています。しかし、海外では日本程規制が厳しくないために、コスト削減などの目的でメタノールを「完全に取り除いていない」原料が使用されることがあります。検出された量は微量であり、多くの人にとって健康に影響がある量ではありませんでしたが、「化粧品が合わない」「肌の調子が悪い」と感じた方もいらっしゃったことでしょう。

市場回収の対象となった成分②ホルムアルデヒド

メタノールと同様に、あるいはそれ以上に問題となった成分はホルムアルデヒドです。ホルムアルデヒドはホルマリンとも呼ばれる成分で、化学式CH2Oで表される最も構造が単純なアルデヒドです。防腐剤として有名な成分で、木造住宅等の耐久性を上げる目的で、あるいは他の様々な成分を合成するための原料としても長く用いられてきました。また、日本国内では化粧品への配合が禁止されているものの、海外では一定量を防腐剤として使うことが認められています。

 ホルムアルデヒドもメタノールと同様に肌への刺激性が比較的強く、また、いわゆる「シックハウス症候群」の原因となることや発がん性物質であることが知られており、化粧品への使用は望ましくない成分です。しかし、海外で生産されたものについては直接顔などに触れないネイル製品を中心に一部で使用されており、肌への刺激や臭いなどの苦情で初めて検査が行われて検出、回収の流れに至る、といったケースが年に数件程度確認されています。先に述べた「シックハウス症候群」はホルムアルデヒドに触れたり匂いを嗅いだりすることによって引き起こされるため、注意が必要です。

お気に入りの商品が市場回収に?そんな時どうしたらいいの?

 では、お気に入りの商品が「市場回収」になってしまった場合、どうすれば良いのでしょうか。多くの場合、市場回収は「念のため」行うものであり、問題のある成分が検出されたとしても過剰に心配し、慌てて皮膚科を受診する必要はありません。(ただ、使いかけのものに関しては使わない方が良いでしょう)

しかし、どうして回収指示が出たのかについては詳しく知っておいた方が良いでしょう。かつてのロドデノールのように、肌の不調が実は化粧品が原因だった、といった可能性も考えられます。また、医薬品であるステロイドが故意に配合されて検出されたといった悪質なケースも過去には発生しています。極めて稀なケースではありますが、もしそうであった場合はブランド自体の使用を控えた方が良いでしょう。

より安全な化粧品、どうやって選ぶの?

  では、より安全な化粧品を選ぶためには何を心掛ければ良いのでしょうか。様々な製品がある中で、安全なものを選ぶのは難しいのですが、分かりやすい対策の1つとして、なるべく「化粧品」として認可、販売されているものを選ぶ、といったことが挙げられます。ネイル関連の製品等では顕著ですが、化粧品と紛らわしい「雑貨」が販売されていることがあります。「化粧品」の配合成分については肌への悪影響を防ぐための検査が行われますが、「雑貨」にはそのような基準がありません。なるべく「化粧品」として販売されているものを使用し、「雑貨」を使用する際にはいつも以上に肌の状態に注意した方が良いでしょう。

 また、化粧品の海外での購入、個人輸入は定番のものに留めた方が良いでしょう。近年、多くの国で規制が整備されたため、以前は不安があった中国などの化粧品も比較的安心して使えるようになりましたが、現地の製品には日本では使用が禁止されている成分が含まれていることがあり、肌のトラブルの原因となることがあります。

 毎日肌に直接塗るものであるからこそ、化粧品は少しでも安心、安全なものを使いたい、誰もがそう思っているかと思います。その期待に応えるべく、生産者は色々な制約の中で日々企画や開発、生産に勤しんでいます。高価で奇抜な効果を謳ったものもありますが、身近で買える安心、安全な製品と長く付き合っていくことが、貴方の毎日の美しさの源となるでしょう。

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