便利なオールインワンコスメ
何かと忙しい朝の時間、毎日のスキンケアが大事だとは分かっていても、その為の時間をもっと私のために、家族のためにもう少しでも使いたい、そう思うのは自然かもしれません。本や雑誌やYoutubeで独学で、あるいは美容部員やサロンの方から教わって、少し手間をかければすぐにキレイになれるメイクと違って、スキンケアは毎日の地道な積み重ねなので尚更そう感じると思います。
そんな皆様の期待に応えるべく開発されたものが「オールインワンコスメ」です。オールインワンコスメは化粧水と乳液、美容液の機能を合わせ持っているため、忙しい朝に、荷物を減らしたい旅先で、1本でスキンケアを仕上げることができるアイテムとして提案されています。
オールインワンコスメはしばしば「オールインワン化粧水」や「オールインワンジェル」と呼ばれることがありますが、化粧水の役割である肌への水分、あるいはグリセリンやヒアルロン酸、セラミド等といった保湿成分を補給するための成分に加え、アンチエイジングや美白といった美容液に多く含まれている成分、肌に補給した水分を逃がさないための乳液やクリームに含まれている成分等、多くのスキンケアに必要な成分が含まれています。また、テクスチャとしてはジェルや乳液等、とろみやべたつきを強く感じるものが多いのが特徴です。
オールインワンコスメ、本当にそれだけで大丈夫?
「1本で多機能」を売りにしたオールインワンコスメですが、本当に効果が期待できるものなのでしょうか。口コミサイトやまとめサイトでは意見が分かれており、肯定的なものとしては「時短効果」や「これで十分」といったものが多く、否定的なものとしては「とろみの強いテクスチャが合わない」ことや「効果をあまり実感できない」といったものが多いです。コンシーラーやポアカバー、サンスクリーンのように目的とそれに対する効果がはっきりしていないため、口コミだけを見て、買うべきかどうか判断するのは難しいかもしれません。
基本的にオールインワンコスメは時短効果やスキンケアの入門を主な目的としているため、単品を上手く組み合わせた場合に比べるとやや効果は控えめになります。また、スキンケア化粧品全般が元々、数ヶ月以上使い続けた場合の肌質改善を目的としているため、極端に普段使いのものが合っていなかったというケースを除いて、期待して高価なものを購入しても、即効性を感じにくい傾向があります。
また、オールインワンコスメには成分上の制約も存在します。小学校、中学校の頃の理科の実験で水と油をビーカーに入れ、その2つが決して混ざり合わないのを見た記憶があるかもしれませんが、オールインワンコスメは補給のための水分とその蒸発を抑えるための油分(もしくはそれに代わるもの)を同時に、無理にでも混ぜ合わせて配合しなければなりません。したがって、その無理を実現するためにはゼリー状のポリマーで固める、もしくは界面活性剤を多く使用する必要があります。ポリマー、界面活性剤共に肌に悪い成分ではないのですが、オールインワンコスメ特有のとろみやべたつきといった使用感の原因となります。
オールインワンコスメと化粧水、保湿の観点からみた比較
では、スキンケアにとって最も大切な保湿を目的として考えた場合、オールインワンコスメと化粧水にはどの程度、成分や機能の違いがあるのでしょうか。
化粧水は基本的には水が主成分となっており、その他に水分の蒸発を抑えるグリセリン、皮膚の消毒や収斂の作用があり、かつ水に溶けにくい物質を溶かす目的としても使われるアルコール、ヒアルロン酸やセラミド等、肌の保湿作用を補う成分等で構成されています。肌に新鮮な水分を供給し、それを逃がしにくくする目的に特化しており、化粧水の使用後は油性の乳液やクリームを使用して仕上げを行い、肌表面からの水分蒸発を防ぎます。
一方でオールインワンコスメでは水とカルボキシビニルポリマーが主成分であり、ポリマーに肌の保湿作用を補う成分やその他の美容成分を混ぜ込んでいます。ポリマーは水も油も溶かしこむことができる優れた成分ですが、それ自体はどちらかといえば水よりは油に近い性質を持っており、化粧水のように皮膚の内部への浸透を助ける作用よりはむしろ、乳液やクリームのように皮膚からの水分蒸発を防ぐ作用の方が強いものとなります。
したがって、肌への水分補給や保湿成分の補給の観点から考えた場合、化粧水と比較すると肌への浸透力にやや劣り、成分が必要な場所まで届きにくくなってしまいます。また、有効成分の配合量や組み合わせについても目的を特化させた化粧水には及びません。通常に使用する分には問題がないのですが、よりスキンケアを重視する場合、乾燥肌に悩んでいる場合については機能を補うための工夫が必要になります。
オールイワンコスメと化粧水、合わせて使って効果up !
現状では化粧水の単体使いに及ばないオールインワンコスメの水分補給や保湿の効果ですが、効果を補う良い方法があります。どちらか片方を使うのではなく、両者を併用することです。「1本でスキンケアを済ますことができる」といった開発の目的からすると少し違和感がありますが、化粧水をまず肌に塗り、その後にオールインワンコスメを使用することで、様々なメリットを受けることができます。
化粧水を「オールインワンコスメの弱点を補う」といった視点で考えた場合、化粧水は肌への水分や保湿成分の補給をより効率的に行ってくれます。化粧水のアルコールは肌に清涼感を与え、オールインワンコスメ独特のべたつき感を軽減します。また、美白やアンチエイジング等の成分を補いたいと思った場合、好みの化粧水と組み合わせて使うことができます。
一方で「化粧水の成分を逃がさないためにオールインインワンコスメを使う」といった視点もあり、この場合、オールインワンコスメを乳液やクリームの代わりに使用します。乳液やクリームの方が肌の水分を逃がさない作用は高いのですが、オールインワンコスメは一般的に油分が少なく(カルボキシビニルポリマーが油分の代わりに働きます)、処方の特性上アルコールや界面活性剤フリーの製品も多いため、敏感肌の傾向を気にしている人にとっては良い選択肢となるでしょう。
日々様々な化粧品が開発されて販売されていますが、同じような効果をうたっていても役割が異なり、その役割や成分について学び、組み合わせて使ってゆくことにより、単体使いでは得られなかった効果を得ることができます。「時短」も大事なテーマですが、化粧品の相性の良い組み合わせを考えて使ってみることも良いかもしれません。
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