制汗剤の「男性向け」「女性向け」?
最近の日本の夏、あまりにも長過ぎると感じませんか。もうすぐ10月になろうとしているのに、暑さは収まる気配を見せず、「猛暑日」や「熱帯夜」といったニュースを毎日のように目にします。ちょっと外に出るだけで大量の汗をかいてしまうので、こまめな水分補給や汗を拭くためのハンカチ、タオルは欠かせません。
そんな暑さによる苦痛を少しでも和らげてくれるアイテムが「制汗剤」です。スプレーやクリーム、ローションなどを脇や背中などにつけるだけで、汗の量を抑えたり、汗による不快な臭いを抑えることができたりします。また、制汗剤の中にはひんやりとした心地よさを感じるものや、フローラルな香りを楽しめるものなど、プラスアルファの嬉しい効果を期待できます。
また、制汗剤は化粧品にしては珍しく、「男性用」が充実していることも特徴です。パステルカラーや花柄のアイテムが多い「女性用」のアイテムとは異なり、黒や銀などの落ち着いた色が多い男性向けのアイテムは、男性でも躊躇わずに手に取ることができ、使っている方も多いことでしょう。ところで、制汗剤の男性用と女性用の違い、貴方はご存知でしょうか。
制汗剤の主成分は男女共通
制汗剤には「汗の量を減らす」「汗による臭いを抑える」成分が含まれています。前者の代表的なものとしてはクロロヒドロキシアルミニウムやミョウバンが挙げられ、肌につけると皮脂に含まれるタンパク質と反応して凝固したり、アルミニウムの水酸化物の皮膜を作ったりすることによって汗の出口を閉塞し、汗の量を抑える効果を発揮します。また、化粧品ではなく医薬品の話になりますが、塩化アルミニウムはより強い効果を発揮します。
また、後者の成分としてはイソプロピルメチルフェノールや銀イオンが挙げられます。これらの成分は汗を抑える効果こそ持ち合わせていませんが、強力な殺菌作用を持っており、肌につけると汗を分解して臭いを発生させる原因となる雑菌を減らし、汗による不快な臭いの発生を抑えます。この効果は汗をかく生理的な作用自体は抑えないため、手軽に使えて副作用の少ない制汗剤にはこちらのみが配合されていることがあります。
これらの成分については基本的に男性向け、女性向けで大きな差はありません。より汗をかきやすい男性向けの方がやや成分の配合量が多い傾向にありますが、基本的には男性が女性用を使っても、その逆でも問題なく使うことができます。
「ひんやり」重視の「男性向け」
基本的には同じ「男性用」と「女性用」の制汗剤ですが、製品としての「味付け」の部分が異なります。男性用の制汗剤は肌につけると「ひんやり」とするアイテムが多いのが特徴で、その大半にメントールが使用されています。メントールは肌の温度を感じるセンサーであるTRPチャネルと呼ばれる部分に作用し、「体感温度」を大きく下げる効果があります。そのため、メントールが入った制汗剤を使うことによって、暑さによる不快感を和らげることができます。
メントールによる効果は男女共通ですが、「ひんやり感」は男性により好まれます。男性の皮脂量は女性よりも多いため、よりベタつきによる不快感が強くなり、また、屋外で活動する機会も男性の方が多くなります。また、メントールの刺激感は好みが分かれ、人によっては「痛い」と感じることもありますが、女性よりも皮膚が厚い男性は痛みを感じにくいため、より安心して使うことができます。
そして、メントール特有の清涼感の強い匂いは男性向け制汗剤の「香り」のスタンダードにもなっています。男性向け香水の匂いには様々なものがありますが、制汗剤はメントールの香り(ミント)そのもの、あるいは柑橘系成分と組み合わせたフレッシュな香りのものが大半です。
「匂い」重視の「女性向け」
男性向け制汗剤の大半が「ひんやり」「爽快」を志向しているのに対して、女性向けの制汗剤はより「香りを楽しむ」アイテムが多いことが特徴です。ポピュラーな香りは石鹸やフローラル、柑橘系などで、以前は汗による臭いのマスキングを重視した、香りが強いものが中心でしたが、最近ではイソプロピルメチルフェノールや銀イオンで十分に臭いを抑えた上で、香水のような甘く優しい香りをまとうことができるアイテムが増えています。また、制汗剤の中には若い女性の「いい匂い」の正体である香り成分、ラクトンC10やラクトンC11を配合し、加齢による体臭の変化を抑えるような製品もあります。
一方、女性向けの製品は汗の臭いを抑えることに特化した、無香料のものも多くあります。かつては無香料のアイテムはマスキング効果が低くあまり好まれませんでしたが、最近ではより強い消臭効果を発揮するものもあります。また、無香料のものは仕事上の制限がある方や「メントールが苦手だけども、甘い香りは身にまといたくない」男性の方など、より幅広い層にとって利用しやすいアイテムといえるでしょう。
どちらを使ってもOK、でも「女性向け」がより便利!
このように、制汗剤の「男性向け」「女性向け」は根本的な成分の違いではなく、男性や女性の好みに合わせた香りや使い心地のアレンジ、といった要素が強いものです。そのため、男性が女性向け、女性が男性向けを選んでも問題はなく、特にメントールのひんやり感が苦手な男性の方は「女性向け」のものを積極的に選ぶと良いでしょう。ラクトンC10などの身体由来の甘い香りを纏っていない男性と、フローラル系の香りの相性はあまり良くないのですが、無香性、もしくは爽やかな香りのものは男性でも違和感なく使うことができ、スプレータイプのものであれば、家族や恋人の間でシェアしても良いでしょう。
最近では男性向けの化粧品売場も充実し、制汗剤だけでも色々な種類を手に入れることができるようになりました。しかし、毎日使っているようなアイテムであっても、中々「男性向け」「女性向け」の売場を跨いで探す、という方は多くないかもしれません。特に男性の方は抵抗があるかもしれませんが、もし今使っているものに満足できない、と感じているようでしたら、時にはいつも行っていない方の売場に足を運んでみるのも良いかもしれません。