肌や髪にとっても悩ましい「摩擦」という存在
貴方は「摩擦」という言葉を普段、どれくらい使いますか。技術系の仕事をされている方であれば日々見聞きするかもしれませんが、おそらく多くの方にとっては時折ニュースで聞く位で、あまり馴染みはないのではないでしょうか。科学的な意味での摩擦とは2つの物体が擦れ合うこと、もしくはその際に発生する「動きとは逆方向に働く力」のことを指します。「摩擦」は擦れ合う2つの物質の表面が滑らかではない程多く発生し、この際、運動エネルギー(モノを動かそうとする力)の一部が失われ、熱エネルギー(モノを温める力)に変換されます。また、いずれかの表面が柔らかい場合、摩擦によってどちらかの表面が削り取られることがあります。
この「摩擦」ですが、実は化粧品においても大変重要なテーマの1つです。髪の毛を例に挙げると、ダメージを受けておらず、表面のキューティクルが剥がれていない状態ではブラシや手で髪の毛を撫でても引っかかるような感触がなく、サラサラと感じられます。一方、栄養不足や外的刺激、紫外線などでダメージを受けた髪はキューティクルが剥がれ、表面が凸凹になっているため、ブラシで触れると引っ掛かり、手で触れると「パサパサ」としています。この状態は不快なだけではなく、髪の毛とブラシや手の間に発生する摩擦によってさらに髪の毛にダメージを与えてしまうため、サラサラな状態を取り戻すためには表面を滑らかにするための手入れが必要です。
摩擦を減らす方法①表面を滑らかにする
表面を滑らかにして摩擦を減らす方法の1つは、凹凸になった髪や肌の表面をコーティングすることで、代表的な成分としてはシリコーンオイルの一種であるジメチコンが挙げられます。ジメチコンはヘアケア製品の成分としてお馴染みですが、髪につけると表面で薄い被膜を形成し、その過程で剥がれて凸凹になったキューティクルを滑らかにします。この被膜は光沢性に優れており、水とも油とも馴染みにくいため、髪にツヤを出すことができ、また、外的刺激から保護する作用を発揮します。また、この被膜は髪だけではなく、肌の上にも形成されるため、メイクを長持ちさせるスプレーなどにも応用されています。
また、「保湿」も肌の表面を滑らかにする上では欠かせない作業です。肌の水分が不足した場合、体はそれを補うために肌表面の角質層を厚くし、水分不足を補おうとしますが、厚くなった角質層は硬く形も不揃いで、引っ掛かりやすい性質を持っています。失われた水分を化粧水などで補い、クリーム等で閉じ込めることで肌に水分を留めることにより、角質層の厚さを程よく保つことができます。また、水分には角質層を軟化させ、引っ掛かりを減らす作用もあるため、手入れ後すぐに効果を実感することができます。
摩擦を減らす方法②「潤滑剤」を使う
一方、メイクや日焼け止めなど「肌につける」製品では、肌の上で「こする」「伸ばす」ことによって発生する摩擦を減らすための潤滑剤が使用されています。代表的な成分としてはファンデーションや日焼け止めに使用されている「タルク」が挙げられ、原料名の「滑石」の名前の通り無機鉱物由来の成分としてはとても表面が滑らかで、柔らかい性質を持っています。そのため、タルクを化粧品に使用することにより、化粧品のつけ心地を大きく向上させ、また、使い続けることによる刺激から肌を守ることができます。
また、シェービングフォームやシェービングクリームは高級脂肪酸石鹸を主成分としていますが、肌につけて水に濡らすと水分を包み込むように、表面が滑らかな被膜を形成します。そのため、剃刀やシェーバーを使用した際の引っ掛かりが大きく軽減され、肌を刺激から守ることができます。同じような目的で使用するシェービングローションだけは成分がやや異なり、水にポリエチレングリコールやカラギーナンなどを加えて適度な粘り気を出したものが利用されており、肌につけることで潤滑油のように剃刀の滑りを良くする効果があります。
「クレンジングオイル」も摩擦を減らす上で重要な役割を果たしています。油性のメイクは基本的に水で落とすことができず、ウェットシートや洗顔石鹸などで無理してこすり落とそうとすると摩擦で肌を傷つけてしまいます。ミネラルオイルや界面活性剤が含まれたクレンジングオイルを肌につけるとメイクの油分が浮き上がり、優しく洗い流したり拭き取ったりするだけで落とせる状態になるため、毎日のメイク落としによる肌へのダメージを減らすことができます。
摩擦を減らしてより良い毎日を!
このように、毎日使う化粧品には肌との摩擦を減らすための工夫が多く凝らされ、様々な成分が利用されています。かつてはあえて摩擦を増やすような成分を加えることで洗浄力を高めた洗顔石鹸(スクラブ製品)などもありましたが、最近ではそのような製品でさえもトレンドが変化し、「擦る」よりも肌に優しい「吸着させる」ことを目的とした活性炭やクレー、コーンスターチなどの成分が多く利用されるようになっています。また、化粧品だけではなく、ヘアブラシをはじめとした美容アイテムも摩擦を減らすコーティングが施されたものが多く販売されており、使うことで髪や肌を労ることができます。
肌や髪にダメージを与える原因は様々ですが、その1つである「摩擦」については色々な対策が進められ、適切なアイテムを選んで使うことで、その影響を抑えることができるようになりつつあります。より美しい肌や髪を保ち続けるために、貴方も一度日頃のケアを見直してみてはいかがでしょうか。