「油」と「脂」と「ワックス」、何が違うの?どうやって使い分けているの?

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色々ある化粧品の「油」

 一部の例外もありますが、私達が毎日使っている化粧品には何らかの「油分」が使われています。油分は時に悩ましい存在になることもありますが、私達や髪を守ったり、ツヤを出したりする目的で、あるいはメイクを肌に馴染ませるために必要不可欠な存在で、より肌や髪に優しく、馴染みやすい油分を探すための研究が今でも続けられています。油分は石油やパーム油だけではなく、様々な動物や植物から得られたものが利用されていますが、「これさえつけていれば大丈夫」といったものはまだ見つかっていません。

 ところで、この化粧品に使われている「油分」ですが、「油」「脂」「ワックス」など、時と場合によって異なる表記がされていることがあります。「脂」「脂」「ワックス」はいずれもよく知られた言葉で、いずれも油分を指していることは感覚としてご存知かもしれませんが、その違いは少し分かり辛いようにも思われます。一体、これらの油分にはどんな違いがあり、化粧品にどのように使い分けされているのでしょうか。

「油」と「脂」の違いは?

 ナチュラルコスメがお好きな方であれば、オリーブ果実油、ローズヒップ油といった「油」、カカオ脂やシア脂といった「脂」はどちらもお馴染みの成分だと思いますが、両者はいずれも「高級脂肪酸」を主成分としています。高級脂肪酸とは1分子あたりの炭素数が12個以上の脂肪酸のことを指し、皮脂もこれらの一種であるオレイン酸やステアリン酸、及びそれらのグリセリンエステルを主成分としています。そのため、「油」「脂」共に肌との馴染みが良く、シンプルな化粧水を除いたほぼ全ての化粧品に用いられています。

 しかし、「油」と「脂」の質感は大きく異なります。「油」は一般的に常温では液体で、リキッド系の製品や柔らかいクリーム等を中心に用いられていますが、「脂」は「カカオバター」「シアバター」の別名が示すように、常温ではバターのような固体で、肌につけたり温めたりすることで初めて溶けて液体になるため、やや固めのクリームや口紅などを中心に好んで用いられます。

 この違いは主に「油」と「脂」に含まれている脂肪酸の種類に起因します。「油」は一般的にオレイン酸やリノール酸、リノレン酸といった不飽和脂肪酸を多く含んでいるのに対して、「脂」はパルミチン酸やオレイン酸といった飽和脂肪酸を多く含んでいます。飽和脂肪酸は不飽和脂肪酸と比較して分子が大きくなりやすく、分子同士がより強く引き合うため、液体にするためにはより高いエネルギー(温度)が必要になります。スキンケア製品に好んで用いられる「脂」はシアバターなどの人肌で溶ける種類のもので、牛脂やラードなど人肌よりも融点が高い「脂」は主に石鹸などの原料として用いられます。

「油」「脂」とワックスの違いは?

 このように、化粧品に使われる「油」「脂」が高級脂肪酸を主成分としている一方で、ワックスは炭素数20以上の高級脂肪酸と高級アルコール(炭素数6以上のアルコール)のエステル、もしくは炭素数20以上の炭化水素(メタンやプロパンと同様に、炭素原子、水素原子のみで構成される成分)を主成分としています。「ミツロウ」や「カルナウバロウ」のように、「ロウ」と呼ばれることもあり、こちらの方が馴染み深い方もいらっしゃるでしょう。

 ワックスもしくはロウの最大の特徴は油脂と比較して融点や弾力性が高いことです。常温のカカオ脂や牛脂は固体であっても比較的柔らかく、人肌やぬるま湯で温めるとサラサラとした液体になりますが、ワックスやロウの融点は比較的低いパラフィンワックスでも40℃以上、木蝋やミツロウといった天然由来のものでは50℃以上であるため、肌や髪につけても固体のままです。そのため、ワックスを肌につけても油脂のような心地良い感触にはならず、その粘性の高さからやや重くベタつくように感じられます。

 ワックスのこのような特徴は肌につけて皮脂を補うためには向いていませんが、製品の形を整えたり、髪のスタイリングを行ったりする目的には向いているため、メイクアップ製品やヘアスタイリング剤などに好んで用いられています。また、ワックスは油脂と比較して光沢のある成分が多いため、髪や唇などにつけることによってツヤ感やウェット感を出し、私達をより印象的に魅せることができます。

「油」で選ぶ化粧品

 このように、似たような存在として考えられがちな「油」と「脂」と「ワックス」ですが、含まれている成分の違いによって肌との馴染みやすさや体温での溶けやすさ、質感などが異なっており、化粧品にはそれぞれの特徴を活かす形で使い分けがされています。以前は化粧品といえば「油」ばかりが注目され、ワックスはスタイリング剤、「脂」はやや影の薄い存在でしたが、「とろける」「水をはじく」など、コスメに求める感触や機能が多様化する中で、ワックスや脂もより様々な種類のコスメで見かけるようになりました。

 多くの化粧品から自分に合ったものを選ぶのは本当に大変です。選ぶ時の新たな基準の1つとして、「油」も基準に加えてみてはいかがでしょうか。きっと、貴方の生活がもう少しだけ潤いのあるものになるでしょう。

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