知っているようで知らない、化粧品成分「シリコン」の基礎知識

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美容と「シリコン」の深い関係

シャンプーやリンス等のヘアケア製品について調べていると、「シリコン」が1つのキーワードとして出てきます。髪の毛を優しくコーティングする成分として肯定的に紹介されることがある一方で、髪や頭皮に悪い成分として否定的に紹介されることもあります。常に議論の対象になっているのは、シリコンが欠かせない成分として、多くの製品に使い続けられてきたことを示しています。

 また、シリコンはヘアケア以外の話題でもしばしば耳にすることがあります。乳液や日焼け止め等、他の化粧品の成分として紹介されることもあれば、よりゴージャスな身体を手に入れたい、あるいは病気で失われた部分を取り戻したい、といった美容「外科」の分野でもよく話題になります。しかし、これだけ広く使用され、取り上げられているにも関わらず、「どうして使われているのか」はあまり紹介されず、今一つ分かりづらい存在でもあります。今回は化粧品に含まれているシリコンの性質や役割について取り上げたいと思います。

「シリコン」とはどんな物質なの?

化粧品の話題で「シリコン」と呼ばれるものは通常、「シリコーンオイル」のことを指します。純粋なシリコンはケイ素(化学式Si)の事を指し、パソコンやスマートフォン、テレビ等の電化製品にとって欠かせない金属です。一方、「シリコーンオイル」もしくは「シリコーン樹脂」は通常のオイルや樹脂の骨格部分の炭素がケイ素原子(及びケイ素原子と繋がっている酸素原子)に置き換わった成分の総称です。この中心となるケイ素原子と酸素原子の部分はシロキサン結合と呼ばれます。

骨格部分の炭素原子がシロキサン結合に置き換わることにより、化学的な性質も大きく変化します。シリコーンオイルや炭素骨格を持つオイルや樹脂と同様に水と馴染みにくいのですが、炭素骨格を持つ油分やエタノールともあまり馴染みません。また、触り心地も炭素骨格のものと比較して肌にまとわりつかず、サラサラとしています。

シリコーンオイルとして代表的なものは「ジメチコン」や「シクロペンタシロキサン」です。これらは常温では液体で揮発性に優れているため、他のシリコーン系成分の溶媒や肌に塗った瞬間の感触を良くする目的で広く用いられています。ヘアケア製品を例に挙げると、石油系シャンプーはどうしても皮脂を取り除いてしまうため、髪の毛の指通りが悪くなってしまいますが、シリコーンオイルを加えることで絡みにくく、滑らかな質感へと仕上げることが可能です。

水も油もはじく!シリコンの不思議な性質

前述の通り、「シリコン」には化粧品の使い心地を良くする効果がありますが、それ以上に重要な性質はむしろ「水とも油とも馴染まない」ことです。スキンケアの化粧品には肌表面の保湿力を上げるための「水との馴染みやすさ」、メイクアップ製品には化粧ノリの良さ、すなわち肌表面の「油との馴染みやすさ」が求められますが、シリコンはそのいずれも持ち合わせていません。一見、化粧品には向かない成分のように思われますが、他の成分と併用することで、その特徴を大いに生かすことができます。

 代表的なシリコンであるジメチコンには様々な構造を持ったものが存在しますが、分子量が大きなものについては揮発しにくく、分子量の低いものと併用することによって、肌や髪の毛に撥水性に優れた皮膜を形成します。その為、日焼け止めやファンデーションを汗や水から守って長持ちさせるため、あるいは髪の毛を汚れから守るための成分として用いられます。

 撥水性は脂肪酸やエステル、高級アルコール等も持ち合わせていますが、これらの成分は肌と馴染みやすく、肌に塗るとべたついてしまう、あるいは皮脂を取り除いてしまう原因となります。その点、シリコンは油と馴染まないため、化粧品の使用感や機能を損なわないまま、水をはじく機能だけを持たせることが可能です。

便利だけど、困りもの?

 サラサラとした使用感で適度に揮発し、水も油もはじく便利な成分のシリコンですが、この性質は時に困った問題を引き起こします。シャンプーに含まれたシリコンは髪の毛を強く滑らかにコーティングしますが、同時にヘアカラーやパーマの薬液が浸透するのも妨げてしまいます。また、シリコン自体の問題ではないのですが、シリコンのコーティング効果が優れているが為に、洗浄力の強すぎるシャンプーの悪影響が覆い隠されてしまうことがあります(一方、ノンシリコンシャンプーは「ごまかし」が効かないため、洗浄力がマイルドな成分が使われる傾向にあります)。

また、日焼け止めやファンデーションとして肌に塗った場合、人によっては皮膜が「重く」感じてしまうことがあります。シリコンによって形成される皮膜はそれ程厚いものではないのですが、水も油もはじき通気性も悪いため、人によっては不快に感じてしまうでしょう。また、通気性が悪いことにより、体質によっては肌荒れの原因となることがあります。使用後はクレンジングでしっかり落とせば問題ありませんが、少し落ちにくいのがネックです。

「水」でも「油」でもない貴重な存在

 化粧品はどのような製品であっても「水」と「油」の組み合わせで出来ています。そして、「水」も「油」をどう混ぜ合わせるか(もしくは分離させるか)、肌とどう馴染ませ、長持ちさせるかが製品開発に携わる方の腕の見せ所です。そのような中で、手軽に水や油と混ぜ合わせることができ、かつどちらとも馴染まないシリコンは様々な化粧品にとって欠かせない存在となっています。ノンシリコン処方も注目されている昨今ですが、手軽さと感触の良さ、機能性を兼ね備えたシリコンを取り入れることについて、もっとポジティブに捉えてみてはいかがでしょうか。

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