皮膚炎に効くという化粧品、本当に使っても大丈夫?

肌のお悩み

「皮膚炎」に効く化粧品はありますか?

 朝起きたら何となく肌の調子が悪くて、いつもの洗顔石鹸、化粧水が肌にしみてしまう、海で遊んだ翌日、体中が日焼けで痛くて、日焼け止めを塗り直さなかったことを後悔した、そんな経験は誰もが多かれ少なかれあるのではないでしょうか。この状態が「皮膚炎」です。多くの場合は2、3日で自然に治まるのですが、それが1週間、1ヶ月続き、いわゆる「敏感肌」の状態になると心配になってきます。また、長く続かなくても、肌がはっきりと赤くなったり、湿疹ができたりしてしまうと困ります。病院に行くまででもないだろうと思って、まずは日頃使っている化粧品をまず見直そうと、あれこれ探してみる方も多いのではないでしょうか。

 雑誌やインターネット上では「敏感肌」「皮膚炎」に効果がある化粧品として、多くの製品が紹介されています。製品には大きく「炎症の原因となる成分を除いた」(アルコールフリー、パラベンフリー等)もの、「皮膚炎を抑えるための成分を含んだもの」があります。いずれも即効性はなく、個人差がありますが、毎日の使用で肌の状態を少しずつ改善することが可能です。今回は「皮膚炎を抑えるための成分」を中心に見てゆきます。

皮膚炎に対する化粧品のアプローチ①肌のバリア機能を改善する

 皮膚炎を起こす要素には様々なものがありますが、その1つとして、肌が本来備えている、外的刺激に対するバリア機能が失われていることが挙げられます。肌の最も外側に位置する角質層には肌の内部への異物や雑菌の侵入を防ぎ、また、古くなった組織を更新するための機能が備わっていますが、ストレスや老化をはじめとした様々な原因によってバリア機能が失われると、些細な刺激によって肌が炎症を起こしやすくなり、皮膚炎の原因となります。

  肌のバリア機能はヒアルロン酸やセラミド、コラーゲンといった角質を構成する成分、及びこれらによって保持された水分によって担われています。角質層自体のヒアルロン酸やセラミド、コラーゲンを化粧水や美容液で補給することはできませんが、これらが含まれた製品を肌に塗り、浸透させることによって角質層内に取り込み、バリア機能や保湿効果を補うことができます。また、保湿に関してはグリセリンをはじめとした汎用性の高い成分でも効果が期待できます。

皮膚炎に対する化粧品のアプローチ②炎症を穏やかに抑え、治りを早くする

 一部の成分には炎症を穏やかに抑え、治りを早くする効果も期待できます。前者の成分としてはグリチルリチン酸2Kが有名です。グリチルリチン酸2Kはカンゾウ抽出物の代表的な成分で、肌がアレルゲン物質や紫外線によって刺激を受けた際、炎症を引き起こす原因となる物質であるヒスタミンやプロスタグランジンE₂の発生を阻害することにより、肌の炎症を抑える効果があることが知られています。この成分は医薬品としても使用されていますが、化粧品でも化粧水や美容液に広く使われており、ごく自然に取り入れることができます。

 後者の成分としてはアラントインが有名です。アラントインは尿酸もしくは尿素より合成される成分で、肌の角質層での細胞増殖を促進し、傷ついた肌を修復する効果があることが知られており、こちらも化粧品だけではなく、医薬品としても使用されている成分です。この成分はハンドクリームやアフターシェーブローション等、「傷つきやすく、事後的なケアが必要」な部分を対象にした製品に含まれています。

化粧品は皮膚炎を「治療」しません

 先に紹介した成分は肌の小さな不調の改善には効果的です。しかし、より肌の不調が深刻な場合、化粧品の役割は限られています。しかし、海外の製品を中心に、例えば「アトピー性皮膚炎を治す」といった、より直接的な効果を謳った製品が販売されていることがあります。このような表現は化粧品や医薬部外品の効能としては認められていないため、製品の使用自体を避けた方が良いでしょう。多くの場合、宣伝されているような効果を得ることはできません。

 しかし、稀に宣伝で謳われているような高い効果が得られることがあります。その場合、「禁止されている成分」が使用されている恐れがあります。過去に問題となったのはステロイドの使用です。ステロイドは皮膚科では軟膏などの外用剤として、炎症を起こした部位に使用することによって症状を強力に抑えますが、副作用が強い、身体の部位によって適量が異なる等の理由から、化粧品としての使用は認められていません。しかし、製品を「すぐ効くようにする」為、ステロイドを添加していた事例が定期的に確認されています。

医薬品としての管理がされていないステロイド類を継続的に使用した場合、肌に大きなダメージを与えてしまうことが懸念されます。また、ステロイド以外の「禁止されている成分」についても同様です。化粧品は基本的に「日々の小さな不調の改善」の為に使用し、病気を治すものではないことを覚えておいてください。

肌の調子が悪い、そんな時どうすれば良いの?

肌への潤い補給に、ダメージを受けて弱くなった肌の最初のケアに、化粧水や乳液などの化粧品はとても効果的なアイテムです。毎日使い続けることによって、「炎症を起こしにくくする」「小さな炎症を抑える」ことが可能です。しかし、炎症が中々治まらない、悪化するといった場合は程度に応じて市販薬を試す、医師の診察を受ける等の方法が適切です。化粧品だけで対処しようと考えると、ますます悪化させてしまう原因となります。

逆説的ですが、化粧品が皮膚炎の原因となっていることもあります。一般的に低刺激と言われている化粧品に関しても肌への影響には個人差があり、いわゆる「肌に合わない」といった状態が起こり得ます。最近になって敏感肌に悩まされている場合、最近使い始めた化粧品があればそれを元に戻す、あるいは止めてみるのも1つの方法です。また、食べ物のアレルギーで肌に症状が出る場合もあるため、心当たりがある場合はそちらも疑ってみると良いでしょう。

肌は身体の中でも不調が現れやすい場所で、やや手を焼いてしまう存在です。しかし、その不調に向き合って適切なケアを行うことで、状態を改善する、あるいは良い状態を保つことが可能です。敏感肌は体質だから、年齢だから仕方ないと諦めてしまう前に、もう少しだけスキンケアを見直してみると良いかもしれません。

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