「水」とスキンケアの深い関係
いつまでも美しい肌でいるためのスキンケア、最も欠かせないのは毎日の保湿です。化粧水をつけるのも、とろみのある美容液をつけるのも、クリームを塗って蓋をするのも、全ての目的は肌にフレッシュな水分を供給し、それを逃がさないためです。水分が逃げてしまっては、保湿効果の高いクリームを塗っても、肌のハリやツヤは失われてしまいます。加齢と共に肌の水分量は低下しやすくなるため、補うための工夫が必要になります。また、肌の表面を綺麗に保つためにも水が必要になります。
一口に「水」といっても、ドラッグストアに行くと「化粧水」「精製水」「ミネラルウォーター」「純水」など様々な種類が売っています。また、海外旅行や海外生活の経験のある方は実感しているかもしれませんが、日本の「水道水」はとても優秀です。塩素で消毒こそされているものの、新鮮でそのままでも飲める水をそれこそ「湯水のように」使うことができます。
では、それぞれの水にはどんな特徴があるのでしょうか。美容に関する雑誌やインターネットの記事を読むと特に水道水や精製水の効果や危険性について、色々なことが紹介されています。中には少しセンセーショナルな内容も見受けられますが、実際のところはどうなのでしょうか。
化粧品の基本成分、精製水
色々な「水」がある中で、最も化粧品に幅広く使用されている成分が「精製水」です。精製水は「純水」といわれることもあり、天然に産出される水に含まれている水以外の不純物全てをイオン交換膜と呼ばれる専用の膜を使って取り除いたものとなります。市販の浄水器でも不純物を取り除くことができますが、精製水は不純物がより徹底的に取り除かれています。
精製水はスキンケアにおいてとても便利な成分です。化粧水など肌の水分を補うために使用されるアイテムにはほぼ全て精製水が含まれていますが、理由としては「他の成分がほとんど含まれていないため、成分同士の相性による変化を気にせずに使える」ことが挙げられます。また、純粋な水であるため石けん等の泡立ちも良く、肌の汚れを洗い流すためには最適です。
しかし、純粋な水であることは欠点でもあります。まず、良くも悪くも「ただの水」であるため、他の成分にあるような特別な効果を期待することはできません。また、防腐剤等が入っていない精製水そのものに皮脂などの不純物が混ざりこんだ場合、雑菌が繁殖しやすくなってしまいます。
安全だけどもミネラル分に注意、水道水
化粧水や拭き取りなど、スキンケアのシーンでは活躍する精製水ですが、洗顔や洗髪、入浴など日々のスキンケアの分野では水道水とのお付き合いも大事です。水道水は河川や海の水に含まれている不純物を沈殿ろ過し、塩素等で消毒することによって得られます。
水道水のメリットは何といっても「安心に」「大量に」利用できることです。日本の水道水は全て安心して飲むことができ、コストもとても安いです。また、「塩素が含まれている」こともメリットで、常温で放置しても雑菌がとても繁殖しにくいため、極めて衛生的です。手作り化粧水では精製水を使うのがベストですが、冷蔵庫に保管してすぐに使い切る、といった使い方が出来ない場合、保存が効く水道水の利用を勧めるレシピも多いです。手作り化粧品の基本成分であるグリセリンは特に塩素の影響を受けないため、塩素の刺激性が気にならなければその方が安心です。
しかし、水道水には大きなデメリットがあります。水道水は川や湖、井戸などを水源としており、水源の場所によってはマグネシウム化合物等、不要なミネラル成分が多く含まれています。不要なミネラル成分は石鹸の泡立ちを悪くする、髪の毛の表面に溜まって髪がきしむといったトラブルの原因となることがあり、スキンケアにとってはやや迷惑な存在です。このような心当たりがある場合、化粧品ではなく、水道水が原因であることを疑った方が良いかもしれません。
ミネラル分が豊富、鉱泉水
スキンケアにとってマイナスになることもあるミネラル成分ですが、水を採取する場所によっては肌に良い成分が含まれており、化粧水などに積極的に取り入れられています。「ミネラルウォーター」「温泉水」と呼ばれるものがそれで、ミネラル分の配合によって様々な効果を発揮します。
鉱泉水は精製水と比較して浸透圧が高く、鉱泉水内に含まれている成分を肌に浸透させる働きがあります。個々のミネラルの作用については未解明の部分もありますが、肌に不足している成分が補われることにより、肌荒れ等の改善を期待することができます。アルカリ性を示す鉱泉水に関しては皮脂を取り除く効果、弱酸性の鉱泉水に関しては肌表面のpHを調整する効果も期待することができます。また、「成分」としての効果ではないのですが、鉱泉水はマーケティングの観点からも有用で、ご当地の成分を取り入れることによって、製品としての差別化を図るために利用されています。
しかし、鉱泉水はスキンケアにとってやや使いづらい成分でもあります。水道水と同様にミネラルによるトラブルの原因となること、常に成分が安定していないことに加え、主に弱アルカリ性であることは肌への刺激、肌荒れの原因に繋がります。日本で採取したミネラルウォーターはミネラル分の少ない、いわゆる「軟水」であるためトラブルの原因とはなり辛いですが、採取地が海外のもの、いわゆる「温泉水」については少し注意が必要です。
「水」はどうやって使い分ければ良いの?
あまりにも当たり前のように使われているため、意外にその特徴が知られていない3種類の「水」ですが、スキンケアにはどのように使い分ければ良いのでしょうか。
肌にとって最も理想的な「水」は精製水です。残留塩素やミネラル等を気にせず使用でき、敏感肌でも安心です。しかし、日本に住んでいる限りでは「水道水」もまたスキンケアに便利な成分です。精製水よりも安価で、文字通り「湯水のように」使うことができ、塩素消毒されているため雑菌等が繁殖する心配も少ないです。水道水の塩素に関しては家庭用の浄水フィルターで取り除けるので、水質が気になる場合はまず導入してみると良いでしょう。精製水を購入して併用するのであれば、まず水道水で洗い流し、仕上げに精製水でミネラル等を洗い流す使い方がお勧めです。
一方、鉱泉水は精製水、水道水で基本的なケアを行った上で、好みで取り入れると良いでしょう。ちょっとプラスの効果を期待して温泉成分が配合された化粧水を使ったり、異国情緒に浸ったりする目的で使うと生活に彩りを与えてくれます。
化粧品は「水を逃がさない」ことを競い合っていますが、日々のスキンケアには「水が合う」こともまた大事な要素です。「水そのもの」にも少し目を向けてみてはどうでしょうか。
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