ファンデーションの肌色、どうやって作っているの?

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彩り豊かなファンデーション

 貴方は「肌色」と聞いてどんな色を思い浮かべるでしょうか。子供の時に使ったクレヨンの少し白みがかった黄色、健康的に日焼けした茶褐色、あるいは透き通るような白色、人それぞれかもしれません。そして、私達の実際の「肌色」も、両親から受け継いだ遺伝子やライフスタイルによって様々です。

 私達がどんな「肌色」をしているか、あるいはどんな「肌色」でありたいか、どんなニーズにも応えるために、化粧品メーカーからは彩り鮮やかなファンデーションが発売されています。近所の少し大きなドラッグストアやデパートでも、自分の好みに合った「肌色」を見つけることができるでしょう。そして、あらゆる人が訪れる空港の免税店やアメリカ西海岸のスーパーマーケットでは、売り場を埋め尽くす程多くの種類のファンデーションが並んでいます。

 ところで、ファンデーションの色の違いはどのように産み出されているのでしょうか。透き通るような白色から小麦色、チャコールまで様々な色があるファンデーションは一見、あらゆる成分の組み合わせによって生まれているように思われます。しかし、実際のレシピは驚くほどシンプルで、基本的には「色味」と「明るさ」を調整する、たった2種類の成分を混ぜ合わせることによって作ることができます。

ファンデーションの色味を作る成分「酸化鉄」

 絵具で「肌色」を描きたいとき、どうすれば良いでしょうか。絵が趣味の方、あるいはデザインを仕事とされている方であれば、まず黄色と赤色の絵具を混ぜ、黄土色を作る方法を思いつくかもしれません。そのまままだとややくすんだ色になってしまうため、白や黒を混ぜることによって、より実際の肌に近い色合いに仕上げることができます。

 この色味を作るための「黄色」「赤色」、そして暗さを調整する「黒色」は、化粧品ではある1種類の成分、酸化鉄によって生み出されます。酸化鉄は私達の生活にとってお馴染みの鉄を加熱し、空気中の酸素と結合させることによって得られる無機顔料で、構造によって化学的な性質は大きく変わらないものの、色味(光を屈折させる作用)が大きく異なります。赤色のものはベンガラもしくは赤酸化鉄、黄色のものは黄酸化鉄、黒色のものは黒酸化鉄と呼ばれます。

 ファンデーションの色味はこの「黄色」「赤色」を任意の割合で配合することによって生み出されます。赤色が多いとファンデーションはピンクに近い色合いとなり、一方で黄色が多いものはベージュに近い色合いとなります。また、その中間に位置するものはオークルと呼ばれます。酸化鉄はやや鮮やかには欠けるものの、自然な肌の色味を出す目的に向いており、古くから多くの化粧品に用いられてきました。

また、ファンデーションの「暗さ」は黒酸化鉄の量を調整することによって表現可能です。黒色の割合を多くしたファンデーションは日本製品では「濃い肌色」、より濃い色の海外製品では「ダークブラウン」や「チョコレート」等と表記され、後者は主にアフリカ、中南米にルーツを持つ方を対象としています。

ファンデーションの明るさを作る成分「酸化チタン」

 ファンデーションの色味、あるいは濃さは酸化鉄の配合を変えることによって調整できますが、より明るい「肌色」を作るためには「白色」が必要になります。この「白色」の役割をファンデーションで担うのが「酸化チタン」です。酸化チタンは無機顔料の一種で、光の反射率に優れている成分です。日焼け止めクリームの成分としても有名で、紫外線に加えて目に見える光も多く反射するため、他の成分と比較すると際立って白く見えます(この目的で酸化亜鉛を用いることもありますが、酸化チタンの方がより「白い」成分です)

 ファンデーションの明るさは酸化チタンの配合量によって調整することが可能で、配合量を増やすとより白く透き通るような色合いとなります。酸化チタンを増やしたファンデーションは「ライトベージュ」「ライトピンク」と呼ばれており、肌を明るくしてくれますが、地肌のトーンに合わないといわゆる「白浮き」の状態となってしまいます。この対策の1つとして、光の効果で肌が明るく見えるよう、ファンデーションに煌めきを与える成分であるマイカが一緒に使用されています。

ファンデーションのその他の「肌色」成分

 パウダー系のファンデーションは基本的に酸化鉄、酸化チタン(もしくは酸化亜鉛)等のミネラル成分で色味や明るさを出していますが、製品の性格によっては他の成分が利用されることがあります。

リキッドファンデーション等ではより鮮やかな発色を期待し、タール色素が使用されることがあります。タール色素は一般的には赤色〇号、黄色〇号と表記される成分で、酸化鉄より特に赤色の発色に優れているため、海外製品を中心に、ピンク系のファンデーションの一部に使用されています。基本的に安全な成分なのですが、油性成分で製品の使用感がやや重めになるのが欠点です。

また、一部のファンデーションでは黄色や赤色の成分として紅花色素が利用されることがあります。紅花色素は色味に関して酸化鉄よりもさらに控えめですが、天然由来の成分として、ナチュラルコスメの分野で好んで用いられます。もし製品の色味が気に入った場合は取り入れてみるもの良いでしょう。

貴方に合う色、選んでみませんか

 驚く程シンプルなファンデーションの原料ですが、その配合によってあらゆる「肌色」を演出することが可能です。また、同じような色味であっても、他の原料との組み合わせで肌の質感なども自在に表現できます。最近ではニーズの多様化に伴って、海外ブランドを中心に店頭でもよりきめ細やかな色、質感のラインナップから貴方に合った製品を手に入れることができるようになりました。もし気分を変えて新しいファンデーションを試してみたい、と感じたときはより貴方に合った色を探してみてはいかがでしょうか。

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