日焼け止めで服が変色?
折角のお気に入りの服に、いつの間にか染みがついてしまった、そんな経験は誰もがお持ちのことでしょう。襟周りが擦れたり、みんなで食事に行った時にソースが袖についたり、雨の日の外出で泥が跳ねてしまったり、服が汚れてしまう原因は様々ですが、時に何の心当たりもないのに染みがついていることがあります。特に、白い服の染みはとても目立ちやすく、洗濯した筈なのに、かえって汚れが目立ってしまった、という経験をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。
実はこのような汚れの大きな原因の1つが「日焼け止め」です。日焼け止めは紫外線から私達の肌を守る必要不可欠な存在ですが、首元や手首などから服に付着し、時間が経つと落ちにくい汚れの原因となります。また、日焼け止めがついた状態で洗濯、漂白することで一部の成分が化学反応を起こし、変色の原因となることがあります。一体、これらの汚れは日焼け止めのどんな成分によるもので、どのように対処すれば良いのでしょうか。
黄ばみの原因「紫外線吸収剤」と「皮脂」
日焼け止めが襟元や袖口につき、すぐに洗濯しないと黄ばみの原因になることがありますが、これは日焼け止めに入っている「紫外線吸収剤」と呼ばれる成分が皮脂と混ざり合い、酸化することによって引き起こされます。紫外線吸収剤の代表的な成分としてはメトキシケイヒ酸エチルヘキシルやオキシベンゾン-3などが挙げられますが、いずれも水よりは油とよく馴染みやすい性質を持っているため、肌につけると皮脂とよく混ざり合います。また、どの成分も化粧品に配合された状態では比較的安定しているため、肌につけても刺激を感じることは多くありません。
しかし、紫外線吸収剤と皮脂が混ざりあったものは比較的酸化されやすい性質があり、酸化されると皮脂の中に含まれるトリグリセリドの一部が分解されて遊離脂肪酸へと変化し、無色であったものが次第に黄色〜褐色に変化します。この酸化された皮脂こそが日焼け止めによってもたらされる服の黄ばみの正体で、肌の上ではほとんど気が付かないのですが、白い服に付着するとその色の違いが目立ってしまいます。通常の皮脂も服について黄ばみの原因となることがありますが、日焼け止めの紫外線吸収剤やファンデーションと混ざることで、より服に付着しやすく、落ちにくくなってしまいます。
漂白剤と反応して「ピンク色になる?」
「黄ばみ」は割とよくある現象ですが、時に白い服を洗濯すると襟元や袖が何の前触れもなく「鮮やかなピンク色」に染まってしまい、驚くことがあります。実はやこれも日焼け止めの影響によるもので、紫外線吸収剤の一種でUV-Aの吸収作用に優れたジエチルアミノヒロドキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、tーブチルメトキシジベンゾイルメタンが塩素系漂白剤に含まれる次亜塩素酸ナトリウムと反応し、酸化されることによって発生する現象です。
これらの紫外線吸収剤は数少ないUV-Aの吸収作用に優れた化合物であり、酸化チタンや酸化亜鉛のように白浮きせず、他の油性成分とも馴染みやすいため、UV-Bの吸収作用に優れたメトキシケイヒ酸エチルヘキシルとしばしば併用されます。特にジェルタイプの日焼け止めではよく利用されているため、このような製品では服を洗濯すると「鮮やかなピンク色になる」現象が起こりがちです。このピンク色は身体に害をもたらすものではありませんが、油分による黄ばみ以上に目立ってしまい、そのままでは着られなくなってしまいます。
厄介な「黄ばみ」「ピンク」、どうやって対処すればいいの?
このような日焼け止めによってもたらされる「黄ばみ」「ピンク」はとても厄介な存在に見えますが、幸い、どちらも手間をかけることで落とすことができます。「黄ばみ」「ピンク」はいずれもいわゆる油汚れの一種であるため、界面活性剤を含んだクレンジングオイルや中性洗剤で染みになった部分を浮かし、軽度であればそのまま洗剤で洗濯することで、より程度がひどいものに関しては酸素系漂白剤を使用することで、多くの場合は落とすことができます。襟元や袖口といったピンポイントの部分については直接塗って落とすタイプの洗剤を使い、もみ洗いすることも効果的です(ただし、繊維を痛める原因になるため、あまり強くこするのは避けてください)。
逆に避けるべきことは塩素系漂白剤の使用です。塩素系漂白剤の使用は皮脂による黄ばみや黒ずみ自体には効果があるのですが、先に紹介したように「ピンク色への変色」の原因が次亜塩素酸ナトリウムの作用による成分の酸化であるため、変色がより悪化してしまいます。また、クリーニングに出して染み抜きをお願いすることもできますが、家庭用の洗剤で十分な効果が期待できること、また、時間の経過と共に油の酸化が進んでより黄ばみや黒ずみが目立ち、通常のドライクリーニングでは落としにくくなることから、家で洗濯できるアイテムのケアとしてはあまりお勧めできません。
日焼け止めを「落とす」ことも大事ですが、予防的な方法として、日焼け止めを「使い分ける」「使う時に注意する」ことで、変色のリスクを減らすこともできます。変色は紫外線吸収剤によってもたらされる現象のため、酸化チタンや酸化亜鉛などの紫外線散乱剤をメインとした日焼け止めを使うことで防ぐことができます。これらの成分は服に付着すると白く浮いてしまいますが、白や薄いベージュの服ではあまり目立たないため、安心して使うことができます。一方、黒などの服では紫外線吸収剤メインのものを使うと良いでしょう。また、日焼け止めを予め塗っておき、服を着る前に数分置くことで、服への付着を防ぐことができます。
折角のお気に入りの服、少しでも長く大事に着たいものです。日焼け止めで変色してしまっても、その特徴を知った上で丁寧に使い分けたり、洗濯したりすることで、再び輝きを取り戻すことができます。服を汚してしまうから日焼け止めは塗りたくない、そんな心配は要りません。ますます紫外線が強くなるこれからの季節ですが、どうか大切な肌を守りつつ、オシャレを楽しんでみて下さい。
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