「ひんやりの香り」の代名詞、ミントの香り
暑い夏の季節、あなたは毎年どうやって乗り切っていますか。エアコンの効いた室内に閉じこもる、冷たいドリンクを飲むなど涼を求める方法は様々ですが、「五感に働きかける」ことも有効です。噴水や川のほとりを歩いてみる、風鈴の音色に耳を傾けてみるなど、視覚や聴覚で涼しさを感じることで、暑さを気持ち和らげることができます。また、視覚や聴覚以上に「嗅覚」に訴えかける方法は有効で、夏になると涼しさを感じさせるような香りをまとったアイテムが多く販売されるようになります。
「ひんやりの香り」には幾つかの種類がありますが、中でも代表的なものは「ミント」(ハッカ)です。ミントは「ひんやり」を感じるためのアイテムに多く利用されており、夏の香りのスタンダードとして有名な存在です。ミントはコスメや雑貨に利用されているだけではなく、よりピュアな香りを楽しみたい場合、「ハッカ油」や精油なども用意されており、お店で手軽に買うことができます。一体、ミントの香りはどんな成分によって生み出され、どんな効果を期待できるのでしょうか。
意外に複雑、ミントの香りの正体
ミントの香りを生み出す成分として最も知られているものはメントールです。メントールはセイヨウハッカ(ペパーミント)に多く含まれている成分で、やや刺激的で爽快感のある香りを特徴としています。化粧品や他のアイテムにも爽やかさを出すために利用されており、皮膚や感覚神経に存在するTRPチャネルと呼ばれるセンサーを刺激することにより、ひんやりとした感触を産み出します。特に男性用のコスメではお馴染みの成分で、かつては化粧水やボディーシートの大半にメントールが利用されていました。
しかし、ミントによって醸し出される香りはもう少し複雑で、複数の成分の組み合わせによるものです。まず、ペパーミント油の場合、メントールから派生したメントンが20%程度含まれています。メントンはメントールと似たような香りですが、揮発性がメントールよりも低く、比較的清涼感が抑えられています。また、他にユーカリオイルなどに含まれている1,8-シネオール、レモンなどの精油に多く含まれているリモネン、クローブなどに多く含まれ、「青葉アルコール」の別名で知られているヘキセノール等が含まれているため、単に爽やかなだけではなく、植物の瑞々しさを感じることもできます。
また、スペアミント油にはメントールは含まれておらず、爽やかさの中に甘さを感じさせるl-カルボン、先述のリモネン、マンゴーやホップの香り成分として知られるミルセン(リラックス効果の強いCBDオイルでもお馴染みの成分です)などが含まれています。これらの成分によって産み出される香りはペパーミント油と比較して清涼感がマイルドで、その中に甘さや苦さも感じることができます。
ミントの香りとその効果
このように、単にメントールだけではなく、様々な成分の組み合わせによって織り成されている「ミントの香り」ですが、その代表的な効果として脳を覚醒させ、集中力を高めることが知られています。メントールは顔面の間隔を脳に伝える三叉神経に作用することによって脳を刺激し、その働きを活性化させます。また、メントンや1,8-シネオール、リモネンにも同様に脳の働きを活性化させる働きがあることが判っており、それらの成分が含まれたペパーミントの精油は勉強や仕事の能率を上げる目的にとても適しています。
一方、ミントは脳を覚醒させるだけではなく、気持ちをリラックスさせる作用も持ち合わせています。メントールによってもたらされる「ひんやり感」による心地よさは脳の副交感神経に作用してその働きを強めることで、もしくはストレスホルモンとして知られているコルチゾールの分泌を抑制することで気持ちを鎮めます。また、l-カルボンやミルセンによってもたらされる甘い香りは中枢神経に作用し、気持ちをより落ち着かせ、また、筋肉の緊張をほぐします。
興味深いことに、このようなミントの香りは植物が虫による被害を防ぐために身につけたもので、多くの昆虫にとっては苦手な臭いです。そのため、ミントの精油やハッカ油を水とエタノールを混ぜたものに混ぜて噴射することにより、天然の虫除けスプレーとして活用することができます。
ミントの香り、取り入れる際の注意点は?
このように、メントールやl-カルボンなどによってもたらされるミントの香りは単に私達を涼ませてくれるだけではなく、脳に様々な形で作用することで私達のパフォーマンスを上げてくれます。また、ペパーミント油は比較的シャープで薬品のような香りですが、スペアミント油はよりマイルドで、優しさを感じさせてくれます。
しかし、ミントの精油やハッカ油を使う上では若干の注意点も存在します。まず、ペパーミントの主成分のメントールは肌への毒性はないものの、TRPチャネルを刺激してひんやり感をもたらすものであり、化粧品成分の中でかなり刺激の強い部類に分類されます。そのため、大量に揮発したものを吸い込んだり、精油を肌に直接つけたりすると痛みを感じる場合があります。大量の使用は避け、肌につける場合には十分に希釈するようにしてください。また、犬や猫などのペットには人間以上に強く作用してしまうため、室内で飼っている場合には近くで匂いを嗅がせないよう十分な注意が必要です。これらの注意点は他の多くの精油やフレグランスオイルに共通するもので、ミントが特別、というわけではありません。決められた使い方に従って利用する分には大きな問題はありませんが、貴方やペットの大事な身体を守る上で、覚えておくようにしてください。
熱くてジメジメした日本の夏、ミントの香りが恋しくなる季節です。ミントの精油やハッカ油を上手く利用することで、単に涼むだけではなく、心や身体にとって嬉しい効果を得ることができます。ミントが好きな方も、これまで少し苦手だった方も、夏を乗り切るために使ってみてはいかがでしょうか。
