肌に幸せをもたらす、ヘビ由来の化粧品成分「シンエイク」とは?

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「ヘビ毒」由来の化粧品成分?

 2025年の干支は「巳」です。ヘビは干支の中ではやや好き嫌いが分かれる存在で、ペットとしても愛される一方、本能的に苦手と感じる方も多いようですが、古くから幸運をもたらす存在として、世界中で「特別な」扱いを受けてきました。日本にもヘビを祀った神社が多く存在し、参拝すると金運の向上や病気の平癒、子孫繁栄などに効果があると言われています。また、中には蛇の神様同士のエピソードから、縁結びにご利益のあるところもあるそうです。

 そんなヘビですが、最近では美容の世界でも注目を浴びています。ヘビの毒に含まれている成分に「肌のシワを伸ばす」効果があることが明らかになり、その毒によく似た構造と作用を持った物質「シンエイク」が合成され、最近では韓国コスメや日本のサロン販売品などを中心に、美容効果の高い新成分として取り入れられているのです。このシンエイク、及びそれが配合された製品は時に「毒蛇エキス」「毒蛇コスメ」といったインパクトの強い名前で取り上げられることもありますが、一体どんな成分で、どのようにして肌のシワに働きかけるのでしょうか。

ヘビ毒を「模倣」した成分「シンエイク」

 シンエイクはスイスの製薬会社によって開発された成分で、ペプチド(低分子のタンパク質)の一種であるジ酢酸ジペプチドジアミノブチロイルベンジルアミドを主成分とし、他に添加物としてグリセリンなどを含んでいます。ジ酢酸ジペプチドジアミノブチロイルベンジルアミドはヨロイハブなどの毒蛇が獲物の筋肉を麻痺させ、動きを止めるために利用している神経毒(Waglerin1)に着眼し、その複雑な構造を3種類のアミノ酸(アラニン、プロリン及びジアミノブチルベンジルアミド)のみで人工的に合成し、再現したものです。

 ヘビ毒(Waglerin1)には大変強い作用がありますが、毒性が極めて強く、化粧品への利用に適した成分ではありません。また、ヘビには神経毒だけではなく、より致命的な出血毒や筋肉毒と呼ばれる成分も含まれており、目的の成分だけを抽出して利用しようとすることはかなりの困難が伴います。一方、ヘビ毒を模倣して人工的に合成されたシンエイクは筋肉を麻痺させ、動きを止める作用こそ持っているものの、その効果は穏やかで、化粧品成分として安心して利用することができます。また、シンエイクは人工的に合成された成分であるため、予期せぬ不純物によるリスクを未然に防ぐことができます。

表情筋を「緩める」ことによるシワ防止

 「シワ防止」を謳った化粧品は数多くありますが、その多くは水分不足や活性酸素のダメージによる「加齢ジワ」を防ぐことを目的としており、表情のクセや笑うことによってできる「表情ジワ」には直接的な効果を期待することはできません。一方、シンエイクはこの「表情ジワ」の予防や緩和に効果的であると言われています。シンエイクが含まれた化粧品を顔につけるとあたかもヘビの神経毒のように作用し、神経を麻痺させることによって筋肉の収縮を抑制させます。その結果として表情ジワの原因となる筋肉の緊張が緩み、シワができにくくなるのです。

 この作用は美容医療でお馴染みのボツリヌス毒素(ボトックス)と同様のもので、シンエイクは「塗るボトックス」と表現されることもあります。また、同様の効果を持った成分としてはボツリヌス毒素の類似成分であるアルジルリンが挙げられますが、シンエイクはアルジルリンよりも表情筋の弛緩作用において優れており、6倍程度の効果を持っている、といったデータも存在します。また、ボトックスでは稀に表情が作りにくくなるなどの副作用が生じることがありますが、作用が穏やかなシンエイクでは報告されておらず、安心して利用することができます。

「蛇の力」でもっと素敵な笑顔を

 このように、シンエイクが含まれた化粧品は一般的なスキンケア製品では対処しにくい表情ジワの予防や緩和に優れた効果を発揮します。美容医療のボトックスも以前と比較するとかなり身近な存在になってきましたが、費用や副作用の心配、また、顔に注射をすることに抵抗感がある方も多いでしょう。その点、シンエイクはやや高価な成分ではあるものの、化粧品として「塗って」試すことができるため、シワに対するケアとして取り入れるためのハードルは低めです。

 ただし、この画期的な成分にも短所は存在します。1つはボトックス注射などと比較すると即効性に劣る、といった点です。シンエイクにはある程度の即効性があるものの、その作用は穏やかで、はっきりとした効果を実感するためにはある程度長い時間使い続ける必要があります。この点は副作用の出にくいといった「化粧品」のメリットでもあるのですが、期待外れに感じる方もいらっしゃることでしょう。

 また、シンエイクは表情筋によるシワには効果的ですが、加齢や水分不足、紫外線のダメージによる「加齢ジワ」には効果を発揮しません。そのため、シンエイクは「この成分さえあれば安心」といった使い方をするのではなく、他の加齢ジワに効果的な成分が含まれた製品と併用する、もしくはそのような成分も一緒に配合された製品を使用すると良いでしょう。

 2025年、貴方はどんな新しいことに挑戦するつもりですか。もし貴方がスキンケアをもっと見直してみたいと考えているのであれば、干支の「巳」にちなんだ、シンエイクを使ったスキンケアを試してみてはいかがでしょうか。

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