「陽に当たらずに日焼けする」セルフタンニングとは?どんな成分が使われているの?

日に焼けなくても、小麦色の肌になれる?

 まもなく初夏を迎え、日差しが徐々に厳しくなってくるこの時期、私達が抱える大きな悩みの1つが「日焼け」です。直射日光には体内時計を整えたり、体内でのビタミンDの合成を助けたりといったメリットもありますが、炎症やシミ、シワなど、様々な肌トラブルを引き起こしてしまいます。そのため、デパートやドラッグストアの化粧品売り場に行くと所狭しと様々な日焼け止め製品が並んでおり、用途や好みの質感に合わせて選ぶことができます。

 しかし、日焼けを避けたい気持ちがある一方で、よく日に焼けた肌が男女を問わず健康的に見えるのもまた事実です。肌を見せる機会が多くなるこれからの季節、小麦色の肌は私達の魅力をより引き立てます。近年、やや流行は落ち着いていますが、気持ちよく日に焼けるためのサンオイル、専門の日焼けサロンなどが販売、展開されていて、ニーズの底堅さが感じられます。また、最近ではいわゆるスーパー銭湯に日焼けマシンが設置されているのも時々見るようになりました。

 そのような近年の日焼け事情ですが、最近、紫外線を浴びずに、「専用のアイテムを塗るだけで小麦色の肌を手に入れる」といったアイテムが販売され、注目を浴びています。一体、どんな成分によるもので、通常の日焼けとはどんな違いがあるのでしょうか。また、身体にとって悪い影響はないのでしょうか。

セルフタンニング剤の主成分「ジヒドロキシアセトン」「エリスルロース」

 この「肌に塗るだけで小麦色に変化する」アイテムのことを一般的にセルフタンニングと呼び、ローションやジェルなど様々な質感のものが存在しますが、いずれもジヒドロキシアセトン、エリスルロースと呼ばれる糖類の一種を主成分としています。ジヒドロキシアセトンは化学式C3H6O3で表されるグリセリンを原料として得られる物質、エリスルロースは化学式C4H8O4で表されるサトウキビなどから抽出される物質で、いずれも水に溶けやすく、油とは馴染みにくい成分です。

これらの成分の大きな特徴として、アミノ酸やタンパク質と反応し、メラノイジンと呼ばれる褐色の色素を生み出すことが挙げられます。この現象はメイラード反応と呼ばれる料理などでもお馴染みのもので、肉や玉ねぎを炒めたり、コーヒー豆を焙煎したりした際の変色はこの現象によるものですが、肌につけると角質層に存在するアミノ酸と作用してメラノイジンを生成し、肌の色をあたかも太陽の光をよく浴びたような小麦色に変化させます。

ジヒドロキシアセトンとエリスルロースはどちらもよく似た成分ですが、効果の現れ方が異なります。ジヒドロキシアセトンは比較的作用が発現しやすく、肌に塗った後2時間程度で効果を実感できるのに対し、エリスルロースは数日かけてゆっくりと作用し、肌により自然な日焼け感をもたらします。

普通の日焼けとセルフタンニング、何が違うの?

 このようなジヒドロキシアセトンやエリスルロースによってもたらされる肌の変化ですが、紫外線によってもたらされる「日焼け」とはその仕組みが全く異なります。一般的な日焼けは肌の基底層に存在するメラノサイトに存在する酵素チロシナーゼが紫外線によって活性化され、メラニン色素を分泌することによってもたらされる紫外線に対する防御反応の1つです。分泌されたメラニン色素は表皮層に留まり、ターンオーバーによって剥がれ落ちるまで1ヶ月程度、環境中の紫外線を吸収、散乱させることによって天然の日焼け止めとしての役割を果たします。

 一方、ジヒドロキシアセトンやエリスルロースはメイラード反応によって、肌の表面のタンパク質を変化させることで「日焼けした肌」を作り上げます。この反応はあくまでも表皮層にとどまるため、3日〜1週間程度の短い期間でターンオーバーによって剥がれ落ち、元の肌色に戻ります。また、反応によって発生したメラノイジンは表皮のごく一部にしか存在しないため、セルフタンニング剤を塗った後すぐにシャワーを浴びたり、肌をこすったり締め付けたりすることでも剥がれ落ちてしまいます。そして、特にジヒドロキシアセトンは肌の上でのノビが悪く塗りにくいため、剥がれ落ちやすさと相まって、塗りムラがとても目立ってしまいます。

 「持続しない」「すぐに落ちてしまう」「塗りムラが発生しやすい」といった、一見悪い事ずくめのセルフタンニングですが、大きなメリットとしては「肌への刺激の低さ」が挙げられます。紫外線による日焼けは十分なケアを行ったとしてもエネルギーによるダメージや色素沈着によるシミやくすみは避けられませんが、セルフタンニング剤による「日焼け」はエネルギーによる反応ではなく、また、色素自体が直ぐに落ちるため、そのリスクは大幅に少なくなります。そのため、セルフタンニング剤は「健康的な美しさ」が求められる場面では重宝され、特にボディビル愛好家の方々の間ではボディカラーやスプレータンニングの名称で親しまれ、コンテスト出場のために欠かせないアイテムとなっています。

フッションとしての「日焼け」を楽しむ

このように、ジヒドロキシアセトンやエリスルロースによるセルフタンニングは通常の日焼けとは異なる作用で肌を変化させます。通常の化粧品と比較すると塗りにくい、落ちやすいなどやや面倒な部分もありますが、使用することで紫外線によるダメージを気にせず、よりカジュアルに、ファッションとしての「小麦色の肌」を手に入れることができます。

 これからの季節、肌を見せる機会も段々と多くなってきますが、もし貴方が小麦色の肌に焦がれているようであれば、大事なお出かけの前にセルフタンニングを試してみてはいかがでしょうか。きっと貴方の印象が大きく変わることでしょう。

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