美容の秘薬「プラセンタ」
素敵な人生の経験を積んで、家族や仕事、友人など「私」よりも大切なものを数多く手に入れた後でも、いつまでも美しく、素敵でありたいといった想いは心の奥のどこかにしまってある筈です。大切な人が寝起きの自分でも、年齢を重ねた自分でも好きでいてくれると信じていても、より若々しく、美しくなれるといった言葉にはどこか惹かれるものがあります。化粧品やエステなどの広告に魅せられ、あれこれ試してみる方も少なくないでしょう。そして美しくなった自分を鏡で見ると、不思議とモチベーションが上がってくるものです。
そんな中で着目されている成分の1つが、高級な化粧品の代名詞ともなっている「プラセンタ」です。プラセンタの効果は数多く知られており、保湿やアンチエイジング、肌のターンオーバーの改善、美白作用などを合わせ持った、動植物由来の秘薬のような成分として紹介されています。プラセンタは化粧品以外でも広く利用されており、医療目的では肝機能障害や更年期障害の改善を目的とした注射が保険適用となっており、また、サプリメントとしては体質改善や肌のシミ予防などを目的とした製品が開発されています。
プラセンタって何から出来ているの?
プラセンタとは動物の胎盤(母親が妊娠中、胎児と子宮を結ぶ器官)のことを指します。まだ体の機能が完成していない胎児にとって、実質的に臓器としての役割を担っており、アミノ酸や核酸、ビタミン、ミネラル等、胎児だけではなく大人にとっても欠かせない栄養素を多く含んでいます。また、栄養素だけではなく酵素や保湿成分、成長を促進する物質など、通常の食事では取り入れることのできない成分も含んでいます。
原料となる胎盤を使う動物として最も一般的なのはブタです。ブタは子供を沢山産むため胎盤の入手が容易で、また、非常に飼いやすい動物のため広く利用されています。また、やや高級なものにはウマ由来のプラセンタがあり、こちらはアミノ酸が豊富といった特徴を持っています。海外では羊由来のもの、また、医療目的ではヒト由来のものも使用されることがあります。
また、広義のプラセンタとしては海洋生物由来のマリンプラセンタ、植物由来の植物プラセンタなどが挙げられ、「胎盤」ではないため多少作用は異なるのですが、豊富なアミノ酸やビタミン、ミネラルを含む物質として化粧水などに広く使用されています。
プラセンタ化粧品ってどんな効果があるの?
プラセンタを使った化粧品には様々な効果があると言われていますが、代表的なものとしては、いわゆる「美白」成分としての作用が挙げられます。プラセンタには皮膚のシミの原因となるメラニンの生成を活性化させる酵素の抑制効果があること、また、メラニン色素の沈着を防ぐ作用があることから、医薬部外品としての承認を受けており、「シミ・ソバカスを防ぐ」効果を謳うことが認められています。また、プラセンタには高い保湿効果があります。プラセンタの中にはヒアルロン酸等、天然由来の保湿力の高い成分が含まれているため、プラセンタを含んだ美容液を使用することによって、肌の水分が失われるのを防ぐことができ、肌のコンディションを良好に保つことができます。
基本的な化粧品としての効果も十分に優秀なプラセンタですが、化粧品にはより固有の効果を期待して配合されています。それは、プラセンタの持つ生理活性物質によるアンチエイジングの効果です。生理活性物質は肌の細胞分裂を促進し、また、血行を良くすることによって肌のターンオーバーを活発にする働きがあります。肌のターンオーバーを活発にする物質は他にもありますが、単独の成分ではなく、生体にとって欠かせない成分の組み合わせであるプラセンタはその効果が強いと言われています。
その効果、本当に信じても大丈夫?
「プラセンタ」という言葉を検索した場合、先に紹介したような効果が企業のホームページ等で紹介されていますが、その中には「肌がツルツルになる」「シワが消える」「シミが消える」といった即効性の高さを謳っているものがあります。そのような記事を読むとプラセンタが美容の特効薬のように感じられますが、実際のところはどうなのでしょうか。
実のところ、プラセンタの作用については未解明の部分が多く残っており、十分に効果を検証できていないのが現状です。プラセンタには生物由来の多くの成分が含まれており、経験則として「何らかの効果がある」ことは判っているのですが、どの成分がどんな効果を発揮しているのか、あるいは肌に塗った場合にどれだけ効果があるのかについては、定量的な検証が十分にはされていません。
また、化粧品については「薬機法」といった法律があり、効果の表現についての制限があるため、たとえ効果が認められていてもそれを宣伝できない場合があります。プラセンタについてはシミ・ソバカスを防ぐ美白成分としての効果が承認されており、また、保湿等の一般的な効果については宣伝することができますが、それ以外の効果については直接表現することが禁止されています。プラセンタ自体は優秀な成分なのですが、販売店や企業が直接的な効果を強く打ち出していた場合、その製品や販売店の信頼性について、幾分差し引いた見方をした方が良いでしょう。
プラセンタ化粧品の選び方
では、このようなプラセンタを使った化粧品について、どのようにスキンケアに取り入れれば良いのでしょうか。プラセンタには美容成分がオールインワンで含まれているため、特定の悩みを解決するというよりは、日々のスキンケアとして取り入れるべき成分です。美容効果については未解明の部分も多いのですが、具体的な効果についての研究も進められており、今後ますます着目される成分となるでしょう。
使用の際には2点程注意が必要です。1つは天然由来で色々な成分が含まれていることに起因するアレルギー反応です。プラセンタに限らず、天然由来の成分は石油由来のものと比較して含まれている物質の種類が多いため、何らかの物質に対してアレルギー反応を起こす可能性が高くなります。異常を感じた際には使用を中止し、症状に応じた対応をするようにして下さい。もう1つは使用感に関するものです。プラセンタの配合量が多い(しばしば「原液」をうたった)製品が相次いで発売されていますが、特にブタ由来のプラセンタについては原料由来の臭いが強く、使用感が良好とはいえません。折角高価なものを購入しても、使い続けられないと感じる可能性があります。まずは原液ではなく、使用感が良好な「プラセンタを取り入れた」製品から試してみる、海洋生物由来や植物由来のものを試してみるといった工夫をした方が良いかもしれません。
今はまだ「秘薬」という表現も相応しい化粧品向けのプラセンタですが、今後解明が進むことによってより利用しやすい成分となるでしょう。個別の物質の作用が解明され、また、より効率的な生産方法が確立されれば、化粧水などにごく当たり前に含まれている成分として利用される時代が来るかもしれません。
コメント