化粧品に含まれるアラントインの役割

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アラントインとは?

肌荒れやニキビに悩んでいて効果のある化粧水を探していた時、もしくは唇の荒れや手荒れに効果的なクリームを探していた時、
中にアラントインという成分が含まれていたのを見たことはないでしょうか。
肌荒れ予防についてセラミドヒアルロン酸といった有名なものと比べるとやや馴染みのないこの成分は組成式C4H6N4O3で表され、19世紀に羊の胎盤の一部から発見されました。
アラントインは生体内では痛風の原因として有名な尿酸C5H4N4O3を酵素で分解することによって生成され(人間はこの酵素を持っていないのですが、多くの哺乳類は持っています)、
単体では白色の粉末で若干水に溶けるといった性質を持っています。
アラントインは傷ついた皮膚を再生させる機能に優れており、医薬品としては主に火傷や傷を治す軟膏等に多く用いられています。
また、医薬品の中では副作用や皮膚への刺激性が少なく、安全に使用できるため、化粧品にも同様の目的で、濃度に制限を設けた上で使用されています。
また、歯肉の炎症を抑える目的で、ハミガキ等の口腔ケア製品にも配合されています。主に植物由来の天然のものも用いられますが、保湿成分として有名な尿素から合成され、用いられることもあります。

化粧品に含まれるアラントインの効果

化粧品におけるアラントインは幾つかの目的を期待されて配合されています。1つは炎症を起こした皮膚の状態を鎮める作用(消炎鎮静作用)です。
同じ目的としてはより強力な作用を持つグリチルリチン酸誘導体も使用され、この作用単体ではより強力なため、しばしば併用されることがあります。
また、アラントインはヒアルロン酸やコラーゲン、セラミドと同様、皮膚の表面からの水分蒸発を防ぐ保湿剤としての役割も担っています。
他にもクエン酸やアルコールと同様、肌を引き締める収れん剤としての効果もあります。
しかし、アラントインが用いられる最大の理由は皮膚の角質層に働きかけて正常な細胞の増殖を促し、古い傷ついた角質を除去し、皮膚を再生させる機能によるものです。
化学的なメカニズムについては十分に解明されておらず、今後の研究が待たれますが、アラントインを皮膚表面に塗布することによりこの現象が起こることが確認されています。
同様の効果を持った成分は他にも幾つか存在はするのですが、口内や目の粘膜といった弱い部位に対しても刺激性が認められないこと、使用した際の副作用が少ないこと等から化粧品への使用が認可され、
加えて原料としても比較的容易に入手可能であること等からアラントインが第一の候補として選ばれています。

アラントインの抱える課題

このように多くの機能を持つアラントインですが、化粧品として製品化するにあたっての課題を幾つか抱えており、やや限定的な利用に留まっています。
最大の課題は成分としての安定性で、環境次第で比較的容易に分解してしまうことです。アラントインは軟膏やクリームといった乾燥状態の中では安定していますが、化粧水のような使用を想定して
水に溶かした場合、水溶液がアルカリ性であると容易に分解してしまいます。また、水溶液が中性や弱酸性であっても環境次第で分解してしまうことがあり、高温にも比較的弱いです。
安定して存在させるためには酸性の環境が必須ですが、酸性水溶液にはあまり溶けない為、今度は配合量が限られてしまいます。
さらに一部の化粧水等に使用される酸とは悪い相互作用を起こして、アレルギーの原因ともなるため、混ぜて使うことが出来ません。
アラントインが抱える課題は幸いにも製品を生産する段階についてのものであり、使用時に問題となる部分ではないため、購入した製品の使用に関しては使用上の注意に従って頂ければ特に問題はありません。
より多くの製品でその機能を最大限に発揮出るよう、今後のメーカーの研究開発が期待されることころです。

アラントインの含まれる化粧品と選び方

アラントインは様々なジャンルの化粧品に利用されていますが、最も多く利用されているのはアフターシェーブローションであり、市販製品の半分弱に含まれています。
シェービングによって傷つけられた皮膚の炎症を鎮めて表面の再生を助け、同時に保湿も可能な物質として、アラントインは使用され、製品によっては法律で認められている配合比率の上限まで含まれています。
また、シェービング後の肌だけではなく、肌の修復に広く効果がある成分のため、ハンドクリームやフェイスクリーム等にも比較的よく配合されています。
もし肌荒れや手のひび割れ、あかぎれ等に悩んでいるのであれば、医薬品としても使われており、効果の期待できるアラントイン配合のものを積極的に選ぶべきでしょう。
一方、メイクアップやヘアケアを目的とした製品にはあまり使われておらず、使われていてもごく微量含まれている程度です。
これらの製品は肌の修復を主な目的としておらず、また、前節で述べたようにやや化学的に不安定な成分の為、処方決定の段階で積極的に取り入れられていないと考えられます。
これらの製品に関しては目的に応じて、アラントインより他の成分を優先して選ぶと良いでしょう。
アラントインは製品化の部分で多くの課題を抱えていますが、他の成分にはない固有の作用を持っており、今後の開発に大きな期待が持たれます。
特に肌の調子に関して問題を感じているのであれば、アラントインが多く含まれた新製品は積極的に試してみると良いかもしれません。

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