「馬油」ってどんな成分なの?髪や肌に良いって本当?

化粧品に「馬の油」?

 2026年の干支は「午」(うま)です。馬は古くから人々によって家畜として飼われ続け、私達と一緒に力仕事をしたり、時には移動手段として活躍したりと、私達の生活を支え続けてきました。今日ではかつての役割の多くを機械が代わりに担っていますが、私達にとっては他の動物以上にどこか親しみを感じる存在で、のんびりとくつろぐポニーや熱い戦いを繰り広げるサラブレッドに魅せられ、動物園や競馬場に何度も足を運ぶ方も少なくありません。

 このように、基本的には「一緒に過ごす」ために飼われている馬ですが、時には化粧品の原料として使われることもあります。馬を使った化粧品はデパートやドラッグストアではあまり見かけませんが、観光地のホテルや旅館、あるいはお土産売り場などでは時々見かける存在で、「馬の油」を使ったシャンプーや化粧品を見た、あるいは実際に試してみた、といった方も少なくないでしょう。馬の油は「髪や肌に優しい」ことを謳って販売されていますが、一体どんな成分で、どういった効果が期待できるのでしょうか。

馬の油「馬油」とはどんな成分なの?

 馬油は「まーゆ」、「ばーゆ」もしくは「ばぁゆ」と読み、馬の皮下脂肪を原料として得られる油脂の一種です。馬はアジアを中心に好んで食用とされており、食用に飼っていた馬を解体して肉を入手する際、腹やたてがみの部分に豊富に含まれている脂肪を採取し、不純物を取り除くことで、副生成物としての馬油が得られます。日本国内でも馬は一部の地域で食用とされているため(桜鍋や馬刺し、「ニューコンミート」などが有名です)、少量ですが国産の馬油も出回っています。

 馬油は不飽和脂肪酸であるオレイン酸やリノール酸、飽和脂肪酸であるパルミチン酸を主成分としており、常温ではクリーム状の固体の物質ですが、融点が30℃から35℃のため、夏場は溶けて液体になります。パルミチン酸やオレイン酸、リノール酸は皮脂の成分としても知られているため、馬油は肌への馴染みがとても良く、つけ心地の面でとても優れています。

 「馬油」はどんな目的で利用されているの?他の油と比べてどうなの?

 馬油はその「皮脂に近い」組成を活かし、失われた皮脂を補ったり、ダメージを受けた髪を保護したりする目的で利用されます。皮脂は肌からの水分蒸発を防いだり、紫外線や雑菌などによる肌への刺激を緩和したりする上で重要な役割を果たしているため、何らかの理由で皮脂が不足すると乾燥や肌荒れに悩まされるようになります。

しかし、皮脂不足の肌に馬油を塗ることで、馬油が皮脂の代わりの役割を果たし、肌からの水分蒸発が抑制されます。また、馬油に含まれているリノール酸には殺菌作用が確認されているため、雑菌の増殖によって引き起こされる炎症も抑えられます。この効果は古くから知られており、日本でも奈良時代に大陸から伝わって以降、民間薬として切り傷やあかぎれを治療する目的で用いられてきました。

 また、馬油を使ったシャンプーやコンディショナーは頭皮に不足している皮脂を補うことで水分の蒸発やそれに伴って引き起こされる頭皮環境の悪化を防ぐだけではなく、油膜を張ることで髪を保護し、乾燥や紫外線によるダメージを防いだり(リノール酸には抗酸化作用があり、活性酸素の発生を抑制します)、髪表面のキューティクルの剥がれを抑えたりすることができます。

 これらの「失われた皮脂を補う」効果は油脂に共通のものですが、馬油が利用される理由として、肌へのつけ心地の良さ、使い勝手の良さが挙げられます。馬油と組成が比較的近いオイルとしてはアルガンオイルが挙げられますが、つけ心地がやや重たくなります。また、オレイン酸を主成分とするオリーブ油は皮脂の代わりとしては優れていますが、オレイン酸の比率が多すぎるため、そのままつけるとニキビ菌の増殖を手助けしてしまいます。馬油はつけ心地が相対的に軽く、殺菌、制菌作用も期待できるため、安心して使い続けることができます。

馬油、本当に使い続けても大丈夫?合わない人もいる?

 このように、肌や髪に嬉しい効果をもたらしてくれる馬油ですが、使い続ける上では少しだけ注意が必要な点があります。馬油は他の植物油と同様に安心して使うことができる成分ですが、基本的に馬油の肌や髪への効果の大半は「皮脂を補う」ことによって得られるものであるため、ベタつきや毛穴詰まりといった脂性肌に悩まされている方のスキンケアには向かず、むしろ症状を悪化させてしまいます(馬油自体に原因がある訳ではなく、あくまでも対処法として適切ではない、といった問題です)。

 また、馬油はリノール酸を豊富に含んでいる一方、トコフェロールなどのいわゆる酸化防止剤の含有量が少ないため、他の植物油より酸化されやすい傾向があります。保存する際はなるべく直射日光や高温を避けて保管し、臭いやつけ心地の変化を感じた場合は使用を止めた方が良いでしょう。また、最近ではあまり見なくなりましたが、観光地のお土産店などで直射日光の当たる場所に陳列されているような場合、その場所での購入は避け、ツアー会社などが立ち寄るような場所で購入した方が安心かもしれません。

 肌や髪のケアにはいつものアイテムを使い続けたい、旅先で買ったものを使うのは不安だ、という考え方があるのは当然で、そのような方も多いことでしょう。しかし、もし今のケアに満足できていないようであれば、今年の干支に因んで、「馬」を使ったコスメも取り入れてみてはいかがでしょうか。きっと貴方の1年が、もう少しだけ充実したものになるでしょう。

タイトルとURLをコピーしました