使用の目的:増粘剤、スクラブ効果、肌の保温
類似した成分:炭酸水素ナトリウム
塩化ナトリウムとは化粧品に幅広く利用されている成分で、化学式NaClで表されるナトリウム塩の一種です。一般的に「食塩」「岩塩」と呼ばれているものの主成分で、常温では白色もしくは無色の結晶状の物質で、水に溶けやすく、エタノールや油に溶けにくい性質を持っています。工業的には海水を太陽熱で蒸発させて濃縮することによって、あるいはイオン交換膜を用いて濃縮し、蒸発させることによって大量に得ることができます。
特筆すべき性質としては増粘剤としての作用が挙げられます。塩化ナトリウムを水に溶かすと一定量までは濃度に応じて粘度が緩やかに上昇するため、水性の化粧品の粘度を調整する目的で利用されています。また、塩化ナトリウムの結晶は他の金属塩と比較して結晶が硬く安定しているため、洗顔料などに配合することによって古い角質や余分な皮脂などを落とす、いわゆるスクラブ効果を期待することもできます。
天然由来で食品としてもお馴染みの成分で、適量では肌への刺激性や毒性もないため、安心して利用することができます。また、塩化ナトリウムの水溶液を肌につけると薄く保温性に優れた皮膜を形成するため、温泉や入浴剤の成分としても優れています。しかし、高濃度の塩化ナトリウムを肌につけると浸透圧により体内の水分が失われ、乾燥を引き起こしてしまうため注意が必要です。
類似した成分としては炭酸水素ナトリウムが挙げられます。炭酸水素ナトリウムは塩化ナトリウムと同様のナトリウム塩の一種で、入浴剤などによく利用されていますが、pH緩衝剤としての作用を持ち合わせている点で異なり、また、身体を温める作用も皮膜形成によるものではなく、発泡によって身体を刺激し、血行を促進することによるものです。化粧品にはそれぞれの特性を活かす形で使い分け、もしくは併用がされています。