使用の目的:1900年代に流行した化粧品成分
類似した成分:なし
ラジウムとは1900年代の一時期、化粧品に好んで用いられた成分で、化学式Raで表されるアルカリ土類金属の一種です。1898年にキュリー夫人によって発見された成分で、常温では銀白色の固体で、水に非常に溶けやすく、油と馴染みにくい性質を持っています。工業的にはウラン鉱石から抽出、分離することによって得ることができます。
特筆すべき性質としては放射能の強さが挙げられます。ラジウムはアルカリ土類金属に分類され、化学的な性質はバリウムに類似していますが、その原子構造が不安定なため、一定の時間が経過するとα崩壊と呼ばれる現象を起こし、放射線の一種であるα線を放出しながらラドン、あるいはまた別な物質へと変化します。また、この一連の流れの中でα線よりも透過力の強いβ線やγ線など様々な放射線が生成し、その反応は原子構造が安定な鉛が生成するまで継続します。
ラジウムは美容を含めて幅広い効果が期待できる魔法の成分として紹介され、一時期、多くの化粧品に取り入れられました。また、中にはラジウムを一切含んでいないにも関わらず、「ラジウム化粧品」を謳った製品もあったそうです。しかし、時代が進み放射線による人体への破壊的な影響が明らかになるにつれ、その流行は終わりを迎えます(幸い、ラジウム化粧品へのラジウム配合量は僅かであったため、健康への影響はほとんどなかったそうです)。
今日でも日本各地の「ラジウム温泉」はその効能として微量の放射線による「ホルミシス効果」を謳っており、当時の流行の名残を感じることができます。また、ごく微量のラジウムを配合した入浴剤が現在でも販売されています。