使用の目的:金属イオン封鎖剤
類似した成分:エチドロン酸4Na、EDTA-2Na、メタリン酸ナトリウム
エチドロン酸とはシャンプーやボディーソープを中心に利用されている成分で、化学式C2H8O7P2で表される有機リン化合物の一種です。HEDPと呼ばれることもあり、常温では無色もしくは淡黄色の液体で、水に溶けやすく、油と馴染みにくい性質を持っています。工業的にはリン酸トリクロリドと酢酸を三級アミン環境下で反応させることによって得ることができます。
特筆すべき性質としては優れた金属イオン封鎖剤としての性質が挙げられます。水中の金属イオンは石鹸の泡立ちを悪くしたり、他の化粧品成分を変色、沈殿させたりする原因になりますが、エチドロン酸は水中の金属イオン、特にカルシウムイオンや鉄イオンと反応して錯体を形成することにより、このような化粧品の品質や使い勝手を維持する上で望ましくない作用を妨げる効果を期待できます。また、水溶液は強酸性を示すことも特徴です。
食品や医薬品の添加物としてもお馴染みで、肌への刺激性や毒性も化粧品に配合可能な範囲では認められていないため、安心かつ安全に利用可能な成分です。また、金属イオン封鎖剤の中には環境負荷が高く、排出量を定めたPRTR制度の対象となっているものがありますが、エチドロン酸は対象外です。しかし、いわゆる「有機リン化合物」の一種であり、成分が環境中に流出するといわゆる「富栄養化」が発生し、周囲の生態系に影響を及ぼしてしまいます。
類似した成分としてはエチドロン酸4Naが挙げられます。エチドロン酸4Naはエチドロン酸の4ナトリウム塩で、エチドロン酸と同様に生分解性を持つ金属イオン封鎖剤として利用されますが、pHがアルカリ性である点でエチドロン酸と異なります。化粧品にはそれぞれの特性を活かす形で使い分けがされています。