使用の目的:白色顔料
類似した成分:鉛白、辰砂
甘汞とはかつて白粉などを中心に利用されてきた成分で、化学式Hg2Cl2で表される無機水銀化合物の一種です。塩化水銀(Ⅰ)とも呼ばれ、常温では白色の結晶状の成分で、水にも油にも溶けにくい性質を持っています。天然鉱物として豊富に産出し、日本国内ではかつて伊勢地方の特産品として有名でした。
特筆すべき性質としては白色顔料としての使いやすさが挙げられます。甘汞は適度に光沢感のある白色の結晶で適度に柔らかいため、かつては白粉の原料として鉛白と共に用いられてきました。生産地の伊勢地方では甘汞を使用した白粉が「伊勢白粉」の名前で、お土産向けのご当地コスメとして販売されていたといいます。
適度なノビの良さ、鉛白とは異なった色味など、甘汞には好んで利用されるべき理由がありました。また、早くから毒性が問題になっていた鉛白と比較して、あまり水に溶けないため、普通に使用する分には安全であったとも言われています。しかし、水銀化合物の潜在的な毒性が問題になる中で、甘汞の使用もまた問題とされ、今日では化粧品への利用は禁止されています。
類似した成分としては鉛白が挙げられます。鉛白は甘汞と同様にその発色やノビの良さから、白色顔料として長く用いられ続けてきました。鉛白の方がより一般的に用いられていましたが、その毒性は甘汞よりもさらに高く、毎日のように化粧をする人の寿命を縮めたとも言われています。こちらも今日では使用が禁止されており、化粧品成分として見かけることはありません。
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