使用の目的:合成ムスクの香り成分
類似した成分:エチレンブラシレート
ムスクケトンとは一部のフレグランス製品や石鹸等に利用されている成分で、化学式C14H18N2O5で表されるニトロケトンの一種です。常温では淡黄色の粉末で、水に全く溶けず、エタノールやシクロヘキサンに僅かに溶けます。工業的にはm-キシレンから複数の反応を経てアセチル化、ニトロ化することによって得られます。
特筆すべき性質としては天然のジャコウに似た独特の香りが挙げられます。天然のジャコウは香料として重宝されましたが、乱獲によって減少し、現在ではワシントン条約で取引が禁止されています。ムスクケトンは天然のジャコウ由来の香り成分であるムスコンと構造が異なっていますが、ジャコウの持つ甘い妖艶な香りをよく再現しています。
合成ムスクの中では香りの再現性にとても優れており、毒性や刺激性も他の合成ムスクと比較して低いことから、国際的に使用可能な唯一のニトロケトンとして利用されています。しかし、生分解性に乏しいため河川や海洋に流出した際、魚類の奇形等の原因になることが示唆されており、使用の禁止を求める声があります。
類似した成分としてはエチレンブラシレートが挙げられます。エチレンブラシレートはムスクケトンと同様に天然ムスクの香りを再現した成分で、大環状ムスクに分類されますが、香りの再現性でムスクケトンに劣る一方、生分解性に比較的優れており、環境負荷が少ないことが特徴です。近年、化粧品の環境負荷の軽減が社会的な課題となっているため、一般的な合成ムスクとしてはこちらが利用されています。
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