使用の目的:変性剤(誤飲防止)
類似した成分:変性アルコール、センブリエキス
安息香酸デナトニウムとは一部のフレグランスやネイル製品等に利用されている成分で、化学式C28H34N2O3で表される芳香属化合物の一種です。常温では白色の粉末状の物質で、水やエタノールに溶けやすく、アセトンに溶けにくい性質を持っています。歯科用の麻酔等に用いられるリドカインから合成された成分で、工業的には塩化デナトニウムと安息香酸ベンジルを反応させることによって得られます。
特筆すべき性質としては強い苦味が挙げられます。安息香酸デナトニウムは世界で最も苦い物質としてギネスブックに登録されており、ごく微量を口にするだけで強烈な苦さを感じます。一般的に味覚は舌に存在する甘味、苦味等の各受容体と特定の成分が結合することによって得られますが、安息香酸デナトニウムは味覚を司る仕組み自体に作用するため、強烈な苦味を生み出すと言われています。人は苦みに対して敏感で、反射的に吐き出そうとするため、この成分を使用することによって誤飲、誤食を防ぐことができます。化粧品以外ではおもちゃやゲームソフト等に同様の目的で使用されています。
印象に反して肌に対しては刺激性や毒性も低く、微量で効果を発揮するため安心、安全に利用可能な成分です。海外製品を中心に誤飲、誤食防止の目的で幅広く利用されていますが、そのあまりの苦さから、ごく微量でも口に入る可能性がある製品、例えばメイクアップや洗顔を目的とした製品には使用できません。
類似した成分としては変性アルコールが挙げられます。変性アルコールは通常のアルコール(エタノール)にイソプロピルアルコールや酢酸リナリル等を加えたものですが、エタノール特有の風味を添加物によって変化させることにより、飲用に適さなくしています。変性アルコールの風味は「飲用に適さない」程度で、安息香酸デナトニウムより誤飲防止の作用が穏やかなため、スキンケア、ヘアケア製品を含む多くの製品に利用されています。
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