究極の美白成分、ハイドロキノンってどんな成分なの?使い続けても大丈夫?

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白く透き通った肌を求めて

 貴方は美しい肌、と聞いてどのようなものを想像するでしょうか。今日では「美しい」価値観は人それぞれで、ある人は夏の海に映える健康的な小麦色、またある人はごく自然な肌色、あるいは肌の色ではなく、キメの細かさで判断する人もいることでしょう。特に空港の免税店など様々な国籍を持った方が集まる場所では、自分に合った肌色を表現できるよう、色とりどりのファンデーションが販売されています。

しかし、古くからの長い間、美しさの1つの基準とされてきたのが「白く透き通った肌」でした。白く透き通った肌は見た目が綺麗に見えるだけではなく、月やキャンドルの明かりで官能的に映えること、日焼けしていないことが育ちの良さの基準にもなっていたことから、当時の人々は不健康な方法を使ってでも肌の白さを追い求めようとしていました。

透き通るような肌の白さを求める動きは今日でも根強く、「美白化粧品」として多くのアイテムが発売されています。その多くは肌のくすみの原因となる作用を幾分抑制するものですが、近年ではより強い作用を持った成分も取り入れられるようになっています。

「透き通った白い肌」、どんな成分で実現できるの?

美白成分として最も一般的なものはビタミンCやトラネキサム酸を用いた化粧品です。ビタミンCは主にメラニン色素が合成される反応の進行を抑制し、トラネキサム酸は肌が紫外線等によって刺激を受けた際に発信される、メラニン色素の生成を促す指示を抑制します。どちらもメラニン色素の増加を防ぐ効果に加え、ビタミンCであれば肌に害を与える活性酸素種の除去、トラネキサム酸であれば抗炎症作用といった化粧品として便利な効果を持っているため、幅広く用いられています。他にはプラセンタ、コウジ酸等も同様に、メラニン色素の生成を抑制する効果を期待して用いられます。

しかし、いずれの成分も日頃のスキンケアを通じたシミ、ソバカスの予防には優れた成分ではあるものの、効果が比較的穏やかであることから、「美白化粧品を使ったのに、肌が白くならない」といった不満の原因ともなっていました。そのような背景から、メラニン色素の合成をより強力に妨げる成分として、近年着目されるようになった成分がハイドロキノンです。ハイドロキノンは「肌の漂白剤」と呼ばれることもあり、元々は医師の処方の下で使用されてきましたが、近年では濃度を制限した上で、化粧品にも取り入れられるようになりました。

ハイドロキノンにはどのような作用があるの?

ハイドロキノンはメラニン色素を合成するための酵素であるチロシナーゼの作用を強力に阻害します。チロシナーゼの阻害剤としては他にビタミンCやコウジ酸等も存在しますが、ハイドロキノンに特徴的な作用として、チロシナーゼに結合することにより、チロシナーゼを失活させる効果があります。これは、ハイドロキノンの分子構造がメラニン色素合成のために必要な物質と類似していることに起因します。活性を失ったチロシナーゼは新しくメラニン色素を作ることができないため、古くなった角質層の部分がターンオーバーで剥がれ落ちるとその部分には新たなメラニン色素が沈着しなくなります。また、ハイドロキノンには既に角質層に沈着してしまったメラニン色素を還元する役割も担っています。これらの強力な効果により、ハイドロキノンは他の美白成分と比較して、およそ100倍程度シミやソバカスの発生を抑制する、と言われています。

 ハイドロキノンは単体でも効果を発揮しますが、医療機関での処方では皮膚の角質層を剥がし、代謝を促進するビタミンA誘導体、トレチノインと一緒に使用されます。この両者を組み合わせた処方は強力で、現状、シミや肝斑、ソバカス等表皮層への色素沈着への治療として広く用いられています。トレチノインは単独で使用すると肌への刺激が強く、副作用として肌が赤くなる、皮膚が剥がれ落ちるといった症状が現れますが、(レチノイド皮膚炎として知られています)、ハイドロキノンはトレチノインの副作用を抑える効果を持っているため、比較的安全に使用することが可能です。

ハイドロキノン、どんな化粧品に含まれているの?

ハイドロキノンは美白作用に特化した成分であること、最も効果が得られる配合される濃度が比較的高いこと、また、色素が沈着されている場所への局所的な使用が想定されていることから、ハイドロキノンクリームの形で市販されていることが多いです。また、ハイドロキノンはイチゴやコーヒー等天然にも含まれている成分ですが、製品には主にフェノールから合成されたものが用いられています。

純粋なハイドロキノンは構造が不安定で分解されやすく、それが故に肌にやや浸透しにくい特徴がありましたが(不安定性が理由で、規制緩和前は医療機関のみ使用されていました)、近年では効果的な処方が開発され、また、界面活性剤と錯体を形成させることにより構造を安定させた安定型ハイドロキノンを用いた製品も存在します。安定型ハイドロキノンの作用は純ハイドロキノンと比較してやや穏やかですが、肌への刺激も少なく使用上のメリットも多いため、より安心して使用することが可能です。

ハイドロキノンが入った化粧品、安心して使うことができますか?

 高い美白効果があるものの、構造がやや不安定であるといった特徴を持つハイドロキノンですが、実際にどのような点に注意して使えば良いのでしょうか。「ハイドロキノン」で検索すると「副作用」や「がん」、「白斑」といったキーワードが紐づけられているため、少し不安になります。しかし、ハイドロキノン自体はアメリカを中心に古くから使われており、容量、用法を守って使用する限りでは安全性が高い成分です。

 しかし、保管や使用に関しては通常の化粧品よりも注意が必要です。ハイドロキノンは熱や紫外線、酸素で変性しやすいため、冷暗所に保管する必要があります。また、ハイドロキノンクリームは夜寝る前の使用が推奨されており、日中に使用する場合は日焼け止めの併用が必須です。ハイドロキノンがメラニン色素の合成を強力に抑えることにより、肌自体が紫外線に対して極めて敏感な状態となる為です。

 また、使用することによって短期的には肌の赤みやかぶれ、高濃度の製品を長期間使用し続けた場合には白斑が生じる恐れがあるため、肌に何らかの異常を感じた場合や、3ヶ月~6ヶ月程度の使用で効果が得られなかった場合(ハイドロキノンは真皮層に浸透しないため、真皮層への色素沈着への対処には不向きです)は使用を中断することが推奨されています。肌の状態によっては美容皮膚科でのレーザー治療等、他の方法を検討するべきでしょう。

ハイドロキノンは化粧品に求められる「安心して使用ができる」といった部分について改善の余地があり、未だ手軽に利用できる成分ではないのですが、貴方が肌のすみやくすみに悩まされ、白く透き通るような肌を手に入れたい、と真剣に悩まれているようであれば、試してみる価値が大いにあります。一度、お手に取ってみてはいかがでしょうか。

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