化粧品のお茶成分、どんな効果があるの?

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最も身近な飲み物「お茶」

 貴方はどんな飲み物が好きですか?朝の目覚めのコーヒーやフレッシュジュースが好きという方もいらっしゃれば、シンプルなミネラルウォーター、あるいは刺激的なコーラが好きという方もいらっしゃるでしょう。また、1日の終わりに嗜むビールやワインが幸せのひと時、といった方も多いでしょう。しかし、私達にとって最も身近な飲み物は「お茶」ではないでしょうか。朝から晩まで飲む時間に縛られることなく、ペットボトルでも手軽に買える一方で、茶道やアフターヌーンティーなど、様々な形でも楽しめるお茶は単なる飲み物にとどまらず、私たちの生活や文化の一部といっても良いでしょう。

 そんなお茶ですが、お茶を煎れる時に使用する「茶葉」は化粧品の世界でもとても身近な原料です。スキンケアやボディソープなどを中心に、茶葉由来の成分を使用した製品が店頭に並べられており、しばしば身体に良い製品として宣伝されています。飲み物としてはカフェインによる集中力のアップや殺菌の効果が知られていますが、化粧品にはどのような目的で取り入れられているのでしょうか。

お茶の有効成分「カテキン」

 お茶には様々な成分が含まれていますが、お茶特有の有効成分として「カテキン」が挙げられます。広義のカテキンは総称してポリフェノールと呼ばれる植物由来の物質の一種で、多くの成分が存在しますが、茶葉由来のものとしてはお茶に独特な渋みや苦みを出す成分として知られる没食子酸エピガロカテキンやガロカテコールが知られています。茶葉由来のカテキンは、かつてはより広義の物質を指す、タンニンと呼ばれることもありましたが、今日ではカテキンの名称で呼ばれています。

 カテキンに共通する化学的な構造として、ベンゼン環及びベンゼン環に直接繋がっているヒドロキシル基(フェノール類に特徴的な構造)の存在が挙げられます。カテキンはヒドロキシル基を複数持っているため水に溶けやすく、また、フリーラジカルと呼ばれる反応性の高い物質をそのσ結合により、安定化させる働きを持っています。タンパク質を変性させる強い収斂作用もタンニンの特徴で、お茶や茶葉を口に含んだ時に感じる苦味や渋みはこの作用によるものです。

お茶の効果①カテキンによる抗酸化作用

 茶葉やその抽出物を化粧品に配合する最大の目的は、カテキンによる抗酸化作用を期待してのものです。肌の表面ではフリーラジカルの一種で、しみやくすみの原因としても知られる活性酸素が絶えず生成されていますが、少量であれば酵素の働きによって即座に分解されるため、大きな影響はありません。しかし、強い紫外線は大量の活性酸素を短時間に発生させるため、活性酸素やその派生物質であるヒドロキシラジカルの分解が追いつかず、長時間皮膚に留まって肌に様々な形でダメージを与えます。ダメージはやがて修復されますが、修復過程で発生するメラニン色素がしみやくすみの原因となります。

 カテキンは肌の上で優れた抗酸化剤として機能します。カテキンは水に溶けやすいため肌に浸透しやすく、肌に塗るとフェノール類特有のσ結合によるラジカル安定化作用により、紫外線による活性酸素の発生を有意に抑えます。また、茶葉には同様に抗酸化作用のあるビタミンCも含まれているため、化粧品に配合することによって相乗効果を期待できます。

 

お茶の効果②カテキンによる消臭作用

 カテキンの抗酸化作用は肌のダメージ予防とは異なった観点でも効果を発揮します。年齢を重ねることによる悩みの1つに「加齢臭」が挙げられますが、これは加齢臭の原因物質であるノネナールが皮脂に含まれるパルミトレイン酸の酸化によって生成することが原因です。カテキンを含んだ化粧品を肌に塗ることにより、パルミトレイン酸の酸化によるノネナールの生成が妨げられ、臭いを抑えることが可能です。

 また、加齢臭以外の体臭についてもカテキンや茶葉の抽出物は効果を発揮します。フェノール類には抗菌、殺菌効果を保つ成分が少なくないのですが、カテキンにも優れた殺菌効果があり、肌に塗ることによって肌の常在菌の活動を妨げます。その結果、常在菌による臭いの原因物質の生成が抑えられ、また、茶葉の抽出物を使っている場合はその匂いによるマスキング効果も相まって、体臭による不快感を抑えることができます。

 尚、お茶の匂いの成分としては緑茶特有の青さを感じさせる青葉アルコールの他、バラやラベンダーの香り成分としても有名なリナロールやゲラニオールが含まれています。いずれも気分を落ちかせ、リラックスさせる効果で知られており、多くの人にとって心地良いと感じることができる香りです。

「安心」「安全」で「心地よい」化粧品成分として

 このように、化粧品に含まれるお茶はシミやくすみ、臭いなど私達の悩みを解決してくれる嬉しい存在ですが、個別の効果においては同等か、より優れた成分も存在します。抗酸化作用についてはビタミンC誘導体やコエンザイムQ10等の方が有名です。また、消臭に関しては塩化ベンザルコニウムやミョウバン等がより優れています。

 しかし、お茶は私達の身近にある成分として、「安心」「安全」の点でとても優れています。肌への刺激性やアレルギーの心配もごく少なく、それがどのように栽培され、加工されているかを容易に想像することができます。また、化粧品成分の中には匂いや使用感の面で「我慢する」ことが必要なものもありますが、お茶の匂いや使用感はとても心地よく、高濃度であっても使い続けたいと思わせる魅力があります。今後もより多くの製品に茶葉由来の成分が使われてゆくことでしょう。

午後の一休み、コーヒーやフレッシュジュースで一服するのも素敵ですが、たまには紅茶や日本茶を飲みながら、化粧品の「お茶」についても思いを巡らせてみてはいかがでしょうか。

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