「水と油」でスキンケア?
秋が深まりつつある10月、次第に気になってくるのが空気の乾燥です。この前まで肌のベタつきに悩まされていたのが嘘だったように肌のカサつきが気になる日も多くなり、店頭に並ぶ化粧品もベタつきやテカり、といった言葉はいつの間にか目にしなくなり、代わりに「保湿」や「カサつき対策」をうたったものを多く見かけるようになります。保湿は季節を問わずスキンケアの大きなテーマの1つですが、秋冬向けのアイテムの大きな特徴として、クリームのようにオイリーで重い使い心地のものが多いことが挙げられます。また、中にはワセリンのように、重たい油を肌につけて使うものもあります。
この「油を肌につけて」保湿する方法ですが、不思議に感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。「保湿ケア」というと化粧水や乳液といった「水性」のアイテムを肌につけ、水分を浸透させたり、角質層の保水力を向上させたりする方法を思い浮かべる方が多く、また、ヒアルロン酸やセラミド、グリセリンといった成分が効果的だとご存知の方も多いことでしょう。しかし、秋冬向けのオイリーなアイテムは、肌にはよく馴染むものの、水との相性はあまり良くないように思われます。一体、それぞれのアイテムはどのようにして肌に潤いをもたらすのでしょうか。
保湿成分の種類①肌の水分量を増やす「モイスチャライザー」
化粧水や乳液などに含まれている保湿成分は総称して「モイスチャライザー」と呼ばれ、肌の水分量を増やす目的で利用されます。代表的な成分としてはグリセリンやセラミド、ヒアルロン酸、アミノ酸などが挙げられますが、これらの成分は肌の角質層に「細胞間脂質」「天然保湿因子」といった形で豊富に含まれており、分子中に水と馴染みやすいヒドロキシル基と呼ばれる構造を持っているため、水分をまるでスポンジのように吸収し、保持します。中でもヒアルロン酸の保水力は際立っており、成分1gあたり6lもの水分を構造中に抱え込むことができます。肌に元々備わっている保湿力はかなり高いもので、肌に大きなトラブルを抱えておらず、周囲の湿度がある程度高ければ、その機能を維持するために必要なだけの水分を保持することができます。
しかし、秋から冬にかけての乾燥した時期、あるいは肌が何らかのトラブルを抱えている状態ではその効果は十分ではなく、肌が乾燥しがちになります。化粧水や乳液は肌に水分や保湿成分を補うことによって肌の潤いを回復させます。一般的に水に溶けやすく分子量の小さなグリセリンやアミノ酸、セラミドは肌の角質層に浸透して内部からその働きを補い、分子量の大きなコラーゲンやヒアルロン酸は肌の表面に留まってその作用を発揮しますが、より保水作用に優れた後者の浸透性を高めるための研究も進められています。
保湿成分の種類②水分の蒸発を防ぐ「エモリエント」
このように、モイスチャライザーを用いることで肌の水分量は一時的に増加しますが、秋から冬にかけての空気が乾燥した時期においては、蒸発によって多くの水分が失われがちです。肌は水と馴染みにくい皮脂を分泌して薄い膜を形成し、水分を閉じ込めようとすることによってそれを防ごうとしますが、新陳代謝が活発になり皮脂の過多に悩まされがちな夏と比較して、秋冬は相対的にその量が少なくなりがちです。そのため、肌の水分はより蒸発しやすくなり、乾燥による肌荒れがより進んでしまいます。
そこで、皮脂と似たような構造を持った、蒸発を防ぐための成分を補うことが必要になりますが、そのために用いられる油分を総称して「エモリエント剤」と呼びます。エモリエント剤は保湿クリームやバーム、ボディーオイルなどの主成分として知られており、代表的な成分としてはワセリンやオレイン酸、スクワランなどが挙げられます。オレイン酸やスクワランは皮脂の主成分として知られており、肌馴染みがとても良いため、「皮脂の代わり」としてしばしば用いられます。また、ワセリンは皮脂とは構造が異なっており、つけ心地もかなり重いものになりますが、閉塞性に優れているため蒸発をより強力に防ぎます。
2つの「保湿」、どうやって組み合わせれば良いの?
このように、化粧品には「水分量を増やす」「水分量を減らさない」2種類の保湿成分が使用されていますが、肌の状態をよりよく保つためには、両者を温度や湿度、肌の状態などに応じて組み合わせて使用していくことが大事です。基本的な保湿ケアは化粧水や乳液などを使用して肌に水分やモイスチャライザーを染み込ませ、水分量を増やした上でクリームやオイルをつけ、油分の力でその蒸発を防ぐといった流れで行います。しかし、その適切な配分は季節や体質によって異なり、皮脂量が多くなりがちな夏場や脂性肌に悩まされている方はモイスチャライザーを中心としたケア、皮脂量が不足しがちな秋冬、もしくは乾燥肌の方はエモリエント剤をより重視したケアを行うと良いでしょう。
定番の保湿アイテムの組み合わせについては、春夏は化粧水→乳液、秋冬は化粧水→クリームといった形が挙げられます。オールインワンコスメも季節を問わず肌の保湿に効果的ですが、モイスチャライザーとポリマーの組み合わせが多く、やや水分量を減らさない作用は弱いため、乾燥しがちな秋冬にはクリームやオイルを併用するとより効果的です。また、特に乾燥を強く感じる場合は植物油やミネラルオイル、ワセリンなどを使用することで、水分をより強力に保持することができます。このような油は肌にも優しく安心して使うことができますが、使いすぎは毛穴詰まりの原因となるため注意が必要です。
相容れない関係のことを「水と油」と呼びますが、化粧品の水と油はその性質こそ異なるものの、協力し合って私達の肌に潤いをもたらしてくれる大切な存在です。乾燥する冬の季節に先立って、貴方も一度、ご自身のスキンケアを見直してみてはいかがでしょうか。

