化粧品を冷やしたい?冷やさないと不安??
夏真っ盛りのこの時期、身体は少しでも冷たく、涼しいものを求めます。とても外を出歩く気にはなれず、エアコンがよく効いた部屋に閉じこもって、冷たい飲み物ばかり飲んでいる、そんな方も多いのではないでしょうか。化粧品の世界でもそんなニーズを汲み取って、夏になると「ひんやり」「爽やか」を謳った化粧水やボディーシートなどが販売されるようになり、私達に束の間の涼しさをもたらしてくれます。また、夏を乗り切るライフハックの1つとして化粧水を「冷蔵庫で冷やす」方法もブログなどで紹介されており、実践してみた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、化粧品は本当に冷やして使っても大丈夫なのでしょうか。化粧品のパッケージには多くの場合、高温多湿や紫外線を避けるべきといった記載がされていますが、「冷やす」ことについては書かれていないため、一見問題なさそうに感じられます。その一方で、冬場になるとクリームやヘアバームなどの使い心地に違和感を覚えたり、化粧水の成分が沈殿していたり、といった経験をした方も多いのではないでしょうか。
冷蔵保管がお勧めできない理由①固まり、分離する油分
実は多くの化粧品は常温、もしくは常温より少し高い温度での保管を前提としており、冷蔵保管することで逆に品質を損ねてしまいます。最も分かりやすいものは化粧品に含まれる油分の固化です。化粧品の油分には様々なものがありますが、皮脂と馴染みやすい代表的な油脂の1つであるオレイン酸を多く含んだオリーブ果実油等の融点は10℃前後であり、5℃前後の冷蔵庫で保管すると凝固し、成分が分離します。また、ヘアバーム等や口紅などで利用されているシアバターやカカオバター等の融点は30℃以上で常温では柔らかい固体ですが、冷蔵庫で冷やすことでより硬くなり、とろけにくくなってしまいます。
このような化粧品の変化について、硬さの部分については化粧品を冷蔵庫から取り出し、常温で保管することである程度元のようになります。しかし、油分の「分離」は化粧品にとって不可逆的な変化となり、その品質を大きく劣化させてしまいます。特に乳液やクリームなどのスキンケア製品で顕著ですが、これらの製品は本来混ざり合わない水と油を乳化剤と呼ばれる成分を用いて均一に分散させており、本来、化学的にはかなり不安定な状態です。そのため、一度分離し、安定な状態となってしまうと自然に元に戻ることはありません。この現象は温度変化が急激であるほど発生しやすく、冷蔵庫から出したり、戻したりすることで促進されてしまいます。
冷蔵保管がお勧めできない理由②成分の析出
また、化粧品を冷蔵庫に入れて保管した場合、一部の成分が溶けきれなくなって析出することがあります。化粧品の原料の大部分は温度が高ければ高いほど水やBGなどの溶媒に溶けやすくなり、製品の保管は常温、もしくは少し高い温度で行われることを想定しています。そのため、季節を問わず屋内での保管であれば問題はありませんが、冷蔵庫等で長時間保管した場合、一部の成分が溶けきれなくなり、結晶として析出、沈殿してしまうことがあります。
結晶が沈殿した製品は見映えが良くないだけではなく、その品質も大きく損なわれています。このような製品では本来溶けていた成分の一部が失われているため効果が十分に期待できないだけではなく、結晶が肌に触れることによって物理的な刺激を受けたり、場合によっては傷つけたりしてしまうことがあります。成分の結晶化自体は様々な成分で起こりますが、代表的な成分としてはビタミンC及びその誘導体が挙げられます。ビタミンC及びその誘導体は決して水に溶けにくい成分ではないのですが、溶けやすいが故に化粧品に高濃度で配合されることがあり、他の成分との相性によっては結晶として析出してしまうことがあります。
それでも冷やして使いたい、どうすればいいの?
このように、化粧品でひんやりとした感触を楽しみたい、もしくは高温多湿が心配、といった理由で化粧品を冷蔵庫に入れて保管することは、化粧品の品質を損ねてしまい、使用感の変化や成分の分離、沈殿など思わぬトラブルの原因になることがあります。分離、沈殿しやすい成分はある程度決まっているため、化粧品を注意深く選べば冷蔵庫で保管しても大丈夫なものを選ぶことはできますが、似たような名前の成分であっても性質が異なることがあるため、一般的に化粧品は「常温保存を前提としたもの」と覚えておくと良いでしょう。
しかし、化粧水については例外です。多くの化粧水は水やBGなどを主成分としているため、温度変化による影響を比較的受けにくいとされており、メーカーの公式サイトでも冷蔵庫で保管後の使用を勧めているものも存在します。品質のことを考えるとなるべく冷蔵庫からの出し入れの回数を減らすなどの工夫は必要ですが、メントール等のいわゆる「ひんやり感」ではなく、実際に暑さで火照った顔や身体を「冷やす」目的で、一般的な化粧水を冷やして使うのはお勧めです。中には沈殿や析出などが発生しやすいものもあるので、ネット上の口コミなどを参考にしてみると良いでしょう。
また、他のアイテムも冷やして使いたい場合はコスメ用の冷蔵庫を使うこともお勧めです。一般的な冷蔵庫の温度は5℃以下で、オレイン酸などの油性成分は沈殿してしまいますが、コスメ用の冷蔵庫の温度は12℃前後と一般的なものと比較してやや高く、冬の室温よりもやや低い程度に保たれています。この状態であれば一般的な油性成分は温度変化によって沈殿せず、また、室温保管と比較して高温多湿による劣化も防ぐことが出来ます。日本国内ではあまり普及していませんが、家電量販店でも取り扱うようになり、可愛いデザインのものも多いので、もし興味のある方は購入してみても良いでしょう。
とにかく暑い夏の季節、少しでも冷たいもの、涼しいものが欲しくなります。また、高温多湿の部屋で保管して良いのかどうか心配になります。しかし、化粧品はやや「寒がり」な存在で、逆に暑さについてはそこまで苦にしないため、食品のように冷蔵庫に入れるのではなく、私達と一緒の場所に置いておく方が良いでしょう。そして、もしひんやり感が欲しくなった時は、「化粧水」から試してみるようにしてください。
