汗の悩みに便利なアイテム「制汗剤」
太陽が眩しい夏の暑い日、私達の尽きない悩みの1つが「汗」です。紫外線は長袖や日焼け止めで肌を守ることができても、炎天下で汗をかくのは止められません。体温調節のために大事な仕組みだと判っていても、やっぱり鬱陶しく感じてしまいます。また、汗は夏だけではなく、他の季節でも何かと悩まされる存在です。夏は明るい色の半袖やノースリーブで目立ちにくいのですが、秋冬のグレーや茶色のコーデでは汗染みが目立ってしまいます。人によっては汗だけではなく、臭いに悩んでしまっている方もいるでしょう。
そんな鬱陶しい汗を抑えてくれる嬉しいアイテムが制汗剤です。制汗剤にはロールオンやクリーム、スプレーなど様々なタイプがありますが、腋の下など汗をかきやすい場所に吹きかけることによって、汗の量を抑えたり臭いによる不快感を抑えたりすることが可能です。人前に出ることが多く、汗に悩まされている方にとって、制汗剤は今や欠かせないアイテムです。しかし、制汗剤を長期間使い続けることによって、身体に悪い影響があるといった記事も出回っています。本当に使い続けて良いのか、悩んでいる方も多いでしょう。
制汗剤の成分①「汗の臭いを抑える」
では、制汗剤にはどのような成分が含まれているのでしょうか。制汗剤の代表的な役割は、汗をかくことによる不快な臭いを打ち消す、もしくは臭いの発生自体を防ぐことです。汗の成分の大半は水分と塩分で、それ自体は臭いを発生しませんが、少量のタンパク質や皮脂が含まれており、皮膚常在菌の働きで腐敗することにより、臭いが発生します。この臭いを打ち消すためには香料が用いられますが、中でもマスキング効果が高く、匂いが長時間残らない柑橘系の成分(リモネン、β-ピネン)が好まれます。
また、雑菌の繁殖を抑えることで汗が原因となる不快臭を防ぐことができます。入浴等で肌を清潔に保つことも重要ですが、より殺菌作用に特化した成分としてイソプロピルメチルフェノールや陽イオン界面活性剤の一種である塩化ベンザルコニウム、抗菌作用に加えて臭いの原因物質の分解を促進する作用を併せ持った銀イオン等が用いられています。これらには汗自体を減らす効果はありませんが、汗をかくことによる不快感を抑えることができます。
制汗剤の成分②「汗の出口を塞ぐ」
比較的手軽に使える制汗剤は「汗の匂いを抑える」効果のものが中心です。しかし、汗の量に悩まされている場合、不快感を取り除くためには汗自体を減らすことが必要になります。そこで、一部の制汗剤には汗の出口を塞ぐための成分が利用されています。代用的なものとしては塩化アルミニウムが挙げられます。塩化アルミニウムは医療用としても処方されてきた成分で、肌に塗ると汗の水分と反応して水酸化物のゲルを形成し、毛穴を根本から塞ぎます。塞がれた毛穴からは汗を出すことができないため、汗の量を減らすことができます。
塩化アルミニウムによる制汗効果は強力ですが、成分自体の刺激性や毛穴を根本から閉塞する作用が肌への負担が大きいため、敏感肌にはあまり向かない成分です。そこで、現在では同様の効果を持ったクロルヒドロキシアルミニウムを用いることが多くなりました。クロルヒドロキシアルミニウムは塩化アルミニウムと同様に汗の出口を塞ぎますが、成分自体の刺激性が少なく、閉塞する場所が角質層にとどまるため、敏感肌であっても安心して使うことができます。
制汗剤、使い続けても大丈夫?
汗の悩みを解決してくれる制汗剤ですが、長い間使い続けても大丈夫なのでしょうか。基本的には制汗剤に含まれている成分に関して、化粧品に配合される濃度では使い続けても問題がないとされています。刺激性の強い塩化アルミニウムに関しても、若干の肌荒れのリスクはあるものの、多くの人にとって問題とはならないでしょう。長期使用に関しても医療目的では100年程度の歴史があり、安全性が証明されています。また、殺菌成分に関しても肌への刺激は少なく、安心して使うことができます。
しかし、一部の成分に関しては若干の注意が必要です。それ程多い事例ではありませんが、一部の方は銀イオンや塩化アルミニウムによって金属アレルギーを起こす可能性があります。また、銀イオンやソプロピルメチルフェノールで過剰に殺菌を行うことによって必要な常在菌までもが死滅してしまい、肌荒れなどの原因となる可能性があります。
また、制汗剤を使う場所には注意が必要です。汗を止めるタイプの制汗剤は基本的に腋の下と手足にのみ使用可能です。他の部位でも効果は期待できるのすが、発汗は体温調節の機能も担っているため、汗を止めることによって熱中症の原因となってしまいます。他の部分に関しては、汗の臭いのみを抑える製品を使うか、こまめに拭き取る、着替えるなどの方法で対処するようにして下さい。
化粧品だけではない「汗を抑える」選択肢
このように便利ではあるものの、少し心配な点もある制汗剤ですが、最近では制汗剤以外で汗を抑える選択肢も増えています。それらを併用することによって、より効果的に汗を抑えることができます。比較的手軽な方法は食事やアロマテラピーによるもので、鎮静作用を持った成分を取り入れることによって汗の原因となる交感神経を鎮め、発汗を抑えることができます。精油はラベンダーや柑橘系のものが有効と言われていますが、「好みの香り」自体が気分を落ち着かせるので、お気に入りのものを使うと良いでしょう。
また、最近では医療機関でも様々な治療を受けることができます。かつては塩化アルミニウムの塗り薬が中心で、腋臭などに悩まされている場合は手術、といった流れでしたが、最近では神経系に作用する塗り薬やボトックス治療など、より肌への負担が少ない治療を選ぶこともできます。もし制汗剤だけでは不十分、と感じている方は皮膚科や美容外科などに一度相談してみると良いでしょう。
この分野に関してはかつて、「汗を止めるけれども肌が荒れる」「香料の匂いがきつい」といった製品が多かったため、使用を控えていた方もいらっしゃるかもしれません。しかし、近年、改めて注目されるようになり、低刺激で機能性の高い製品が色々と開発されています。もし汗に悩まされているようであれば、化粧品以外の選択肢も含めて検討してみてはいかがでしょうか。
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