心も身体も満たしてくれる「柑橘系の匂い」、その成分の正体は?

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夏でも冬でも爽やか!私達の生活を彩る「柑橘系」の匂い

 私達の生活は匂いによって彩られています。朝のコーヒー、お気に入りの化粧品、美味しいご飯に最近凝りだしたアロマ、私達にとっての憩いの時間には、常に匂いが関わっています。ある時は甘く安らぐような、またある時は食欲をそそるような、そのまたある時は恋を盛り上げるような、シチュエーションに合った匂いが私達の生活をよりいっそう彩ってくれます。

 では、私達にとって最も「心地よい」匂いとはどんなものなのでしょうか。香りの心地よさはその時の気分や体調、個人の好みによって変わってきますが、性別や季節などを問わず、最も受け入れやすいのは「柑橘系」の匂いではないでしょうか。爽やかでみずみずしい、優しい香りは精油だけではなく、食品や化粧品、芳香剤など様々な分野で取り入れられています。「柑橘系」とひとまとめにされますが、製品によってレモンやグレープフルーツ、オレンジ、シトラス、ベルガモットといった個別の果物から採取した精油、あるいは匂い成分を抽出した香料が用いられ、私達の生活を彩っています。

柑橘系の匂い成分「リモネン」

では、この柑橘系の匂いはどんな成分によるものなのでしょうか。種類によって含まれている量に違いはありますが、柑橘系の匂いは「リモネン」と呼ばれる成分をベースとしています。リモネンは化学的にはテルペンと呼ばれるグループに属しており、バラやローズマリーの香り成分として知られるゲラニオール、清涼感を感じる成分であるメントール、木の匂いとして知られるピネンと同じ分類です。

 リモネンは柑橘系の果物の皮の部分に含まれており、特にオレンジや柚子に多く含まれています。オレンジを絞ったり、柚子の皮をすりおろしたりした時に感じる爽やかな香りの正体がリモネンです。また、精油として抽出した場合、オレンジや柚子の他に、グレープフルーツ由来のものにも多く含まれます。一方、同じ柑橘系でも紅茶やリキュールの香りづけに使用されるベルガモットについては、リモネンの他に、ラベンダーに多く含まれるリナロールや酢酸リナリルなど、様々な成分が含まれています(その為、柑橘系の果物としてはやや複雑な匂いを発します)

 実はリモネンには鏡写しの関係にある2種類の物質が存在します。一般的なものはd-リモネンと呼ばれるもので、柑橘系のみずみずしい香りを生み出しているのはこの物質ですが、鏡像関係にあるものとして、l-リモネンと呼ばれるものが存在します。l-リモネンも「柑橘系の匂い」ではあるものの、はっきりと区別できる匂いで、柑橘系の果物よりもむしろハッカなどに含まれています。

柑橘系の香りにはどんな効果があるの?

 では、リモネンにはどのような効果があるのでしょうか。通常、精油や薬は「元気になる」もしくは「気持ちを落ち着かせる」いずれかの効果を期待して用いられますが、リモネンの香りには「ストレスに対する反応を落ち着かせ、気持ちを鎮める」、かつ「交感神経を刺激して元気になる」といった両方の効果が期待できます。私達が柑橘系の香りに感じる心地よさはこのことに起因しています。また、油性成分とよく馴染むこと、また、抗菌作用を示すことから洗剤や石鹸などに配合されて使用されます。
 リモネンはその爽やかな匂いや効果から、スキンケア、メイクアップ化粧品の香りづけとしてもよく用いられています。化粧品には様々な香りが取り入れられていますが、シトラスに代表される柑橘系の香りは老若男女問わず受け入れられています。また、リモネンはいわゆる「トップノート」に分類されるため、キャップを開けた瞬間、肌につけた瞬間に爽やかな香りが一気に拡がり、逆に匂いを長く残さないため、「香りづけ」に非常に適しています。

柑橘系の香り、肌にとってはどうなの?

優れた香り成分であるリモネンですが、肌に塗ることで香り以外の効果も期待することができます。リモネンは肌の上で水に溶けにくい皮膜を形成するため、肌からの水分の蒸発を防ぎます。また、リモネンには薄毛の原因となる物質の代謝を抑える働きがあることが確認されており、男性向けのシャンプーや育毛剤などに配合されることもあります。また、油と馴染みやすい成分であるため、脂性肌の場合、余分な皮脂を落とす目的でも使用することができます。

 しかし、肌につけて使う際には知っておいた方が良いことがあります。リモネン自体には毒性や刺激性はないのですが、リモネンが肌の表面で酸化することによって、刺激性のある成分に変化することがあります。また、ベルガモット等に含まれる成分の一部(ベルガプテン)が強い紫外線によって毒性を発揮し、肌への刺激や色素沈着の原因となることが知られています。化粧品ではリモネンの配合量が少ないこと、また、ベルガプテンは予め取り除くため安心して使用することができますが、精油を化粧品に混ぜて使うような場合、使用後はなるべく直射日光に当たらないことが必要です。

柑橘系の香り、取り入れてみてはいかがでしょうか?

 化粧品を色々試してみたいけれども、人工的な香りで気持ち悪くなってしまう、天然のものであっても、甘い香りが長く漂うラベンダーやローズがどうも好きになれない、そんな方もいらっしゃることでしょう。また、アロマオイルの誤った使い方などの記事を見て、香り成分自体に不安を感じている方もいらっしゃるかもしれません。柑橘系の香り(及び代表的な香り成分であるリモネン)はそんな貴方であっても安心して取り入れることができる成分です。色々な製品に使用されているため気軽に手に取ることができ、爽やかな香りと効果を欲しいだけ感じることができます。これを機会に、一度試してみてはいかがでしょうか。

 

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