化粧品成分「パラベン」はどうして使われているの?

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使いかけの化粧品、いつまで持つの?

 ミニマリズムにシェアリング、何かとモノを持たないライフスタイルが流行っている昨今ですが、貴方のメイクボックスやドレッサーにはどれだけの化粧品が置いてありますか。なるべく片付けるように、ときめくものしか置かないように心掛けても、意外に多くのものが置いてあるのではないでしょうか。毎日使う化粧水やファンデーションだけではなく、休日のお出かけデートにしか使わないアイシャドウやチーク、衝動買いした口紅、試供品のパウチなど、気が付くと自然と増えているものです。そして、しばらく置くとちょっと怖くて使えない、でも捨てるのは惜しいといった状況で、ますます使わないモノばかりが増える悪循環に突入してしまうのです。

 使い始めた化粧品はいつまで持つのでしょうか。化粧品の消費期限に関しては、成分が安定しているもの、かつ未開封の状態で3年といわれており、それより短いものに関しては消費期限が記載されています。また、開封後はアイメイク製品に関しては1~3ヶ月、化粧水やリキッドファンデーション、日焼け止め等の液体は半年、それ以外の一般的な製品で1年以内に使いきることが推奨されています。一度外気に触れた化粧品は注意して保管していても少しずつ成分の劣化や雑菌の繁殖が進み、多かれ少なかれ、肌に悪い影響を与えてしまいます。

化粧品を長持ちさせる成分「防腐剤」

 最大で1年、短くても1ヶ月程度持つ化粧品ですが、毎日使わなくても意外に使いきれる、と感じるのではないでしょうか。また、出張や旅行で1週間家を空けて戻ってきても、特に心配することなく使っているでしょう。一方、手作りの化粧品、例えば化粧水では「冷蔵庫に保存して」「3日以内に使いきる」といった形で、かなり日持ちしないものとして紹介されていることが多いです。この違いは何なのでしょうか。

 市販の化粧品と手作りの化粧品を分けるものとして、「化粧品を長持ちさせるための成分の有無」が挙げられます。これには各成分が分離しないようにするもの、成分の劣化を防ぐもの等、幾つかの種類がありますが、最も代表的なものは「化粧品の中でカビや雑菌が繁殖しないようにする成分」で、総称して「防腐剤」と呼ばれます。化粧品は「肌に塗って使う」製品であるにも関わらず、菌にとって栄養となる有機成分が多く含まれている、容器を触って手にとって使う、使い切らずにある程度保管する、といった雑菌の繁殖に適した条件を兼ね備えています。そこで、防腐剤を加え、肌にとって有害な雑菌の繁殖を抑えることが必要となります。

最も有名な防腐剤「パラベン」

「防腐剤」としての効果を持っている成分には幾つかの種類が存在しますが、最も有名なものは「パラベン」と総称される一連の成分です。パラベンは別名でパラヒドロキシ安息香酸エステルとも呼ばれており、エステル結合と呼ばれる部分に結合している炭素の量に応じてメチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン等、個別の名前を持っています。いわゆる「ポリフェノール」の一種で天然にも存在し、私達が日頃食べている野菜や果物にも含まれています。

 パラベンは多くの化粧品に防腐剤として使用されています。防腐剤としての効果を持った成分としては他にエタノールが有名ですが、エタノール自体がやや主張の強い成分で刺激性や清涼感を合わせているため、防腐剤としての目的だけで配合するにはやや不向きです。一方、パラベンは水にはやや溶けにくいものの、エタノールやアセトン等の油性成分と馴染みやすいこと、また、常温では粉末状の成分で少量でも効果を期待できること、成分自体に特に刺激性がないことから、化粧品向けの防腐剤として大変優れた性格を持っています。

 パラベンにはどんな効果があるの?

 では、パラベンには具体的にどのような効果があるのでしょうか。パラベンと総称される成分については、いずれも雑菌、とりわけ真菌類に分類されるカビ等の繁殖を抑える効果があることが確認されています。パラベンがどうして雑菌の繁殖を抑えるのかについては研究が進められている段階ですが、雑菌の細胞内に存在するミトコンドリアと呼ばれる部分の機能をブロックしている、といった説が有力です(人間の細胞にもミトコンドリアが存在しますが、細菌とは細胞の構造が異なっているため安全です)。

 パラベンの抗菌効果は一般的に構造内の炭素の数が多い程高くなります。すなわち、メチルパラベンよりもエチルパラベン、プロピルパラベン、さらにブチルパラベンの方が高い効果を期待できます。しかし、分子の構造が大きくなり、炭素の数が増えるとそれだけ水に溶けにくくなり、溶かすための工夫が必要となります。その為、化粧水等の水性製品を中心に、利便性の観点から水にある程度溶けるメチルパラベンが使用されています。

 パラベンの殺菌効果は汎用性が高いのですが、特定の細菌に対する効果をより強めるため、しばしば他の成分と併用されます。パラベンは先に述べたエタノール、あるいは常在菌の一種である緑膿菌への抗菌作用が強い、フェノキシエタノールと一緒に、あるいは炭素数の異なるパラベン同士で一緒に使われています。

パラベンの入った化粧品、本当に使い続けて大丈夫?

 多くの化粧品に使われ続けているパラベンですが、一時期、アレルギー反応の原因となること、発がん性物質であることが問題として取り上げられたことがあります。本当に使い続けても大丈夫なのでしょうか。パラベンは2001年に化粧品に全ての成分表示が義務付けられる前から、アレルギー等を引き起こす恐れがある「旧指定成分」として表示が義務付けられていた成分で、配合量等が制限されていました。また、発がん性に関しても若干のリスクが確認されたことは事実です。

 しかし、パラベンは使用することによって、化粧品を毎日使う上でのリスクを「最小にする」ことが可能です。パラベンはそもそも低濃度でも効果を発揮するため、アレルギー反応を起こすリスクは最小限に抑えられます。一方、パラベンを処方から除いた場合、防腐剤としてエタノールやフェノキシエタノール等が代わりに使用されるため、肌に対する刺激性はむしろ強くなってしまいます。また、「防腐剤を一切使わない」方法は理想ですが、炎症の原因となる雑菌が繁殖してしまい、すぐに使えなくなってしまいます。手軽に毎日、少しずつ使う化粧品にはどうしても防腐剤が必要で、パラベンはその中でもベストな選択肢といえるでしょう。

 化粧品を選ぶ際、どうしても有効成分や天然由来の成分に着目し、パラベンのような成分に関してはあまり気に留めない、或いは人によっては「できれば含まれていて欲しくない」と思うことでしょう。しかし、実際には「毎日安心して使える化粧品」を作るために必要不可欠な、黒子としての役割を担っています。時には「黒子」の成分にも思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

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