「手作り」ブームと化粧品
食事、雑貨、服、その気になればあらゆるものが24時間手に入れられる現代社会ですが、それをあえて自分で、私自身や大切な人のために手作りすることで、不思議と幸せな気分になれます。お店のものよりちょっと見栄えが良くなくても、レシピ本に書いてあった、月桂樹とコリアンダーが見つからなくてそのまま作っても、お店で買ったものよりいっそうの愛着が湧くものです。
また、手作りに対して愛着だけではなく、安心感を持つ方もいらっしゃるでしょう。どこか遠く、場合によっては海のはるか向こうの工場で、顔の見えない誰かが作ったものよりも、自分の目の前で、私のため、大切な人のために作られたものの方が、「より効果があるだろう」「きっと悪いものは使ってないだろう」と考えるのも不思議ではありません。
化粧品もまた例外ではありません。ありとあらゆる肌質や好みに合わせた化粧品が開発、販売されていますが、化粧水を中心に雑誌やインターネット上では多くのレシピが紹介され、また、雑貨店などでは必要なボトルや成分を小分けにしたキットも販売されています。基本的な保湿成分に自分好みのアロマを入れて、ファンデーションの色味をパウダーの割合で調整して、好みのものをつくることができます。
手作り化粧水に必要な成分
では、手作りの化粧品で最もポピュラーな化粧水を作る際、どんな成分を入れれば良いのでしょうか。化粧水は肌に新鮮な水分を供給し、それを逃がさないようにするために用いられますが、ドラッグストア等でも容易に入手可能な、最低限2種類の原料だけで簡単に作ることができます。
1つは精製水です。精製水とは水道水から消毒用の塩素やミネラル系の不純物を取り除いたものですが、水道水と比較して肌への刺激性が少なく、肌に浸透しやすい性質を持っています。また、いわゆる軟水であればミネラルウォーター(日本産のものはほぼ全て軟水です)を使用することも可能です。また、若干の刺激性はありますが、保存性の観点から水道水を使うことも可能です。
もう1つはグリセリンです。グリセリンは市販の化粧水にもほぼ全て含まれている成分になりますが、肌への馴染みが良く保湿作用にも優れ、化粧水にとろみを持たせて使いやすくする効果があります。また、水に溶けない成分を溶かす役割も担っています。
水とグリセリンを混ぜ合わせるだけで十分に効果的な化粧水が完成しますが、より保湿効果を高めたい場合は尿素を加えると良いでしょう。尿素は角質層の水分保持に重要な役割を担っており、化粧水で補給することにより、肌の保湿効果をより高めることができます。また、敏感肌が気になる場合はpHを調整する為のクエン酸、香りを楽しみたい場合はラベンダーオイル等、その他の成分を目的とお好みに応じて少量加えるとより効果的です。
手作り品と市販のもの、どこが違うの?
手作りの化粧品は簡単に作ることができますが、市販品と比較してどこが違うのでしょうか。主な違いは2点あります。1つは含まれている成分の種類です。手作りの化粧品と比較して、市販品はより多くの成分を含んでいます。肌への水分補給に限れば精製水とグリセリンだけの処方で十分なのですが、市販の化粧水は使った時の感触や保湿効果の向上、シミ、ソバカスの予防等、水分補給以外にも様々な機能が加えられているため、目的に応じた成分が配合されています。スキンケアの時短がトレンドになっている昨今、化粧水にはますます多くの役割が求められるようになっています。
もう1つは化粧水に求められる保存性です。手作りの化粧水に関しては、自分で作って冷蔵庫に保管し、使いきることだけを考えれば良いのですが、市販品は生産後、しばらく使わないまま、あるいは使いかけのまま保管される状況を想定して開発されており、成分の分離や雑菌の繁殖を防ぐための成分が含まれています。代表的なものが1,3-ブチレングリコールやエタノールで、前者は保湿成分を兼ねて、後者は化粧品の使用感の向上の目的も兼ねて、広く使用されています。
手作り化粧水のおすすめの使い方、使う上での注意点
シンプルかつ安心感のある手作り化粧水ですが、市販の化粧水と比べた場合、「贅沢に」使うのがおすすめです。精製水とグリセリンと尿素を混ぜて作った場合(他の成分はお好みで構いません)、市販の化粧水と比べて非常に安く作ることができるため、市販品のように少しずつ馴染ませるのではなく、水分を豊富に浸み込ませるため、洗顔のような感覚で使うと良いでしょう。保湿効果は市販のものに及びませんが、水分をより多く肌にとどめることができます。アルコールなどの肌に刺激の強い成分も含まれていないため、敏感肌でも問題なく使用することができます。
一方、この化粧水は長期の保存には向きません。蒸留水の代わりに水道水を用いたり、1,3-ブチレングリコールを使ったりすることで多少は改善されますが、安心して使える目安は1週間と考えて下さい。手作りの場合はどうしても雑菌などが入り込みやすく、成分によっては分離してしまうこともあります。また、化粧水に精油を混ぜる場合は直射日光が当たることによって肌に刺激を与えてしまう、いわゆる「光毒性」にも注意が必要です。保管する場合は必ず冷蔵庫のような、低温かつ直射日光の当たらない場所に置くとよいでしょう。
市販の化粧水と手作りのもの、どちらが良くてどちらが悪い、ということはありません。ケーキやお菓子と同じで、安心して食べることができて少し日持ちもする市販品、腕によりをかけ、好きなものを入れてアレンジができる手作り品、シチュエーションや好みに合わせて使い分けると良いでしょう。ただ、手作りの満足感は市販品では決して得られないものです。もしかするとケーキよりも簡単で、薬局で売っている材料で作ることができますので、一度試してみてはいかがでしょうか。
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