鉛白

成分

使用目的:かつての白粉の主要成分

類似した物質:酸化チタン、酸化亜鉛

一緒に使われる物質:今日では使用されず

鉛白とはかつての白粉(おしろい)に使われていた主要成分で、組成式2PbCO3•Pb(OH)2で示される白色、粉末状の無機化合物です。別名はフレークホワイトで、絵具等の名称ではこの名前が使用されています。

 鉛白の特筆すべき性質としてはその素材の持つ白色度の高さや肌へのなじみやすさが挙げられます。19世紀以前は白色の顔料自体が限られており、また、肌への付着性が良いものはほとんど存在しませんでした。そのような中で鉛白は白さ、付着性の良さに加えて伸びやすさまで兼ね備えた理想の成分と考えられ、肌の白さを生まれの良さや美しさと結びつける風潮も相まって、初めは上流階級の間で、後には広く一般の人々の間でも、白粉の主成分として広く用いられるようになりました。白粉は顔だけではなく、身体全体に塗って使用するのが一般的で、電気やガスの灯りが広まる前の暗い夜、ろうそくの光で照らされた鉛白の色は大変魅力的に見えたそうです。

 しかし、鉛白は理想的な成分としての側面を持つ一方で、肌や体への負担が大変大きい物質でした。まず長期間使用することによって肌が黒ずむ現象がみられ、「白粉焼け」と呼ばれていました。そして白粉焼けを隠す為にいっそう白粉に依存するようになり、皮膚から鉛が継続的に吸収されることによって次第に鉛中毒の症状を起こすようになりました。また、鉛は胎児の体内にも蓄積し、かつ子供が産まれると授乳の際に白粉を一緒に口に含ませてしまっていたため、子供もまた鉛中毒になり、深刻な体調不良や知能の遅れを引き起こすケースが多かったそうです。

 かつてはワイン等の食品添加物としても当たり前のように使用されていた成分ですが、20世紀になると少しずつ鉛の有害性が明らかになり、やがて化粧品への使用が禁止されるようになります。今日の白粉には酸化チタンや酸化亜鉛など、肌や体への刺激が少ないものが用いられ、また、鉛白の伸びやすさに関しては油分やマイカ、セリサイトなどの添加物を付与することによって補っています。

おしろいについての記事はこちら

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